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【第2章】 となりの死刑囚 1 

確定者の髭剃り

  • 佐藤 優

  • 伊東 乾

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2007年9月13日(木)

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国家とは何か、権力とはどう使うべきものなのか、死刑には何の意味があるのか。これまで日本では真正面から議論、考察されたことがあまりないテーマについて、現在最もホットな作家である佐藤優氏と伊東乾氏が5時間以上にわたって熱く議論した内容をシリーズにしてお届けしています。第2章は死刑囚の人柄に迫っていきます。(司会進行は本誌編集長 川嶋 諭)

対談風景

左:伊東 乾 氏 右:佐藤 優 氏(写真:山下 裕之、以下同)


佐藤 僕が死刑廃止を考えるようになった4番目のきっかけなんですけれど、それは、隣の独房にいた死刑確定囚の人柄に触れたことにあります。それで、死刑の意義を根本から考え直すようになりました。

伊東 体験に基づいて確信を持たれたわけですね。

佐藤 そうです。私の隣人というのは、30年以上前、共産主義革命を目指して大事件を起こした人です。もう少しはっきり言えば、名前を出せば誰でも知っている、連合赤軍の幹部だった人ですね。

 独房に居ると実感するんですが、人間というものは順応性が非常に高いんですね。東京拘置所で私の階には数人の死刑囚がいました。

 ある比較的最近刑が確定したと思われる死刑囚は最初、反発しているんだけど、だんだんと自分の置かれている環境に順応してしまって、拘置所の中でも、毎日、看守と冗談を言いながらそれなりに楽しそうに暮らすようになっている。そういう日常を私は知ることになったんです。

 例えば、4人を殺害した連続射殺犯の永山則夫さんはよく知られていますよね。永山さんの『無知の涙』や『木橋』を読むと、順応の雰囲気がよく出ています。ただ、読むとよく分かるのですが、永山さんには、自らの殺人に対する「反省機能」というものが全くない。

 1つの知的な世界にこもって、自己を充足させている。生命を絶たれるという恐ろしい現実があっても、死刑執行はある種の宿命だと封印して、過去の事件、自分が奪った命については考えないで、そういう行為を行った自己を徹底して合理化している。それは、すべての死刑囚の心理に相通じるもののように思います。実際、自ら望まない死を前にすると、人間は奇妙な合理化を図るのだと思いました。

伊東 そりゃあ、そうでしょう。実際に自分だって、例えばガン宣告とかされるだけでも、平静なままでは居られないと思いますよね。まして健康で、まだまだ生きられるものが命を絶たれるとされれば、おかしくなって当然です。

 確定死刑囚は世間から隔離しますよね。元看守の人が書いた本の中で、死刑囚が確定した直後に荒れる様子を「死刑囚たちのわがままに引きずり回される我々刑務官」として延々と書いてあるのを読みました。

 それですぐに思い出したのが、戦時中、出撃命令を受けて、これから死にに行くんだ、と決まった兵士が荒れる。あるいは死に瀕した場所でレイプや略奪などを繰り返す。

 自分の存在を極限で脅かされたり、死を覚悟せざるを得なくなると、性欲であれ、破壊衝動であれ、ワッと出てくるものがあるのでしょう。ある意味では当然だし、またそういうことを、仮に戦時であっても、許容してはならないということで、グロティウス以来の国際法なども出てくるのだと思います。理非が介在する部分をしっかり作ってやらないと、そりゃあダメでしょう。

佐藤 ただ、永山則夫さんのように、死刑確定囚に自己の観念的な世界を作らせて、その中で満足させてしまうのは、被害者に対しても、遺族に対してもちょっと申し訳ないんじゃないかな、と思うんですね。

伊東 それは全くそう思います。

佐藤 いまの死刑制度は死刑囚に自分の罪を語らせないで終わってしまう。死刑囚を社会から隔離するのではなく、社会と向き合うことで自らの犯した犯罪について考えることを放棄できないような状況を作る必要があると私は思うのです。

 そこから、何らかの教訓を読み取って、同じ形態での殺人が繰り返されることを避けるための手がかりを得る。この努力を国家と社会が怠ってはなりません。

 伊東さんが本に書いておられた「あれこれ政治に口出しする陸軍と違って、海軍はだまって任務を遂行し、失敗しても言い訳せずに黙って責任を取る」という「サイレント・ネイビー」という行動様式は、日本を誤らせたもので、僕は行政官の視点から見てすごく嫌いなんです。

 それが自己充足した閉ざされた世界だからです。

伊東 まして現職閣僚が死んで責任を取る、なんて、何一つ建設的には責任取れてないと思わざるを得ないな。

佐藤 伊東さんが言いたかったのは、海軍の黙して語らずという伝統では、日本人は失敗を通じての学びの機会が永遠に失われる。それは大きな問題だ、ということと私は解釈しましたが、妥当でしょうか。

伊東 全くその通りです。

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