(前回から読む)
―― 今はウェブにもいろんな表現形式が出てきて、動画もあれば、音声や動画を携帯できるポッドキャスト、メタバースと呼ばれる仮想空間もあります。こうした新しい技術を企業サイトに活用するうえで、経営者はどういう視点を持っておけばいいのでしょうか。
前回お話しした、経営者に必要な編成感覚の一部になりますが、「内容に最も適した形式で伝える」ことができているかどうか、その確認に尽きますね。

Jストリーム社長 白石 清氏 (写真:大槻 純一、以下同)
現場の方が「この部分は文字と画像で説明して、この部分は動画で見せて……」と表現形式をいちばんうまい具合に組み合わせる。文字を使うべきところは文字を使って、画像が適しているところは画像で、動画で見せるべき物は動画で見せる。それをきちんと説明できるか、いち消費者として説明通りに機能している、と感じられるか。
そう言ってしまえば当たり前に聞こえますが、例えばウェブでの映像配信も大きく分けると、オンデマンドとライブの2種類がありますから、その2つをうまく使い分ける必要があります。
映像配信の真骨頂、ライブ中継だって使いよう
―― オンデマンドとは、受信者がプレイヤーのスタートボタンをクリックすると、発信者側にあらかじめ置いてある動画や映像データが流されてくる仕組みで、現在のウェブ動画、映像配信のほとんどはオンデマンドですね。一方、ライブとは生中継・生放送のこと。
はい。現在では通信技術が進んでいますので、インターネットでもかなり高画質のライブ映像を流すことができます。映像は、ライブの力がいちばん発揮されるものではないかと思います。ライブを映像以外でやろうとしたら、ものすごく大変なことになる。例えば、野球を文字で生中継しようとしても、無理がありますよね。
―― 確かに。
ラジオではアナウンサーと解説者の声で野球中継をしていますが、やっぱり映像でバンと見せられるのが、いちばん分かりやすいし、伝わってくるものがあって面白い。テレビでも、現場でその時に起こっていることをそのまま生中継するのが、いちばん視聴率を取れるといいますね。
―― 不謹慎な例ですが、地震などの災害情報も、「震度5」とか「負傷者何十人」と言われてもピンと来ませんが、被害状況を映像で見せられると、うわっと思いますね。
タイムリーにきちんと情報を伝える手段としては、映像を使ったライブというのは、とても有効な表現手法だと思います。けれどウェブでは、ライブが上手に使えていない現状があります。ウェブのライブ配信に適している素材が、まだ十分に発掘されていないことが理由のひとつだと思います。
―― ライブというと、ニュース感がないとどうしても成立しないと思うのですが。
それでも、成功例も出てきていますよ。
市況のライブ解説が50~60代にも好評
私達がお手伝いさせていただいている、大和証券の「ダイワインターネットTV」というサイトでは、アナリストリポートなどの映像コンテンツをオンデマンドで放送しています。さらにサイト内に、大和証券のオンライントレードを利用している方々と有料会員の方々向けに「ダイワインターネットTV Plus」というコーナーがありまして、そこでは生放送の番組もあります。
―― オンデマンド番組とライブ番組はどういう中身の分け方をしているんですか。
その前に、このサイトができた経緯をざっとお話ししますと、もとは衛星放送がはやった頃に、本社で制作した番組を衛星放送で各支店に流したのが始まりです。当時は、今みたいにネットで株や先物の取引なんてできませんでしたから、お客さんは支店に行って、社員さんから推奨銘柄などを聞いて取引していました。ですから、取引の知識や最新動向に関するオリジナル番組を支店で流して、お客さんに参考にしてもらうというのは、いいアイデアだったんです。
そのうちに、インターネットが普及したので、自社のウェブサイトにも力を入れていこうということで始まったのが、「ダイワインターネットTV」です。開設当初はオンデマンド番組だけだったんですが、現在は、ライブ番組を追加しています。というのも、証券取引って、特にデイトレーダーが増えてからは、時間が勝負の側面がありますよね。だから、刻々と変わる市況を生放送で解説してほしいというニーズに応えて、ウェブでのライブ番組も始めたんです。
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