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「成長維持へ、問われる真の経済政策」
田中直毅
国際公共政策研究センター理事長

「2010年日中逆転」碩学が語る(5)

  • 日経ビジネス編集部

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2007年10月5日(金)

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 1980年代から中国をたびたび訪れ、幅広い分野の知識人と意見交換を重ねてきた経済評論家の田中直毅氏は、中国のGDP(国内総生産)が日本を逆転するインパクトは経済よりも安全保障面に表れると指摘する。2010年以降も中国が成長を維持するためには、社会体制を含む変革が不可欠だという。
(聞き手は 日経ビジネス編集部)

田中直樹(たなか・なおき)氏
1945年愛知県生まれ。東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。国民経済研究協会主任研究員を経て、85年より本格的に評論活動を始める。2007年4月、小泉純一郎元首相を顧問に迎えて国際公共政策研究センターを設立し、理事長に就任。
(写真:村田 和聡)

 中国のGDP(国内総生産)が2010年頃に日本を抜いたとしても、日本の経済人はそれほど反応しないと思います。日中をGDPの規模で比較したところで、個別企業の経営にはほとんど関係ないからです。

 むしろ過敏に反応するのは安全保障の分野に携わる人々だと思います。10年前の1997年、中国政府の歳出は東京都と同じくらいの規模でした。ところが、それから十数年で日本に並ぶ水準まで拡大を遂げつつある。いくら日本経済が停滞していたとはいえ、中国のスピードがいかに速いかが分かります。

 その点、軍事支出というのは「GDP比で何パーセント」というところに国家の体質が表れ、それがどのくらい伸びるかは財政規模との兼ね合いが大きい。中国のGDP比の軍事支出は日本よりもウエートが高いですから、日本を上回る規模の国家財政を備え、相当な軍拡をファイナンスできるとなると、中国はいよいよ軍事大国になる。そういう可能性を見据えざるを得ません。

 冷戦時代、日本は米国の要請を受けて、旧ソ連の戦略原子力潜水艦を監視するための対潜哨戒機を大量に配備しました。当時、日本はこれを中東から石油を輸入するシーレーンを防衛するために必要だというロジックで正当化しました。中国がこれと同じロジックを掲げて、東シナ海などで海軍の本格的な増艦に向かうことも考えられます。その時、いかに中国の軍備拡大に反論していくのか、日本の見識が問われると思います。

経済政策がなくても急成長できた

 中国はこれまで高い成長率を確かに実現してきましたが、それはトウ小平氏が唱えた「改革開放」路線を守り、ひたすら加速してきただけでした。92年の南巡講話により、中国は対外的に開放されました。もっと重要なのは国民意識の解放で、中国の人々はいわゆる資本主義的な、あるいは金儲け主義的な行動に対するお墨付きを得ました。それをきっかけに、自己実現の欲望に火がついたのです。

 もともと潜在的な成長力を有し、人口構成が若いという特徴があったところへ、長い間閉じていた中国経済の扉が開き、外国からの投資が加速度的に流れ込んだ。と同時に、「金儲けのためならば何でも許される」と考えた国民が一斉に走り始めた。そういう意味では、これまでの中国には経済政策というものがおそらく必要ありませんでした。具体的な政策がなくても「改革開放」とさえ言っていれば、急成長を遂げられたというのが実情でしょう。

 ところが、人口予測のデータを見ると、総人口に占める生産年齢人口(15~59歳)の比率は2010年頃でピークを迎え、その後は急速に高齢化社会に向かいます。総人口は2030年まで増え続けるものの、そこからは減少に転じる。

(【最終ページにアンケートのお知らせがございます。是非、ご覧ください。】

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