「神谷秀樹の「日米企業往来」」

顧客のおもてなしを忘れたマイレージ

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2007年11月5日(月)

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 海外で長く暮らしていると一層感じられることが、かつては日本の旅館や小料理屋、そして街の商店の至る所に溢れていた「おもてなしの心」が、ここ最近退化し始めていることだ。

 航空会社やホテルなど接客がビジネスの要と言えるような業界でも、かつてのような心の通った接遇は期待できなくなった。マイレージやメンバーシップ・プログラムは顧客満足度を向上するためのものと会社側は位置づけるが、「客単価を向上させる」もしくは「集客効率を向上させる」ためのものであって、顧客を心からもてなすものではない。場合によっては、乱暴な表現になってしまうが「客をむしるツール」に見えてしまう。

無料航空券はございません、が機内は空席ばかり

 例えば、ある日本の航空会社の場合、貯まったマイレージでファースクラスやビジネスクラスの無料航空券を申し込んでも、チケットを入手できることはまずあり得ない。それならば仕方ないと、正規料金を払っていざ機内に乗り込むと、周りには空席がいくつもある。時には席の半分くらいが空いている。こうした光景を見ると、顧客ロイヤルティーを向上させるどころか、顧客の反感を強めるためのプログラムに見えてしまう。

 こんなこともあった。某ホテルがメンバーシップ・プログラムの改定を連絡してきた。その内容は、例えば、これまで朝食は無料だったが、今後は20%の割引にするが有料に変えるというものだ。

 航空会社は原油高によるコスト増、ホテルは競争激化による単価低減など経営環境は決して順風ではない。しかし、顧客につけを払わせる前に、彼らが必死になって状況の改善のために努力しているとは思えない。顧客が反発を覚えるようなことを何の気なしにしてしまうのは、自分たちのブランドを大切に育もうという意識に欠けているからではないかと思わざるを得ない。

2年保証ですが、私とあなたの間では永久保証

 私はブランド品の購入に勤しむような人間ではないが、会社の仕事として、顧客のブランド育成の手伝いをしている関係から、ブランドとは何かを常に考えている。ブランドを考えるうえで参考になるエピソードを紹介したい。

 私たち夫婦は20年ほど前、結婚10周年の記念時計をマンハッタンの5番街に位置するとある欧州有数の宝飾店で購入した。私たち夫婦はその時計をとても気に入っていたのだが、1つだけ不満があった。

 妻の時計の電池が、1年とたたずに切れてしまい、その現象が続いたのだ。3回目の電池取り替えの時に、時計の販売担当であるサムが私たちにこう言った。「この時計は不良品で、当社として世に出しておくに恥ずかしいものでした。申し訳ありません。新しいものに交換させていただくため、この時計を引き取らせてください」。3年近くも使った“中古品”を、当然とばかりに新品に換える店員の姿を見て、私は彼のブランドに対する誇りというものを感じた。

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著者プロフィール

神谷 秀樹(みたに・ひでき)
ロバーツ・ミタニLLC創業者兼マネージング・ディレクター

神谷秀樹

1953年東京都生まれ。小学校時代をタイで過ごし、75年早稲田大学政経学部経済学科卒業後、住友銀行入行。ブラジル・ミナス・ジェライス連邦大学留学を経て、84年ゴールドマン・サックス証券に移籍。92年に日本人では初めて米国で投資銀行の「ミタニ&カンパニー・インク」を設立、95年に「ロバーツ・ミタニLLC」に社名変更。米国在住。著書に『ニューヨーク流たった5人の「大きな会社」』『さらば、強欲資本主義』(いずれも亜紀書房)『強欲資本主義 ウォール街の自爆(文春新書)、共著に『世界経済はこう変わる』(光文社新書)がある。これまでに大阪府海外アドバイザー、フランス国立ポンゼショセ大学国際経営大学院客員教授などを兼務。

(写真:丸本 孝彦)

ロバーツ・ミタニLLCのサイトはこちら



このコラムについて

神谷秀樹の「日米企業往来」

日米の巨大金融機関で勤務した後に、顧客と投資家と投資銀行家の3者の利害が一致する投資銀行を実現したいと一人で投資銀行を設立した筆者。日米の企業風土や人生の価値観などを指摘する。

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