ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーが全米自動車労働組合(UAW)と今後4年間にわたる新労使協約に調印することで合意に達した。フォード・モーターも近いうちに、同じような内容で合意に達すると予想されている。その結果、日本の自動車メーカーは、米国市場において、これまでのように安穏とはできなくなるだろう。
なぜなら、今回の協約改定によって、日本勢とビッグスリーのコスト競争力の格差が確実に詰まるからだ。ミシガン大学・自動車研究所のデビット・コール教授によれば、これまでGMはトヨタ自動車に比べ、医療費や年金などの支出で、クルマ1台当たり約4000ドルの負担増を強いられていた。しかし、今回の改定によって、それが約800ドルまで縮まるという。
トヨタとGM、時給は逆転する
今回の合意内容のうち、ビッグスリーの経営に与える影響が最も大きいのは、「任意従業員福利厚生基金(VEBA)」の設立が決まったことだ。GMを例に取ると、2010年までに退職者やその家族に対する医療費の支払い義務をUAWの基金に完全に移管することになった。
GMはこの基金に総額359億ドルの資金拠出を余儀なくされるが、その代わり、長年苦しめられてきた医療費負担から解放される。厳密に言えば、今後、基金が底を突いた場合、GMは訴訟も覚悟しなければならないので、追加負担のリスクが完全に無くなったとは言えない。
しかし、日本勢に比べ、はるかに大量の退職者を抱えるGMにとって、VEBA設立にこぎ着けた意味は大きい。現在510億ドルと試算されている医療費債務のうち、359億ドルがバランスシートから消えて無くなるからだ。格付け大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスはさっそく、GMの長期債格付け見通しを「ネガティブ」から「ポジティブ」に変更した。
また、賃金については、組み立てラインなど中核業務で働く社員と、部品の仕分けや清掃といった非中核業務で働く社員の時給を分ける「2段階賃金制度」を導入することになった。その結果、新規従業員などで構成される非中核業務の時給は25.7ドルと、現行組合員のおよそ半分になる。現在でもトヨタ自動車の米国工場はGMと遜色ない時給を出しているので、今回の合意によって、少なくとも新規従業員については、トヨタとGMは時給が逆転する。
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1934年生まれ。56年伊藤忠アメリカ入社。93年伊藤忠商事副社長。2002年3月に伊藤忠商事退社後、J・W・チャイ・コンサルタンシーを設立し社長に。ビッグプロジェクトの仕掛け人として知られる。いすゞ自動車と米ゼネラル・モーターズ(GM)の提携(1971年)をはじめ、トヨタ・GM提携(84年)、イトーヨーカ堂の米サウスランド(セブン―イレブンの元親会社)買収(91年)、伊藤忠、東芝の米タイム・ワーナーへの資本参加(92年)などの国際提携を演出してきた。韓国系米国人で日本在住経験もあることから、世界経済の潮流について複眼的な視点を持つ。米コネチカット州在住で、妻は自動車評論家・アナリストとして著名なマリアン・ケラー氏







