「「リッチコンテンツ虎の巻」」

経営者には「これを伝えたい」気持ちがあるか?

バックナンバー

2007年12月7日(金)

1/2ページ

印刷ページ

前回から読む)

―― 経営者が自社のウェブをどう考え、どう使うか。この連載は今回で最終回になりますので、総論としてもういちどまとめていただけますか。

 ウェブサイトをつくるにあたっての参考データをひとつご紹介します。これは、先日、当社が実施した調査なんですが、個人の利用目的でのネット環境についてAグループ「携帯のみを利用する」「PC、携帯の両方を使うが、主に携帯を利用する」とBグループ「PC、携帯の両方を使うが、主にPCを利用する」「携帯のみを利用する」に同じ設問をし、ネット利用行動の違いを比較したものです。Aグループについては携帯電話端末、Bグループについてはパソコン端末でのインターネット調査です。

 この調査のなかで、ユーザーが抱える企業サイトへの不満について聞いたところ、携帯、パソコンとも、「ほしい情報がどこにあるかわからない」(携帯のみを使う人+主に携帯を使う人 56.2%、パソコンのみを使う人+主にパソコンを使う人 59.2%)ことと「表示に時間がかかること」(携帯のみを使う人+主に携帯を使う人 60.7%、パソコンのみを使う人+主にパソコンを使う人 44.1%)。このふたつに対する不満がダントツで高かったんです。

図表 ユーザーが抱える企業サイトへの不満(2007年10月 Jストリーム調べ)

図表 ユーザーが抱える企業サイトへの不満(2007年10月 Jストリーム調べ)

ユーザーの不満は、分かりにくさと使いにくさ

―― 「面白くない」(携帯のみを使う人+主に携帯を使う人 13.4%、パソコンのみを使う人+主にパソコンを使う人 16.3%)「情報量が少ない」(携帯のみを使う人+主に携帯を使う人 22.1%、パソコンのみを使う人+主にパソコンを使う人 16.0%)という不満は少ないんですね。

Jストリーム社長 白石 清氏

Jストリーム社長 白石 清氏 (写真:大槻 純一、以下同)

 情報の量や中身については満足しているけれども、「情報の見せ方」に対する不満が多い。ですから、分かりやすく使いやすいサイトづくりが、まずは大事ということです。

 あと、これからのウェブサイトを考える上で、ページビューという指標に加えて、総利用時間という指標も重視する必要があるでしょうね。これは今年の7月にネットレイティングスが新しく発表した指標ですが、同社の調査によると、YouTubeとWikipediaは、ページビュー数の順位は10位と21位なんですが、総利用時間では4位と8位に上がるんです。かたや、ページビュー数で4位のGoogleは、総利用時間では12位に下がります。

―― なるほど。YouTubeやWikipediaは、長く見てもらったり読んでもらったりしてなんぼですが、Googleは探し物をさっさと見つけてもらってなんぼですものね。ウェブサイトの目的や使い方にあわせて、評価指標を考える必要があるということですね。

 このデータからもうひとつ言えるのは、YouTubeやニコニコ動画、GyaOなどの動画サイトは総利用時間が長いということです。なので、サイトの総利用時間を長くしたければ、動画を使うのは有効な手段ということは言えます。

 ただし、サイトに動画を載せる場合に気をつけていただきたいのは、インフラの問題です。ウェブ動画はテレビと違って、インフラを整えておかないと、ユーザーのネット端末できちんと動画を見ることができなかったり、サイトにアクセス自体ができなくなったりしますから。

―― サイトにアクセスが集中して閲覧できなくなって、「サイトが落ちた」と言われるトラブルですね。

 テレビCMの場合は、送信部分はテレビ局側で行っていましたから、クライアント企業が「ちゃんと放送できるか」ということまで考える必要はなかったんですが、ウェブの場合、様々な通信環境、パソコンなどの端末環境を配慮して、企業は「トラブルはないか」「ユーザーに問題なく映像が届くか」というところまで心配しないといけません。

 昔のホームページは文字と画像だけでしたし、ブロードバンド人口も限られていましたから、「落ちる」というトラブルはほとんどありませんでした。なので、企業のウェブ担当者の中には、昔の延長で考えていて、インフラへの注意を怠って、トラブルが起きて、「まさか落ちるとは思わなかった」とおっしゃる方がいらっしゃいます。

 運用の詳細は、担当者や専門業者に預けることになると思いますが、経営者の方々には、危機管理のために、こういう背景知識も持っておいていただけたらと思います。ユーザーのネット環境によって、インフラの世界も目まぐるしく変化してきました。最近ではPtoPなど新しいネットワーク技術も出てきており当社でも取り組んでいますが、Jストリームでは、動画配信のインフラ会社として培った実績から、どういう場合はどのくらいのアクセスが想定されて、どのようなインフラの準備が最適かを語ることができます。

自社サイトを見直す第一歩は?

―― 現場の声を聞いてみると、企業サイトについては、営業部、マーケティング部、宣伝部、IR部など、それぞれの部署が別々に予算と権限を持っていることが、「サイトで何か新しくて面白いことをやる」ことの障壁になっているように思います。

 いわゆる縦割りの弊害ですね。大きい会社になればなるほど、そこは難しいところですね。

―― 大きいことを言ってしまうと、各部署がバラバラにかかわるのではなく、「広報部」みたいな部署を新設して、広報宣伝IRすべてについて、サイトの企画から運営までを任せるようにすると、企業のウェブ活用はもっと面白くなるんじゃないかと思うんです。

 おっしゃる通りですね。実は、私達がお手伝いさせていただくのは、プロモーションサイトが多いんです。常設サイトではなく、新製品を期間限定でピーアールするサイトです。ある程度独立して存在できるサイトなので、販促などを担当するセクションが、単独で予算と権限を持って私達に発注してくださる。そうなると、かなり自由に思い切ったことができるんです。

―― ということは、経営者がトップダウンで、「宣伝部に予算と権限を与えるから、この新製品のプロモーションサイトを自由に立ち上げてくれ」みたいなことをやってみるといい?

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
この記事を…
内容は…
コメント0件受付中
トラックバック
著者プロフィール

奥原 剛(おくはら・つよし)

1974年、大阪生まれ。PHP研究所を退社後、フリーランスライターに。執筆業の傍ら、東京都台東区で「操体レクリエーション」を開業し、気持ちよさで身心の治癒を促す医術「操体法」の施術・講習を行なっている。

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス、日経クリック、日経パソコン編集を経て、2006年2月から日経ビジネスオンライン副編集長、編集委員を務めた後、2010年4月から日経ビジネスアソシエ副編集長。ツィッターはこちら



このコラムについて

「リッチコンテンツ虎の巻」

 企業にとってウェブは「自分のメディアを持てる」媒体だ。自らの言いたいことを、自ら発信できる。それはとても大きなメリットがあり、同時に、ひとつ間違うと非常に危険なことでもある。ウェブを介して人々は「どのような企業なのか」の印象を持つ時代。その時、「我々は顧客に、どういう企業だと思われたいか」を決めるのは、まさに経営・マネジメント層の仕事だろう。

 ならば、経営層は、自社のウェブコンテンツにどういう意識で向き合えばいいのか。ウェブ上での動画配信専業会社として誕生し、現在は動画、Flash、携帯配信などの企画制作から配信、効果測定までを広く手がけるJストリームの白石清社長との対話から「経営層が、自社のウェブに載せるコンテンツの企画書を見るポイント」を明らかにしていく。専門家の意見に振り回されず、自社のメッセージを顧客により正しく深く伝えるコツを、白石氏の話の中から掘り出していきたい。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン