快適なオフィス空間作りは、企業にとって今や無視できない戦略の1つとなっている。働きやすく、居心地のいいオフィスは、社員の仕事に対するモチベーションを高めるだけでなく、新入社員をはじめとした人材獲得のためには企業の大きなセールスポイントにもなる。
ただし、単に見栄えをよくするだけでは意味がない。一人ひとりの仕事の能率を高め、社員同士のコミュニケーションを活発にし、自社のイメージを高めるようなコンセプトがオフィスデザインには求められる。このため、企業の中にはオフィスデザインを手がける専門の会社に、自社のオフィス空間の設計やデザインを一括して任せたいと考える企業も多い。
翔栄クリエイト(東京都港区)は、こういった企業のニーズを捉えて業績を伸ばしている会社だ。2006年度の売り上げは13億円。2001年からオフィスデザインを事業の中心に据え、売り上げを伸ばしてきた。
社員は44人。営業職のほか、デザイナーや電気設備などを手がける専門職も自社内に抱えている。
翔栄クリエイトが順調に業績を伸ばしてきた背景には、社長の宇佐神慎(うさみ・まこと)独自の信念に基づいた営業戦略がある。
相見積もり、コンペをやめなければ仕事は受けない
「御社の業績が上がるオフィスデザインをします」

宇佐神 慎(うさみ・まこと)氏
1959年宮城県生まれ。茨城大学工学部中退、茨城キリスト教大学卒業、東京基督教短期大学中退。87年、業務用電話機の販売会社に入社。97年翔栄システム設立。05年社名を翔栄クリエイトに変更(写真:大槻純一)
宇佐神は、デザインを依頼してきた顧客に初めて会った際に、はっきりとこう言う。コストの安さやデザイン性だけが翔栄クリエイトの強みではないことを示す言葉だ。
通常、オフィスデザインを外注したいと考える企業は、数社に相見積もりを取ったり、デザインのコンペを行ったりして発注先を決める。
しかし、宇佐神は「そういうところは顧客ではない」ときっぱりと突き放す。コンペを企画している顧客からの問い合わせに対し、「まず、コンペをやめてください」と言うほどだ。
傲慢に聞こえるこの物言いは、徹底的に顧客のためを考えて仕事をするという、宇佐神の確固たる経営理念によるものだ。
「コンペに参加して仕事を取ろうとすると、お客様を見ずに他社である横ばかりを見てしまう」
それでは、本当の意味で顧客本位の仕事ができなくなってしまうというのが、宇佐神の考え方だ。
顧客企業の業績まで上げると宣言するのは、「オフィスデザインを変えて社員のモチベーションが上がれば、会社全体の生産性が上がるというのが理由だ。
実際、宇佐神が顧客企業と向き合う姿は、経営コンサルタントそのものだ。最初に顧客企業に出向く際には宇佐神も同行。相手先には総務の担当者ではなく、必ず経営者に出てきてもらう。
初対面の時点で数時間をかけて、なぜオフィスデザインを変えたいのか、何のためにオフィスをリニューアルしたいのかを経営者から直接、ヒアリングする。
新時代の教習所のコンセプトを提示してくれた
「最初の打ち合わせの段階から社長が来たのでびっくりした」というのは、都南自動車教習所(神奈川県座間市)の中山智晴社長だ。
若年層の人口減で、自動車教習所は教習生の確保が難しく、苦戦を強いられているところが多い。都南自動車も置かれた状況は同じ。安く早く免許を取れるというだけでは生き残れない。
中山は、全国規模の研究会にも参加し、教習所の今後の姿を描くことについて頭を悩ませていた。その結果、指導員のコミュニケーション能力を高め、教習生一律ではなく、一人ひとりに合わせたカリキュラムを組み立て、サービス業として教習所を捉え直すという意識改革が教習所側に必要だと考えた。
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