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「テレビの失敗」からの大逆転劇(中)

ネットでスポーツ界を制するMLB

2008年1月10日(木)

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 米メジャーリーグ(MLB)がニューメディア戦略を推進していくうえで、最も配慮しなければならないのはテレビ局でした。なぜなら、テレビ局こそMLBに巨額の放映権収入を支払っている最大のビジネスパートナーだからです。

MLB(リーグ機構)が締結しているテレビ放映権契約(全国放送)

 現在、MLB(リーグ機構)は、地上波ではFOXと7年総額18億ドル(約1980億円)、ケーブルテレビではESPNと8年総額23億7000万ドル(約2607億円)、TBSとは7年総額7億ドル(約770億円)のテレビ放映権契約(全国放送)を結んでいます。単純計算では、1年平均で約6億5300万ドル(約718億円)の放映権収入を得ていることになります。

 また、これとは別に、各チームが独自に地域のローカルテレビ局と放映権契約を結んでいます。ちょっと数字は古いのですが、以下は2001年のローカル放映権料の一覧で、その総額は5億7127万ドル(約628億円)にも上ります。

テレビ放映権で、ネット放送もできるのか?

 MLBがインターネットビジネスに乗り出そうとした時、テレビ局が最も恐れたのは、ネット中継がテレビ視聴者を奪ってしまう、いわゆる「カニバライズ」が起きることでした。テレビ視聴率が低下すれば、それはCM収入の減少を意味します。

 今でこそ、米国ではネットとテレビの両方で視聴できる視聴者は、高画質のテレビを選択することが確認されています。したがって、スポーツ中継では「ネットはテレビをカニバライズしない」ことが定説となっています。しかし、MLBがネット中継を始めた2003年当時は、テレビ局が抱いた危機感たるや、相当なものがありました。

 ネットに試合中継の主導権を奪われたくないテレビ局は、「放映権とは、試合中継をファンにライブで伝えることができる権利であり、テレビ局はネットでも放映する権利も持っている」と主張しました。つまり、ネット中継権はテレビ放映権に含まれている、というわけです。しかし、MLBがこうしたテレビ局の言い分を認めれば、彼らにとって新たな収益源となる可能性を秘めたネット放映権を、みすみすテレビ局に渡してしまうことになります。

 巨額の放映権料を支払うステークホルダーであるテレビ局の主張に対し、MLBはネット中継がテレビ中継に悪影響を与えないことを、証明する必要に迫られました。そこでMLBが持ち出したのが「ブラックアウトルール」だったのです。

米国スポーツ放映のからくり

 このルールを理解するには、テレビ放映が、米国のプロスポーツで行っているフランチャイズ制度を支える仕組みを、頭に入れておく必要があります。

 米国のスポーツ中継はローカル放送が基本となっています。例えば、2007年シーズンのワールドシリーズ覇者のボストン・レッドソックスを例に取ると、地元のケーブルテレビ局、New England Sports Network(NESN)が年間162試合の9割以上に当たる148試合を放映しました。FOXやESPNといった全国放送が中継したのは24試合だけです。
 
 レッドソックスは人気チームなので全国放送の数は比較的多いのですが、平均的なMLBのチームでは年間の9割近くの試合をローカルテレビ局が放映し、全国放送は10試合あるかないかという状況です。

 つまり、米国ではボストンの住民は9割方がレッドソックスのファンなのです。実は米スポーツ界のフランチャイズ制度を支える根幹は、このローカル放送を中心としたテレビ中継にあるのです。

 なぜなら、このことによってフランチャイズ地域での地元チームのテレビ露出が圧倒的に多くなるため、ボストンに住んでいたらレッドソックスの、シアトルならマリナーズの試合を目にする機会が圧倒的に多くなるのです。これはバスケットボールでもアイスホッケー、アメリカンフットボールでも同じです。テレビ中継で目にできるの試合の大部分は、地元チームのものなのです。

 その結果、地元チームのファンが自然と出来上がるのです。これは、日本全国どこにいてもほとんど毎日、読売ジャイアンツの試合を見ることができた日本のプロ野球のテレビ放映モデルとの大きな違いです。

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「「テレビの失敗」からの大逆転劇(中)」の著者

鈴木 友也

鈴木 友也(すずき・ともや)

トランスインサイト代表

ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)出身。スポーツ経営学修士。中央大学非常勤講師

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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