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下村治博士の20年前の警告を見つめよ

  • 神谷 秀樹

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2008年2月4日(月)

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 池田内閣の参謀として所得倍増計画を設計した経済学者として知られる下村治博士は、石油ショック以降は、「安価な資源が無制限に安定供給されるという『成長の基盤』はもはやなくなった」と喝破し、「ゼロ成長論者」になった。そして、1987年にはさらに『日本は悪くない 悪いのはアメリカだ』(ネスコ刊)という著書を発表している。

 現在起こっている米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題を発端とする米国並びに世界経済の混乱の本質を理解するには、実に20年前に書かれた本書をひもといていくことをお勧めする。なぜなら、現在の混乱は、下村博士が当時に指摘した問題と、その解決として提唱された処方箋を、米国も日本も採用せず、対症療法を重ね、さらに問題を数段拡大してしまった結果と理解できるからである。

 下村博士が本書で指摘している根本問題は、レーガノミックス以降の、米国の財政並びに経常収支の「双子の赤字」とその赤字を招いている、米国消費者の「稼ぐ前に金を借りて消費する」体質である。米国のGDP(国内総生産)の7割は個人消費である。この個人消費は、クレジットカード、ホームエクイティローン、自動車ローンなどの借金によって形成された。日本や中国からの輸出も、彼らの借金力に大いに頼っていたのである。

借金で火の車の経済にメスを入れた

 国の財政も赤字、経常収支も赤字、生産力は低下する中で、発展途上国であればとっくの昔に破綻し、IMF(国際通貨基金)の管理下に入ったであろう。その国が、たまたまドルという基軸通貨を自国通貨とし、海外に垂れ流した金が還流するシステムを構築することで、「借金火の車経済」を繰り回し、あたかも繁栄しているかのように見せかけ続けた。

 下村博士はこれを「砂上の楼閣」と呼んでいる。そして「身の丈以上の生活の仕方はやがて破綻し、その時にドルは暴落する。また日本が米国に行った貯金も返らなくなる」と警告した。米国政府に対しては大幅な歳出削減と増税以外に道は無いと説いた。そして米国民に対しては、「マネーゲームに惑わされず、堅実な生活設計を立てること。あまり欲の皮を張りすぎると悪徳業者にだまされるのがオチである」と説いていた。

 しかし、実際にはどうなったのか。誰も博士の警告に耳を傾けなかった。その後も日本の土地バブルを含めて、日米ともに何度かのバブルと、バブルの崩壊を経験したが、日米政府ともに常に金利を下げ、通貨供給量を増やし、「バブルの崩壊の処方箋は、またバブルを創ること」という政策を重ねた。

コメント7件コメント/レビュー

下村博士のことを初めて知りました。まさに本質を着いていると思います。アメリカの問題点は多数あります。その根本的な問題は、「命より金」という考え方にあります。例えば銃で何人もの命が奪われても銃を規制しようとはしません。また牛が狂牛病になっても全頭検査をせず、日本にごり押しで送りつけてきます。(喜んで食べている日本人の気が知れませんが)戦争を起こし、あるいは長引かせ、軍需産業が利益を得るようにしています。金持ち階級が政治を動かしており、結果金持ち階級に対する処遇が有利になり、税体系が上には甘く下に厳しい制度になっています。日本もそれにならい消費税導入、所得税軽減で金持ち階級に有利にされました。そのため日本も「命より金」と言う考え方に毒されて来つつあるように思えます。その不公正を解消しない限り世界の未来はないといえるでしょう。つまり消費税の撤廃、所得税の累進課税の強化、1億円以上の収入は90%以上税金とすると言った思い切った政策が必要でしょう。(2008/09/18)

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いただいたコメント

下村博士のことを初めて知りました。まさに本質を着いていると思います。アメリカの問題点は多数あります。その根本的な問題は、「命より金」という考え方にあります。例えば銃で何人もの命が奪われても銃を規制しようとはしません。また牛が狂牛病になっても全頭検査をせず、日本にごり押しで送りつけてきます。(喜んで食べている日本人の気が知れませんが)戦争を起こし、あるいは長引かせ、軍需産業が利益を得るようにしています。金持ち階級が政治を動かしており、結果金持ち階級に対する処遇が有利になり、税体系が上には甘く下に厳しい制度になっています。日本もそれにならい消費税導入、所得税軽減で金持ち階級に有利にされました。そのため日本も「命より金」と言う考え方に毒されて来つつあるように思えます。その不公正を解消しない限り世界の未来はないといえるでしょう。つまり消費税の撤廃、所得税の累進課税の強化、1億円以上の収入は90%以上税金とすると言った思い切った政策が必要でしょう。(2008/09/18)

もう少し気楽に。世界は、暴力を直接むき出しにる支配から、金というクッションをはさんだ支配に移行している。人に借金をさせることは支配下に置くことと同義だ。支配を先を争って進めることが何よりも優先されるのは世の常だ。もう一つ、もっと肯定的な見方もある。金に限らず人間が相互に信頼関係を築くことは非常に大きな効果があり発展には欠かせない。ゆえに人は基本的には相手を信用する特性を身に着ける。この特性を逆手に取る行為の一つが、詐欺である。これは残念だが無くなることは無い。また、信用は確実であると断言できないものを信じるから信用なのである。故に、事故は起こる。失敗からは学べばよい。立ち直れないほどの失敗を避ければよい。今回のことは立ち直るのに数年を要するとは思うが、死ではない。あらゆる生き物は拍動を持つ、我々は経済の拍動の中に生きているのだ。(2008/03/08)

神谷先生の卓見は正しいが、取るべき考え方ではない。何故なら世界同時不況に陥るからです。それに耐えるべきだというのが神谷先生のお考えでしょうが、耐えられるのは先進国であって中国などの途上国ではない。より厳密に言えば中国のなかでも富裕な1億人は耐えられても、貧困な10数億人が耐えられないでしょう。すると何が起こるか?中国の貧困者による革命が起こり、現在の富裕な支配者1億人は虐殺され、新たに中国を支配する怒れる貧困者の政権は、その恨みつらみを世界の先進国にぶつけ、次の世界戦争(核戦争)へと突入することでしょう。破局の後には、放射能で汚染されながらも、真のより平和で民主的な世界が生まれるでしょうが、そのときには国土の狭い日本はほとんど核により破壊されつくし、日本人はほとんど生き残れないものと思われます。以上は極端なシナリオですが、世界の為政者は国際政治に巨大なリスクをもたらすような世界同時不況をもたらすような政策は採用できないのです。中国やインドが長期的な高度成長を遂げ、世界の半分の人口が先進国ないし、それに近い水準に達し、国際政治のリスク要因が大幅に減ったときに、初めて下村博士や神谷先生が言われる正しい調整経済政策を世界は受け入れることが出来るのです。その時期は、早くても20年か30年後になるのではないでしょうか?(2008/02/09)

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三品 和広 神戸大学教授