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このままでは日本は中国に追い抜かれる

日産の生産現場で何が起きているのか(2)

2008年3月24日(月)

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 生産現場のクオリティーを現場力の向上によっていったんは引き上げた日産自動車。だが、生産現場はグローバル化が進み、中国をはじめ海外の工場もレベルを高めて、日本の工場は後ろから突つかれている状況だ。

 海外の工場の上を行き、さらに力を伸ばすために、何をすればよいのか。もちろん社外との競争の方が結局は激しいが、その前に自社内の工場の間で生き残りを懸けて争わなければならない。

 今津副社長は、「現場力」を高めるに当たり、現場の人間が多くを見て刺激を高めることが必要だと考えた。そのため、現場の係長クラスをどんどん海外工場の視察に行かせると、意識の変化が明らかに表れ始めた。

(聞き手は、日経ビジネス オンライン編集長 川嶋 諭)

(前回記事「現場の知恵はトップダウンを超える」)

―― 日本の生産現場で、世界各地の工場との差を広げてトップランナーとしてモノづくりをリードする試みは、今も続けているのですか。

今津 英敏氏

今津 英敏 (いまづ・ひでとし)氏
1949年山口県生まれ。72年九州工業大学工学部機械工学科卒業後、日産自動車に入社。98年生産技術本部車体技術部長、99年英国日産自動車製造会社出向管理職、2002年日産自動車常務、2006年常務執行役員、2007年副社長(担当は欧州事業、生産、SCM) (写真:小久保松直)

今津: 2004年に準備を始めて以来、今もずっと推進しています。

―― 国内の工場同士でお互いに情報を共有してレベルを高め合ったことで、海外の工場との差をまた少し広げることができたのでしょうか。

 一度は広げることができました。しかし、すぐに追いつかれます。例えば、追浜工場と英国のサンダーランド工場は同じマーチを造っているのですが、彼らは私たちの指標を見ているので、工場の設備稼働率が急に良くなったりするたびに、どうして追浜は変わったのかと頻繁に聞いてきます。

 その質問に対して、私たちは細かいファクターに分けて全部やり取りします。彼らもやはり日本の工場に勝った負けたを気にしていて、英国の負けたラインの現場監督者が日本に1週間ほど視察に来ることもあります。

―― 日本になぜ負けたのかを調査していくわけですね。

 負けた理由を調べ、それを持ち帰り、サンダーランドでそのまま実行します。それとは逆に、指標を見ていてサンダーランド工場の方がいいと思える点もあります。日本の工場が負けているところがあるわけです。

 すると今度は、こちらの工場の係長クラスが行くのです。係長でないと、現場を見て逐一のケアはできないですからね。

―― 現場の係長を海外に視察に出してもいいというわけですか。それもコストが掛かることですが、そのコストに余りある成果がある、と。

 そうです。もちろん1回行っただけで、そのまま大きな“おみやげ”を持って帰れるかどうかは分かりません。でも何度も視察に行くと、今までは工場内とか日本の工場間で競っていたのに、次第に海外の工場のことも気になってくるわけです。グローバルでモノを考えるというように、意識が変わってくるところがありますね。

「海外に行かせる費用がもったいないと思ったことはない」

―― 現場の人間に国際的な意識が植えつけられる。そして自分も何かあったら会社のコストで見に行き、そのコストを会社は気にするのではなく、むしろ積極的に行って自分で見てこいというやり方は、社員のモチベーションを高めることでしょう。

 そうですね。表から見えるファクターだけを並べても、結局だめなんです。例えば品質だったら、いろいろなパラメーターを取っていますから、どの工程のどこで負けているのかを知る必要があります。その積み重ねの結果として負けたり勝ったりしているわけです。だから細かなベンチマークシートでつぶしていくと分かるわけです。それが本当に分かるのは、現場を任されている人です。

―― いわゆる係長のクラスが増えて出張旅費が増えることで、日産の現場力が高まり、実は全体のコストを下げて品質を上げているとしたら、これはコストが掛かっているように見えて、実はその数倍の価値があると言えますね。

 その通りです。係長を海外に行かせる費用がもったいないと思ったことはありません。また、品質保証の現場の人間を新車発売と同時に米国に行かせると、そこで陸揚げされた車が現地で整備されるところを見て、ここは良くないとか、いろいろな発見があります。その時、彼らはすぐ、そのクルマをどの工場のどの係長のラインが造っているのか分かるんです。

―― 人間まで特定できてしまうのですか。造っている人のトレーサビリティーができるとは面白いですね。

 これはあそこの組、ここの作業をやっているのはあの組だというので、すぐそこからフィードバックが入るのです。現場同士の太いパイプがあるわけです。

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「このままでは日本は中国に追い抜かれる」の著者

大村 洋司

大村 洋司(おおむら・ようじ)

海外事業戦略室プロデューサー

1989年日経BP入社。95年「ナショナルジオグラフィック日本版」編集、2004年同誌副編集長。07年「日経ビジネスオンライン」副編集長。10年「日経ビジネスアソシエ」副編集長。12年1月より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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