「鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」」

酒が生み、たばこが育てたNASCAR(下)

トヨタ初勝利、「カムリで勝ってタンドラを売る」のからくり

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2008年3月27日(木)

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コバルトツール500を制しビクトリーレーンでポーズをとるカイル・ブッシュ コバルトツール500を制しマシンの上に乗り歓喜するカイル・ブッシュ コバルトツール500を制しクルーメンバーと共に歓喜するカイル・ブッシュ

写真上:コバルトツール500を制しビクトリーレーンでポーズをとるカイル・ブッシュ。
(c)AFP/Getty Images/John Harrelson
写真中:コバルトツール500を制しマシンの上に乗り歓喜するカイル・ブッシュ。
(c)AFP/Getty Images/Jamie Squire
写真下:コバルトツール500を制しクルーメンバーと共に歓喜するカイル・ブッシュ。
(c)AFP/Getty Images/Rusty Jarrett

 今月9日に米ジョージア州ハンプトンのアトランタ・モーター・スピードウェイで開催されたNASCAR(全米ストックカー協会)最上位カテゴリー「スプリント・カップ」の第4戦「コバルト・ツールス500」にて、トヨタ自動車7203が歴史的な初勝利を収めました。

 スプリント・カップはこれまでGM(ゼネラル・モーターズ)、フォード・モーター、クライスラーの米国3大自動車メーカーの牙城で、外国メーカーが勝利を収めたのは1954年の英ジャガー以来、54年ぶりとなる快挙となりました。

 トヨタのNASCAR初登場は2000年のことでした。トラック部門のレースであるクラフツマン・トラックシリーズに「タンドラ」で参戦し、昨年から「カムリ」で乗用車部門にも参戦していました。

 実は、9日に「カムリ」で勝利を挙げたドライバー、カイル・ブッシュは、7日のクラフツマン・トラックシリーズでも「タンドラ」で勝利を挙げており、同一週末に行われたカップシリーズとトラックシリーズ両方で勝利を挙げたNASCAR史上初のドライバーとなりました。

 トヨタにとっては、大いにその存在感を示した週末となったわけですが、実は2007年にトヨタが「カムリ」でNASCARに参戦した際、多くがクラフツマン・トラックシリーズから撤退すると考えていました。トラックシリーズは、スプリント・カップへの足がかりだと考えたのです。

 しかし、トヨタは撤退しませんでした。なぜなら、トヨタがNASCARに参戦する最大の目的は、「タンドラ」を売ることだからです。実は「カムリ」を走らせるのもこのためです。一見不可思議なトヨタのこのマーケティング戦略を読み解くには、NASCARスポンサーシップの本質を理解しなければなりません。
 

年間75億円にも及ぶスポンサーシップ料

 前回のコラムで解説したように、NASCARが米国でNFL(全米フットボール協会)に次ぐ“第2の人気スポーツ”にまで上り詰めた背景には、スポンサー企業・ファン・ドライバー(チーム)3者による鉄の“トライアングルモデル”の存在があります。ファンやドライバーがスポンサー企業に非常に高い忠誠心を示すNASCARでは、スポンサーとなるフォーチュン上位500社の数が他のどのプロスポーツよりも多く、逆に多くのプロスポーツがこのNASCARモデルに注目し始めています。

 NASCARは、このトライアングルモデルを用いた徹底的なスポンサー企業へのメリット創出によって、他のスポーツリーグとの差異化を図ってきました。高額なスポンサーシップフィーの対価として、企業に様々なスポンサーシップ権を与え、売り上げ増大に大きく貢献するのです。

 現在、NASCARのオフィシャルスポンサーの権利料は1社当たり年間2000万ドル(20億円、1ドル100円換算以下同)前後と言われています。レース名に社名を入れることができるタイトルスポンサーとなると、その額はさらに跳ね上がります。2004年にNASCAR最上位レースカテゴリーのタイトルスポンサーとなった業界シェア第3位の携帯電話キャリア、スプリント・ネクステルは、10年総額7億5000万ドル(750億円)の契約を結んでいます。

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著者プロフィール

鈴木 友也 (すずき・ともや)

鈴木 友也 ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。1973年東京都生まれ。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)を経て、マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツ経営大学院に留学(スポーツ経営学修士)。世界中に眠る現場の“知(インサイト)”を発掘し、日本のスポーツビジネス発展のために“提供(トランス)”する――。そんな理念で会社を設立し、日本のスポーツ組織、民間企業、メディア、自治体などに対してコンサルティング活動を展開している。ほかにも講演、執筆でも活躍中。著書に『スポーツ経営学ガイドBOOK』(ベースボール・マガジン社、2003年)、訳書に『60億を投資できるMLBのからくり』(同、2006年)がある。中央大学商学部非常勤講師(スポーツマネジメント)。ブログ『スポーツビジネス from NY』も好評連載中。Twitterのアカウントはtomoyasuzuki

(写真 丸本 孝彦)



このコラムについて

鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」

「スポーツビジネス先進国」と言われる米国。その市場規模や人気などで日本を凌駕する。そこでは、日本にいては思いつきもしない先進経営が繰り広げられている。だが、進みすぎたが故の問題も内包する。米在住のスポーツマーケティングコンサルタントが、米国スポーツビジネスの現場を歩き、最新トレンドを解説していく。
果たして、米国は日本スポーツ界の「模範解答」となるのだろうか?

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