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パリコレ“埋め尽くす”広島の刺しゅう製作会社

顧客が「驚く」刺しゅうを作っていたら、世界から注文が舞い込んだ

  • 大豆生田 崇志

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2008年4月2日(水)

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 数々の著名な服飾デザイナーが新作を発表するパリコレクション、通称「パリコレ」。毎年3月と10月の年2回パリで開かれ、その年の流行を左右するため世界のコレクションでも参加ブランド数が多く、注目度も高い。そのパリコレに1999年から新しい生地を次々と披露して著名デザイナーが注目する日本の中小企業がある。広島県福山市に拠点を置く美希刺繍工芸である。

有名ブランドのロゴも刺しゅう

 山陽新幹線の福山駅からJR福塩線で約20分の万能倉(まなぐら)駅。かつて繊維の街として栄えた面影を残す紡績工場の広大な敷地に隣接した単線の駅から、徒歩数分のところに美希刺繍工芸の本社がある。

美希刺繍工芸

 従業員は15人、売上高は2006年9月期で1億1000万円。平屋の事務所の奥にある工場に通されると、所狭しと並べられた工業用の刺しゅう機のダダダッという大きな音が鳴り響く。刺しゅう機が縫っているのは、誰もが知っている海外有名ブランドのロゴ。もちろん美希刺繍が縫製していることは、企業秘密だ。

 1969年に創業した美希刺繍は、工業用ミシンで工場作業服に名前を入れるネーム刺しゅうを作ったり、子供服用のアップリケを縫い付ける小さな工場としてスタートした。ただ苗代次郎社長は、顧客の注文を受けて刺しゅうをするだけでなく、常に顧客が驚く「変わったもの」を提案してきた。その創造性や技術力の高さが世界の著名デザイナーの目に留まり、今や、国内外の著名ブランドから声がかかる。その縁で、ブランドのロゴを縫う仕事も舞い込む。

 美希刺繍がパリコレに生地を投入するきっかけになったのは、同業者の紹介で「面白いものを開発する会社がある」と、ユキ・トリイやイッセイミヤケといった著名デザイナーたちに引き合わされたことに始まる。

1着12万円のジャケットが飛ぶように売れた

 苗代社長がデザイナーに最初に披露した試作品は、デニム生地の端切れだった。デニム生地は、表のインディゴ色は経糸、裏側は緯糸でできている。刺しゅう機を使って生地の経糸だけを切ると、緯糸だけが残る。それを洗うと、糸のほつれた部分がポップコーンのように広がって白い穴が浮き出る。こうしてできた模様をデザイナーに見せると、「これは面白い」と身を乗り出してきた。

写真1

写真1:「ワラカット刺しゅう」

写真2

写真2:ユキ・トリイのデニムのジャケット

 織物の経糸だけ切って緯糸だけを残すのは、実は難しい技術が要求される。下手に切ると緯糸もバラバラになってしまう。苗代社長は、刺しゅう機のミシン針の代わりに、刃先を研磨した手作りのメスを装着し、生地の経糸だけ切る技法を開発。こうして刺しゅう糸を使わない新しい刺しゅう技術である「ワラカット刺しゅう」と呼ぶ独特のデザインを編み出した。(写真1

 99年のパリコレに、ユキ・トリイのブランドでデニムのジャケットが発表された。白い穴による模様が描かれた美希刺繍の生地が採用された。パリコレで発表された後、国内で開かれた展示会に苗代社長が呼ばれて行くと、会場には別室が設けられるほどの人気ぶり。1着12万円のジャケットが飛ぶように売れたという。(写真2

 このジャケットには、生地以外に、当時流行していた鏡を縫い込むインド西北部独特の刺しゅうが使われた。その刺しゅうにも美希刺繍の技術が駆使された。苗代社長は当初、手刺しゅうでミラーを留める網を縫い付けるよう求められた。しかし、従来のやり方をしていては作業量が膨大になってしまう。そこで刺しゅう機を改良して網を作っておいてから、手で縫うようにして作業を効率化した。素早く仕上げることができることを知ったデザイナーから、次々注文が舞い込むようになったという。

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