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現場の無茶が独創を生む

出井伸之氏(元ソニー会長兼CEO)が語る日本企業の執念

2008年4月7日(月)

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 ソニーを退いてから、起業家や投資家と接する機会が増えた出井伸之氏。現在はドバイの有力投資ファンドの投資助言役、中国のインターネット検索会社の社外取締役、日本の環境ベンチャー企業の顧問を務めるなど、日本企業を大きな枠から見つめる立場にいる。

 日本の企業の競争力を高めるためにいかにすればよいのか。日本企業で評価される点はどこかにあるかを、日本の競争力低迷に危機感を抱くクオンタムリープ代表取締役の出井伸之氏に聞いた。

(聞き手は、日経ビジネス オンライン前編集長 川嶋 諭)

── ソニーやホンダは創業して60年たっていますが、その後に続く世界銘柄の企業がなかなか出てきません。日本の中で頑張っている企業はいくつもあるのですが、世界に対する日本の競争力はどこにあるとお考えですか。

竹屋 綱英氏

出井 伸之 (いでい・のぶゆき)氏
クオンタムリープ代表取締役

1937年東京都生まれ。60年早稲田大学政治経済学部卒業後、ソニー入社。2度のスイス赴任の後、68年フランスに赴任、ソニーフランス設立に従事。オーディオ事業本部長、ホームビデオ事業本部長を経て89年取締役就任。94年常務、95年社長、99年共同CEOを経て2000年会長兼CEOに就任。2005年会長兼CEOを退任。2006年クオンタムリープを設立し代表に就任 (写真:小久保松直 以下同)

出井 日本の競争力が何かと言えば、やはり現場の人が一生懸命やるというのが暗黙知の世界だと思います。国際銘柄の企業は確かになかなか出てきませんが、それは時期やタイミングもあるでしょう。

 ソニーの場合で言えば、井深(大)さんと盛田(昭夫)さんの出会いが大きいのですが、もう1人忘れてはいけないのが、現場をつくった岩間(和夫)さん。渡米してトランジスタを研究し、ラジオやテープレコーダーを作り、日本の半導体の生みの親とも言える人物です。

 岩間さんが後に挑戦したのはCCD(Charge Coupled Device、撮像素子)です。僕が若い頃は、あんな無茶なことをやったってできるわけがないと言われていました。ところが、そんなチャレンジを成し遂げ、小型ビデオカメラの“生態系”をつくってソニーが制したわけです。

── “生態系”というのは、その商品群の世界ということですか。

 そうです。1つの社会のような世界をつくり出したというわけです。ソニーの商品を見てみると、そこには必ず現場の半導体の力、デバイスを作る力があり、そしてプロダクトプランニングの力があります。要するに一番初めのキーの技術があり、それをどう作るかというのがあり、それを生産に落とし込み、それをマーケティングする。そう戦っていますね。

 最近の例ではブルーレイがあります。ブルーレイのブルーレーザーを作るのに10年以上も続けており、ブルーレーザーに取り組んだことのない会社とは執念が違います。

 マイクロソフトだって、ソフトには現場力があるけれども、ハードに関してはそれほど興味は持っていません。例えばCCDを作った岩間さんのお墓にはCCDが張ってあります。それほど心やパッションが入っていて、入れ込んでいるわけです。

 「少し売れなくなったら、もう事業をやめよう」と思っている会社が多くても、CCDで最後まで利益を上げ続けようとする。トップの意志やパッションと、現場の力が両輪となって進んできたということです。

成功の陰に血のにじむような努力あり

── 成功するか成功しないかは、経営者の執念と、現場力の度合いが大きい、と。

 例えば、トリニトロンカラーテレビを作ろうと井深さんが決め、そういうデバイスを作ろうと言った時、そんなのはシャドーマスクをほかから買ってきた方が簡単じゃないのと言ったら、もうそこの会社は終わっちゃうんです。

 ブラウン管がフラットになった時にも、その後ろのベガエンジンとか、解像度を上げるチップの現場のレベルには感嘆するばかりです。そこは全くブラックボックスで、ライセンスはソニーの中で閉じているわけです。

 成功した商品の裏には必ずデバイスがあります。そのデバイスを作る時の血のにじむような努力、さらに商品を格好のいいデザインにする力がいるのです。

 商品が生まれるまでには、まず「こんな商品を作りましょう」というトップの思いがあります。これを持たないトップもいるけど、思ってくれないと困りますね。その思いに対して、横へと進む技術が入ります。上から縦に入るトップの思いと横へと進む現場の技術がぶつかり、ある段階まで進むと商品となるわけです。

 有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)だったら10年かかるとか、これは全部の商品に当てはまることです。もちろん横に進む技術を持っていない分野はほかから借りてもいいわけです。こういう横への技術の力で生きているのが、例えば村田製作所とか、ローム、オムロンです。縦のトップダウンが強いのは、ソニーとか、パナソニック(松下電器産業)です。

 トヨタ自動車を支えているのはデンソーであり日立製作所でしょう。日立の中に縦の華やかな道を行かず、横のことを一生懸命やっている技術屋さんがいるわけです。日本の強さはこの縦横の組み合わせがうまいところにあり、これが国の強さだと思います。この縦と横の組み合わせというのを、みんな意外に見過ごしているんですよ。

── なるほど。とりわけこの縦が重要そうですね。とにかく何をやろうと思わないといけないから、大変なことですね。

コメント13件コメント/レビュー

傍目八目なのか…。ソニー在職中も理念は掲げるものの、モノ作りを無視しきっていたとしか思えないだけに滑稽に感じます。経験から学んだことであるというのならいいのですが。むしろ氏は米国金融業>日本製造業という思想しか見えないような戦略を取っていませんでしたか? モノを造るというのは情熱・理念・卓越した知識が不可欠なのですが、その情熱を奪い去ってしまったからソニーはもがいたのだと思っています。(2008/04/09)

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「現場の無茶が独創を生む」の著者

大村 洋司

大村 洋司(おおむら・ようじ)

海外事業戦略室プロデューサー

1989年日経BP入社。95年「ナショナルジオグラフィック日本版」編集、2004年同誌副編集長。07年「日経ビジネスオンライン」副編集長。10年「日経ビジネスアソシエ」副編集長。12年1月より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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傍目八目なのか…。ソニー在職中も理念は掲げるものの、モノ作りを無視しきっていたとしか思えないだけに滑稽に感じます。経験から学んだことであるというのならいいのですが。むしろ氏は米国金融業>日本製造業という思想しか見えないような戦略を取っていませんでしたか? モノを造るというのは情熱・理念・卓越した知識が不可欠なのですが、その情熱を奪い去ってしまったからソニーはもがいたのだと思っています。(2008/04/09)

「現場が大事」「縦横の組み合わせが重要」など、言っていることは正しいように聞こえるのですが、今一つ説得力に欠けるのは、氏の在任中にソニーが弱体化した事実に加え、やはり氏の論調が観念論に過ぎるからでしょう。氏は現場力を持ち上げてますが、そこに由来する非効率には眼をつぶっています。また米国金融業<日本製造業と主張したいようですが、現在資本主義における金融の重要性を軽視しているように見えます。その背後には、昨今流行の日本崇拝・英米排斥という国粋主義的観念論が透けて見えて、氏も観念論に囚われたか?という疑念が湧いてきます。ソニーの没落理由も、その辺りに原因がありそうですね。(2008/04/07)

読んでいて不思議な気がした。ソニーの社員が読んだらどんな感想を持ったのだろうか。現場力を軽視し、観念的な話ばかりで、現場力の強かったソニーをダメにしたのは、斯く言う氏ではなかったか。氏が社長をしているときの物作りの社員の悲鳴や怨嗟を聞いたことがある。今回の話も観念的で評論家の域を出ていない。長い間の低迷から、氏が退任して、漸くソニーらしさが戻ってきたことは多くのソニーファンの評価であろう。(2008/04/07)

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