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ダラダラ会議が現場のスピードアップを生む

世界シェア9割、優良企業アルバックの全員納得経営(1)

2008年5月1日(木)

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 米国企業型の経営によって、日本企業は経営力を高めなければいけないと盛んに言われたのは一昔前。この10年、日本はいろいろと苦しんできたが、今は風向きが変わり、日本独自の新しい経営スタイル「新日本型の経営」が着実に息づいている企業がある。

 液晶テレビに欠かせない、真空技術を使った製造装置で世界シェア9割以上を握る、東京証券取引所第1部上場企業アルバック(神奈川県茅ヶ崎市、従業員数1638人)。5期連続の増収増益の立役者、中村久三会長は、会議で経営者の強い意思を直接伝え、社員の当事者意識を高めることが、現場の力をスピーディーかつ最大限に引き出すカギと考え、業績を大きく伸ばした。

 アルバックでは“ダラダラ会議”という徹底した議論を通じて全社合意に至り、経営の方向性を決める方法を採用。このユニークな仕組みが、社外からは分かりにくいが、革新を生んでいる源泉となっている。

 「会議はダラダラやる方が効果がある」「成果主義はアンフェアだ」「経営手法は“トヨタ式”よりも自分流」と公言する中村会長に、全員参加型経営によって、赤字企業から世界一のシェアを持つ製品を持つまでに急成長を遂げた秘訣を聞いた。

(聞き手は、日経ビジネス オンライン編集長 廣松 隆志)

── 薄型テレビの製造装置では、世界シェア9割以上という圧倒的なトップに立っています。これは最初にこの分野で勝負すると方向づけを決めた時からトップを取ると考えていたのでしょうか。

中村 久三氏

中村 久三 (なかむら・きゅうぞう)氏
アルバック代表取締役会長、工学博士

1947年長野県生まれ。74年東北大学大学院金属材料工学専攻・博士課程修了。同年、日本真空技術(現アルバック)入社。88年同社千葉超材料研究所長。96年、アルバック社長に就任。2006年、会長に就任(写真:小久保松直 以下同)

中村 そうです。ただ、こんなに大きなマーケットになるとは思ってはいませんでした。製造装置は製造業を引っ張っていく1つの方向なので、そこでは「勝ちたい、1位になりたい」ということを鮮明に社員に言いました。そして、そのためにはいろいろと無理も社員にお願いするわけです。そして、1位になるためには「やらなくちゃしょうがないんだ」ということで、やってくれる人が出てきます。

── 当時、主力だった半導体製造装置で出遅れていましたね。

 東京エレクトロンやアプライドマテリアルズという非常に大きな会社が急成長していったのですが。我々は技術開発競争に乗り遅れ、半導体製造装置の需要を逃しました(1993年6月期には経常赤字に転落)。半導体でも何とかニッチなところでいいから世界トップになりたいということで、今もやっていますし、その頃もやっていたのですが、やはり出遅れたというのは大きいんですね。

 それで、次の成長分野では必ず世界一になると決めたのです、そうならなかったら会社は危ないと思いましたので、それは口酸っぱく言いました。その教訓を生かし、ディスプレーの中の一部の工程の装置ですが、そのボリュームが大きい製造装置のメーカーになれたのです。そこはもう本当に「事業にするぞ」と言い続けて、ようやく実現できたわけです。

── 世界一のシェアを取る原動力になったのが、アルバックならではの会議だというのが中村会長の持論です。多くの社員を集めて何時間も会議を続ける“ダラダラ会議”。その最大の効用とは何でしょうか?

 出席者全員を巻き込み、本音をぶつけて徹底的に議論することで、行き過ぎた個人主義を改め、合意形成ができることです。会議時間は長くなるけれども、その場で先送りせず、決断していく。これは、トータルで見れば実はものすごく効率的だと分かってきました。

 決断を会議中に下さずに先延ばしにすると、「俺は聞いていない」と言う人間が出てきたり、「俺のメンツはどうなっているんだ」とか変なものが議論され、それでまた1カ月後に役員会で決定するということになりかねない。

 とにかく、どんなことでも会議の場に出して議論をして決着をつけています。そういうストレートな意思決定の方法が結局は会社全体の意思決定のスピードアップにつながっています。

自由に議論できる場で物事を決めていく

── 会議をするとなると、根回しをしたり、あるいは次回までに社内調整をするということが確かに煩わしいし、時間がかかりますね。

 その前に「とにかく議論しよう」と言って会議を始めると、そこであらゆる調整と決断が終わるのです。そこに同席する従業員も、問題の本質がよく見えます。当事者たちがそうやって直接的に議論をした方が早いというのが、僕らの考えなんですね。

── どんなに時間がかかっても、参加者が納得するまで延々と会議をするスタイルは、1996年に社長に就かれた時から始まったのですか。

 その頃、いい言葉と悪い言葉の両方の意味で“朝令暮改”という言葉がはやった時代でした。僕が社長になった時は、「もう朝令暮改だ」と告げていました。とにかく早く決断をし、間違えたらすぐにまた変える、と。決断をしてスピードをつけないことには、製造装置の世界的な競争に負けてしまうのです。

 その前のアルバックの文化では、少しスピードが不足していると感じていました。会議が多くて長くなると、何かスピードが遅くなるようなイメージがありますが、独自のアルバック流を考えた末に決めたこの方法で、かえってスピード感が出ていると僕は思っています。関係者が集まって問題解決のための議論をストレートにやっていくということは、会社のスピードを上げるにはどうしても必要なんです。

── 情報を共有されるわけですね。決まった目標が上から降ってきて「やりなさい」ということと、自分がそこに参加し、自由に議論できる場で物事が決まっていくのでは、当然、社員のモチベーションも違ってくる。

 結局、何かを決めても、その場にいなかった人に対しては、いろいろと伝達をしてやる気を起こさせないといけないんです。やはり少しでも当事者的な、リアルな情報を聞く、あるいはそこで議論をして、どういう過程で決まっていったかということに少しでも参加できると、その後の仕事へのやる気や意識が全然違うと思います。できるだけ会議に参加させるというのは、そういう面もあります。

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「ダラダラ会議が現場のスピードアップを生む」の著者

大村 洋司

大村 洋司(おおむら・ようじ)

海外事業戦略室プロデューサー

1989年日経BP入社。95年「ナショナルジオグラフィック日本版」編集、2004年同誌副編集長。07年「日経ビジネスオンライン」副編集長。10年「日経ビジネスアソシエ」副編集長。12年1月より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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