「資源ウォーズの世界地図」

生き返ったオールド・エコノミーの恐竜、BHPビリトン社の野望

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2008年5月7日(水)

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 2008年度、鉄鉱石、原料炭そして発電用一般炭の価格が、資源メジャーによる値上げ攻勢によって急上昇している。それも半端ではない。対前年、鉄鉱石はブラジルのバーレ社(Vale)からのものが65%アップで決着、BHPビリトン社とリオ・ティント社には80%アップを要求されている。

 それは、ブラジルに比べてオーストラリアは日本に近いので運賃差額分(フレイト・プレミアム)をよこせというわけだ。信じられない傲慢な要求だ。そして、原料炭は3倍、一般炭は2.3倍といった具合で、鉄鋼、電力、セメント各社を直撃している。

 関係する産業界のコスト負担増は2兆5000億円を超える。鉄鉱石、石炭とともに、銅などのベースメタル、金、ニッケル、アルミニウム、レアメタル、ウラニウム、ダイヤモンド、そして石油・天然ガスといった原・燃料資源も軒並み高騰している。

 これらすべてを事業対象とする世界最大の総合資源会社が英豪BHPビリトンである。オーストラリア、中・南米、アフリカ、インドその他、世界25カ国の100カ所で操業を行っている。

 BHPビリトン社の2007年6月期の業績は、同社アニュアル・レポートによると連結売り上げ474.73億ドル、当期利益は184.01億ドル、売上高利益率は46.5%に達する。そして株式時価総額は現在約1900億ドルとなっている。

 これを、日本の代表的な資源関連企業、新日本製鉄および住友金属鉱山の2007年3月期業績と比較してみよう。新日鉄は、連結売上368億ドル、当期利益30億ドル、利益率8.2%であった。

 時価総額は約360億ドルである。住友金属鉱山は、売上高83億ドル、当期利益11億ドル、利益率13.0%、時価総額は約106億ドルである。時価総額についてはいずれも2008年4月5日の値。

 これらの数字でその実力の差が分かる。BHPと新日鉄は売上高ではあまり差はないが、利益では6:1である。住友金属鉱山とは、売上で5:1、利益で14:1と圧倒的な差である。そして日本の企業は時価総額が小さい。

 世界のトヨタと比較しても、売り上げはトヨタの方が6倍と勝っているが、利益は両者ほぼ同水準、時価総額は1720億ドルでBHPより小さい。フォーチュン500のランキングでは売上高を基準にするため2007年度トヨタが6位に対しBHPは205位である。

 なぜこのように資源メジャーの利益が大きいのか。それは、資源利潤と呼ばれるものによる。新しく資源を開発するには地質調査に始まり、権益取得、探鉱、開発計画、インフラ整備、環境アセスメント、地域住民の同意取りつけ、開発工事そして操業に至るまでに10〜20年という長年月を要する。それに、カントリーリスク、マーケットの変動など多くのリスクが伴う。したがって、精錬、金属の流通加工、製品製造といった川下の産業に比べてそのリスクも比較にならないほど大きいから利潤も大きいわけだ。

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著者プロフィール

谷口 正次(たにぐち まさつぐ)

谷口 正次

資源・環境ジャーナリスト。1960年九州工業大学鉱山工学科卒、小野田セメントに入社。同社資源事業部長などを経て、1994年に秩父小野田常務、1996年専務、1998年に太平洋セメント専務。2001年に屋久島電工社長(太平洋セメント専務取締役兼務)2004年6月国連大学ゼロエミッションフォーラム理事(産業界ネットワーク代表)。主な著書に「メタル・ウォーズ」(東洋経済新報社)、「入門・資源危機―国益と地球益のジレンマ」(新評論)など。



このコラムについて

資源ウォーズの世界地図

産業を支える資源に対するリスクが高まっている。銅やアルミなどの非鉄金属はもちろん、自動車の触媒に必須なプラチナ、次世代電気自動車に使われるリチウムなどのレアメタルも、“資源メジャー”や新興国の国家戦略とも絡み始めている。これまでカネさえ出せば入手できたさまざまな産業のキーとなる鉱物資源の囲い込みが始まっている。このコラムでは、鉱山技術者として世界の現場を踏破してきた筆者が、これからの資源リスクについて解説する。

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