「人以外、何でも売って歩いている青森ですよ」。青森県の三村申吾知事は冗談めかしてこう語る。2003年6月の知事就任後、「総合販売戦略課」を設立。「攻めの農林水産業」をキャッチフレーズに、青森県産の農産物を国内外に売り込む。
知事の笑顔とは裏腹に、青森県が置かれた現状は厳しい。基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字幅は縮小しているが、県の借金を表す県債残高は1兆2746億円(2007年9月末)と一般会計予算の1.8倍という水準にある。有効求人倍率も「0.47」(2007年)と全国最低レベル。使用済み核燃料の再処理工場という県特有の問題も抱えている。
だが、「売って売って売りまくる」、そう明るく語る三村知事と青森県の取り組みは、苦境にあえぐ地方が進む1つの方向性を示している。2007年6月に再選を果たした三村知事。独得の調子で、これまでの取り組みや成果を語った。まずは、青森空港の活性化の話から──。
──利用者数の減少が続いた青森空港ですが、ここ数年は減少に歯止めがかかってきている。中でも、ソウル便では利用者数の増加が顕著です。国際便のてこ入れに、知事自らトップセールスを仕掛けたという話を聞きましたが、実際のところはどうなのでしょう。
三村 私が知事になった2003年頃、(韓国―青森空港間を運行している)大韓航空はもう青森空港便を止めようか、と。そこまで追い込まれていたんだよ。そこで三村は考えた。やはり営業が重要なんじゃないかとね。
韓国の旅行会社社員と酒を酌み交わし戦略練る
もうね、5年前は国内線も国際線もいまいち元気がなくて。せっかくヨン様(ペ・ヨンジュン)が元気な時なのに「ソウル―青森」路線の元気がない。でね、韓国の観光公社や旅行会社があるでしょう。そういう会社に乗り込んで、青森県と戦略チームを作ったわけよ。それで、韓国の人たちと「爆弾兄弟」になった。分かるでしょ。「爆弾酒」を一緒に飲むから爆弾兄弟。
──どれだけ飲まれたんですか。
どこへでも自ら出向いて青森をセールスする、三村申吾知事
(写真:宮嶋康彦、以下すべて)
三村 飲んだ。いや、各社ごとに飲んだ。最初は思いっきり飲んだけど、段々減らしてもらった。あれはすごいね。5杯目ぐらいからもうダメだぁ。
まあ、それはさておいて、どうやったら青森県を応援してもらえるかを含め、いろいろ議論しました。そしたら、韓国の観光公社の社長からこう言われた。「青森は良いコンテンツを持っているのに、お前らは何をしているんだ」と。
確かに、青森県は温泉資源には事欠かない。酸ヶ湯や不老ふ死温泉などの面白い温泉だけじゃなく、八甲田や大鰐温泉郷などもある。スキー場やゴルフ場だってどこにでもある。実際に青森県に来てもらって、いろいろとアイデアをもらいました。
──具体的にどのようなアイデアだったのでしょう。
例えば、「ツアーにトレッキングを入れよう」と言ってきた。日本人はあまりやらないけど、韓国の人って結構歩くんだよね。白神山地や八甲田山が青森県にはあるわけで。実際に、白神山地や八甲田山を旅行会社の人たちに見てもらった。今では立派なツアーになっています。
まだあるよ。来年は太宰治の(生誕)100周年。太宰は青森県出身で、「津軽」なども書いた。庁舎から100メートルほど行けば、今でもお孫さんが住んでいますよ。でね、韓国の人は太宰のことをよく知っている。聞けば、日本文学科の中で必ず学ぶらしい。そういうことを教えてくださる。
──なるほど。
これも「へぇー」って思ったんだけど、韓国の方が青森空港に降りた時、「空気が世界一おいしい」って言うんだよ。やっぱりブナだと思うんだけど、ブナの広葉樹林帯は空気が柔らかくて甘い。だから、ゴルフ場の空気だってものすごくおいしい。
それに、韓国の人は生ものが好きでしょう。そう考えると、青森県は海岸線が750キロ。太平洋と日本海の海の幸がふんだんにある。いろいろな物を食べられるわけですよ。こういうコンテンツをホテルと組み合わせていく。
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