• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

“腑に落ちない仕事”を“腑に落ちる仕事”にせよ

キリンビール三宅社長流の現場第一主義(1)

2008年5月15日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 「経営トップと現場の距離を短くする」「一枚岩ではない現場が部門の垣根を取り払って連携する」──。この2つは多くの企業が取り組むものの、なかなか達成できない課題である。現場といっても製造現場や営業現場はそれぞれの論理の中で頑張るということがどの企業にもあり、そのため「全体最適」を目指して1つのチームになるのは難しい。そんな状況では、たとえ商品がどんなに爆発的に売れても、結果的に品切れになってしまうので総合的な強さにはならない。

 キリングループでは、国際化とか、総合飲料や医薬事業、あるいは健康・機能性食品事業の拡充が叫ばれているが、それを支えるのは、1兆8000億円の売り上げのうちの9800億円ほどを占める国内の酒類事業である。これが安定して再成長軌道に乗っていかないと、この先のシナリオは狂ってしまう。だから、長期経営構想を実現するうえでも、キリングループの顔である事業会社キリンビールの屋台骨がぐらつくわけにはいかない。

 上の2つの課題を達成するため、独自の現場第一主義を掲げて全国の工場や事業所を回る、キリンビール社長の三宅占二氏に話を聞いた。

(聞き手は、日経ビジネス オンライン編集長 廣松 隆志)

── 「経営側の立てた大きな目標を、現場が実行する」。経営と現場の一体感が希薄になっているため、このシンプルな上下関係を構築するのに各社が非常に苦労しています。

キリンビール代表取締役社長 三宅 占二氏

三宅 占二 (みやけ・せんじ)氏
キリンビール代表取締役社長

1948年東京都生まれ。1970年慶應義塾大学経済学部卒業後、キリンビール入社。1993年ハイネケン・ジャパン取締役副社長。1997年キリンビールに復帰、マーケティング本部営業推進第1部長。2002年キリンビール取締役東海地区本部長。2004年常務執行役員首都圏地区本部長。2006年常務執行役員国内酒類カンパニー社長。2007年キリンビール代表取締役社長に就任 (写真:小久保松直 以下同)

三宅 そもそも昔から日本の企業は現場力のある組織だったと思うのですが、いわゆる欧米流のガバナンスが入ってくると、トップダウンの話がどう下に浸透するかという部分に、いろいろと軋みが出ているような気がします。世の中全体を見ても、我々の会社でもそうです。

── 2007年7月に持ち株会社キリンホールディングスが設立された後のキリンビールは、国内の酒類事業に集中する会社に変わりましたが、何か変化は。

 かつての荒蒔(康一郎)さん(2001年から2006年までキリンビール社長、現キリンホールディングス会長)のように、医薬も見ながら、海外もやりながら、関係会社のガバナンスもやりながらではないですから、私のところのトップマネジメントと、現場の距離が近づきました。

 しかし、今進めている中期計画(2007~09年)や、2015年までの長期経営構想「KV2015」でグループ全体が考えていることを、紙に書いて伝えたり、長がその場全員に説明したりということだけでは、知らされる方はなかなか腑に落ちないので工夫が必要です。

 1人ひとりの社員が、自分の仕事とそうした計画がどうつながっていて、自分がどういう役割をその中で担っているんだということが腑に落ちないといけない。「計画が上で決まり、言われたからやっています」という仕事のやり方では、絶対に現場力って上がらないですね。

── 「言われたからやる」という仕事では現場力を十分に発揮できず、限界がある、と。

 仕事をこなすことはできます。うちの会社の各部門にいる人は、工場の現場から営業の最前線、物流の仕事をやっている人まで、かなりレベルは高い。放っておいても、一定のアウトプットは必ず出てくるわけですが、それは裏から見れば、言われたことをやらされ、仕事で過不足なくやっているということ。それぞれの仕事が横にきちっとつながっているか、あるいは、やっている人が仕事を通じて自己実現ができて自分の成長が実感できるような雰囲気になっているかというと、それはなってないんじゃないかと思います。

 上下の関係では、とにかく計画をそれぞれの人の腑に落とすことが必要です。もう1つは、チームキリン(作る部門、売る部門、運ぶ部門)の“横連携”。この2つを実現できれば、現場力を十分に発揮できると考えています。

 私はいい意味の“越権越境”と言っていますが、横連携が垣根なしにできて、ほかの部門のことに口を出したり、お節介を焼くことを平気でやる。そういう組織風土をつくらないといけないと思っています。

土俵際に追い込まれていた時に、「のどごし<生>」で横連携を実現

──上下の関係で「腑に落ちる」ところまで理解度を高める、さらに部門の垣根を越えて横連携を実現するにはどうすればよいのでしょう。

 第3のビール「のどごし<生>」(2005年4月発売)の大ヒットの時が参考になります。それまではヒット商品がたまに出ても、すぐに品切れしたりしていましたが、「のどごし<生>」では、本社の製造部門、営業部門、需給を調整する物流部門の3部門がものすごく知恵を絞りました。情報をどんどん修正するのに、部門間が非常にうまく連携することができ、爆発的に売れても品切れを結果的に回避できました。

 何でうまくいったんだろうと振り返った時、そこに携わった人は「これまで僕たちは部門の代表というスタンスだった」と気づきました。営業部門は「できるだけ過不足なく物を作ってください」。製造部門は「売れるのなら作るけど、余った時のリスクはどうするんですか」。物流部門は「ここはこういう順番でやってもらわないと運びきれません」。3部門は各部門の代表としてそんな主張をぶつけ合うということを寄ってたかってやっていたんですね。

 「のどごし<生>」の発売時、当社は土俵際へ追い詰められていました。とにかく、これは絶対ヒットさせなきゃいけない。そういう状況の時に初めて、部門の代表であるという考えを捨て、この3部門で会社全体の生死を握っているんだという考え方になりました。そんな危機感もあり、うまくいったのです。

 この時に負担が一番かかったのは製造部門ですが、当時の製造部門の責任者は下に対して、「できないと言ってくるな」「どうしたらできるかを考えろ」と言ったわけです。

 営業の方も、そこまで製造がやってくれていると分かりますから、きちんと販売活動を展開し、「売り残すな」となる。実際は売り残すどころではなく、もっと売れました。

 よく話に出る「横連携」は、実はこういうことだと実感しましたね。だから、部分最適ではなく、常に全体最適を考える。あるいは、隣の部門がどういう課題を持っていて、何を悩んでいるのかということを知ること、知ろうとしなければいけないことを痛感しました。

コメント5

「日本はやっぱり現場力」のバックナンバー

一覧

「“腑に落ちない仕事”を“腑に落ちる仕事”にせよ」の著者

大村 洋司

大村 洋司(おおむら・ようじ)

海外事業戦略室プロデューサー

1989年日経BP入社。95年「ナショナルジオグラフィック日本版」編集、2004年同誌副編集長。07年「日経ビジネスオンライン」副編集長。10年「日経ビジネスアソシエ」副編集長。12年1月より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の未来は、男性と同じ程度、女性のリーダーが作っていくものだと確信している。

ビル・エモット 英エコノミスト誌元編集長