「御立尚資の「経営レンズ箱」」

「グローバリゼーション」から「グローバリティ」へ
世界市場をめぐる競争の新ステージ

カギはコスト、人材、志

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2008年5月23日(金)

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 グッドベビー(Goodbaby)、パールリバー(Pearl River)、エンブラエル(Embraer)、そしてBYD。これらは、あまり耳慣れないかもしれないが、ある共通点を持つ企業の名前だ。ご存じだろうか。

 これらの企業は皆、それぞれ特定の分野でのグローバルナンバー1企業である。そして、すべて新興国発の企業だ。

 グッドベビーは、世界最大のベビーバギーメーカーで、中国市場で80%という驚異的なシェアを有し、米国、日本など世界中の市場でシェアを高めている。パールリバーとBYDも中国企業だ。パールリバーはピアノ、BYDはニッカド電池で、世界一の企業である。一方エンブラエルはブラジル企業だが、120席以下の商用ジェット機市場のグローバルリーダーだ。

グローバル競争の構造変化?

 彼ら以外にも、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)を中心とした新興国出身のグローバルナンバー1企業が次々と登場してきている。

 もちろん、こういった「新興国」企業群の勃興は、今に始まったことではない。古くは20世紀初頭、英国を中心とした欧州の工業分野での覇権に対し、米国企業が競争を挑み、結果的には、機軸通貨がポンドからドルに取って代わるほどの大きな変化をもたらした。1970年代から80年代にかけては、日本企業が新たな挑戦者として登場し、先進国工業化社会において日本が高い地位に着くに至った。

 これまで企業のグローバリゼーションは、米・欧、そして日本という「先進国」企業が、世界市場に進出し、その活動範囲を拡大するという文脈で語られることが多かった。

 しかし、21世紀に入ってから起こってきているのは、(現時点での)新興国企業も巻き込んだ、グローバル規模での競争だ。

 この新たな競争環境の背景として重要なのは、この間の世界経済全体の構造的な変化であろう。
 
 20世紀後半に、世界の人口は約30億人から60億人以上へと、ほぼ倍増した。またこの間に、世界全体での識字率は、5割から8割へと大きく上昇している。人口増と識字率上昇を掛け合わせて考えると、工業化社会の担い手、働き手となり得る教育レベルの人々の数が、大変な増え方をしたと想定しても間違いなかろう。

 当然ながらこういった「工業化」する働き手は、次第に所得レベルを上げ、自分自身がより高い購買力を持つ中流層になっていき、工業製品の需要を押し上げる。国レベルで考えると、米・欧・日に加えて、世界中の新興国に、「世界の工場」と「その市場」の両方が拡大していったと言うこともできよう。

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著者プロフィール

御立 尚資(みたち・たかし)

御立 尚資

ボストン コンサルティング グループ日本代表。京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。日本航空を経て現在に至る。様々な業界に対し、事業戦略、グループ経営、M&A(合併・買収)などの戦略策定、実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを数多く手がけている。著書に『戦略「脳」を鍛える』(東洋経済新報社、2003年)、『使う力』(PHP研究所、2006年)、『経営思考の「補助線」』(日本経済新聞出版社、2009年)など。



このコラムについて

御立尚資の「経営レンズ箱」

コンサルタントは様々な「レンズ」を通して経営を見つめています。レンズは使い方次第で、経営の現状や課題を思いもよらない姿で浮かび上がらせてくれます。いつもは仕事の中で、レンズを覗きながら、ぶつぶつとつぶやいているだけですが、ひょっとしたら、こうしたレンズを面白がってくれる人がいるかもしれません。

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