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インサイダー取引はなぜ悪いのか

NHKのコンプライアンスに欠けていたもの

  • 郷原 信郎

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2008年5月28日(水)

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 インサイダー取引はなぜやってはならないのか。多くの人は、「違法行為だから」「金融商品取引法に違反するから」と答えるであろう。しかし、それは決して十分な答ではない。それどころか、そういう考え方に基づいて「法令遵守の徹底」にばかりに意識を集中させていることが、かえって、最近のインサイダー取引問題の深刻化の背景の1つになっていると見ることもできる。

 私は、かねて「『コンプライアンス=法令遵守』ととらえるのは誤りだ」と言い続けてきた。こう言うと多くの人が「全く同感だ」と言って大きく頷いてくれる。

 しかし、その人たちのほとんどは、「コンプライアンス>法令遵守」、つまり「コンプライアンスは『法令遵守』では足りない。法令を遵守するのは最低限の要請で、それだけはダメだ。社内規則も、社会規範も、企業倫理もすべて遵守しなければいけない」という考え方だ。要するに、「遵守」は当然だが、その対象を「法令」に限っていることが問題だというのだ。

 私が言いたいのは、むしろ「遵守」という言葉の方に問題があるのではないかということだ。「いいから守れ」「つべこべ言わずに守れ」という命令を含むこの言葉が出てくると、「なぜそれを守らなければならないのか」を考えることをやめてしまう。それについて議論することもやめてしまう。

 「決められていることをそのまま守ればいい」という考え方がその法令をどう活用するのかを考える姿勢を失わせてしまう。そこに、コンプライアンスを「遵守」という意味でとらえることの根本的な問題がある。

「言い訳コンプライアンス」の弊害

 「コンプライアンス=法令遵守」の考え方の下では、企業不祥事は「法令を遵守しなかったこと」つまり、法令に違反することということになる。企業経営者にとっては、法令を守るように部下に命令することがコンプライアンスであり、それをやっておけば、万が一社員が法令に違反したときも、経営者は「私は法令を守れと命令していた。命令に反した方が悪いのであり私には責任はない」という言い訳ができる。

 このような「言い訳コンプライアンス」が支配している組織では、社員はあらゆることについて法令・規則に縛られ、何をするにも、それらに違反していないかどうかをまずチェックしなければならない。

 新たなことへのチャレンジには法令・規則に違反するリスクがつきまとうので、そういうことはしないで、今までどおりのことを今までどおりにやっている方が賢い。それが、新たな試みを敬遠することにつながり、組織には「事なかれ主義」が蔓延する。それは、組織全体に閉塞感を生じさせ、組織の活力を失わせることになる。

法令や司法が社会の中心にない日本

 米国では、膨大な数の弁護士が社会の隅々から様々な問題を訴訟の場に持ち込み、それを市民が参加する陪審裁判で裁く。それは、法令と社会の実態とを適合させるシステムであり、それを維持するためには膨大なコストが費やされている。法令や司法は、まさに社会の中心部に存在している。

 一方、これまでの日本の社会では、法令や司法は、社会内で起きる様々なトラブル、揉め事を解決するうえで中心的な役割は果たしてこなかった。その機能は、社会の中心部ではなく、周辺部での特殊な問題の解決に限定されていた。

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