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「法令遵守」で危機に陥った不二家

フルセット・コンプライアンスが企業を救う

  • 郷原 信郎

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2008年6月4日(水)

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 昨年1月、不二家は、「消費期限切れの牛乳の原料使用」の発覚を発端に、メディアから総バッシングを受け、2カ月以上にわたる全商品の生産・販売の中止という危機的事態に陥った。

 健康被害を出したわけでもなく、その危険が生じてもいないこの問題が、なぜこれ程まで重大な事件に発展してしまったのか。そこには、重要な要因が2つある。

 第1に、当時の不二家の考え方が「法令・規則の遵守」という考え方に偏っており、消費期限切れ原料使用を把握したときにも、「期限遵守の徹底」という考え方だけで対応してしまったこと。

 第2に、事実を隠蔽しようとしたわけでもないのに隠蔽したように誤解され、マスコミ対応の拙劣さのために、その誤解を解消するどころか一層拡大させ、「食品企業失格」の烙印を押されてしまったたこと、すなわち、このコラムの初回でも取り上げた「クライシスマネジメントの失敗」である。

 今回は第1の問題を取り上げ、誤った「法令遵守」の考え方から脱却し、企業が社会的信頼を回復するための方策としての「フルセット・コンプライアンス」の考え方について述べることとしたい。

 なお、この不二家問題の事実関係、問題点、再発防止策等については、筆者が議長を務めた同社の信頼回復対策会議の報告書の中で詳細に述べている。

「消費期限切れ」は形式的な違反に過ぎなかった

  不二家を危機に陥れたのは、埼玉工場での消費期限切れの牛乳の原料使用の事実とともに大きく報道された「発覚したら雪印の二の舞」という言葉だった。

「不二家は、社内で箝口令を敷いて事実を隠蔽しようとした。そこまでやるぐらいだから、不二家が原料として使った『消費期限切れの牛乳』というのはよほど不衛生なもので、不二家の行為は食品メーカーにあるまじき悪質なものだ」というのが多くの人の認識である。

 しかし、それは全くの誤りだった。第1に、消費期限を1日過ぎた牛乳を原料に使用した事実はあったが、それは食品衛生上も、品質上も何の問題もなかった。

 牛乳の期限表示は、高温殺菌であれば「賞味期限」、低温殺菌であれば「消費期限」が一般的だが、不二家が使用していたのはUHT殺菌という超高温殺菌で、本来は「賞味期限」表示の対象だった。

 しかし、不二家埼玉工場で使用する原料牛乳の一部に金属製のリターナブル容器によって搬送されるものがあり、非密封で外からの雑菌の混入の可能性が完全には否定できないため、原料メーカーとして品質を保証するのは製造日から5日、そのために「消費期限」の表示になっていた。

 不二家では、集乳缶で搬送される原料牛乳は加熱工程を経る商品にだけ使用し、最終的には菌検査を行って安全性を確認しており、仮に消費期限を1日過ぎたものを使用したとしても、安全性、品質には影響はなかった。それを原料として使用したのは「形式的なコンプライアンス違反」に過ぎなかった。

問題把握後にしたのは「遵守徹底」の指示のみ

 そして、「雪印の二の舞」という表現は、不二家の内部者が考えた言葉ではなく、同社が業務の全面見直しのために委託した外部コンサルタント会社のスタッフが考え、不二家の経営陣も加わった会議の場にいきなり提出されたものだった。

 コンサルタント会社のスタッフは、消費期限切れ原料使用という形式的違反の問題を、雪印食中毒事件という大規模健康被害が出た問題と同列に扱って危機感を煽り、隠蔽をそそのかすような表現まで使った。そのような表現を用いた報告書が外部に流出し、あたかも不二家の社内で隠蔽を図ったように誤解されたことが不二家の危機につながった。

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