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今や恒例、オリンピックのゲリラ広告(下)

“いたちごっこ”が進化させたマーケティング手法

2008年6月26日(木)

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 空から落ちてきた巨大なサッカーボールが、高級外車をペチャンコに押し潰している――。それを目にした人は、度肝を抜かれるでしょう。そして、巨大なボールに描かれた「ナイキ」のマークは、強烈なインパクトとともに人々の記憶に焼き付けられるに違いありません。

 これは、2004年、サッカー欧州選手権に合わせて実際に使われた「宣伝広告」でした。ところが、米ナイキは大会の公式スポンサーではなかったのです。スポンサー料金は一銭も払っていないのに、あたかもスポンサーであるかのような錯覚を抱かせる宣伝広告を展開する…。この奇襲攻撃(Ambush)のようなゲリラ的マーケティングこそ、前回から紹介している「アンブッシュマーケティング」の代表例です。

「ゲリラの達人」ナイキが繰り出す新手法

 実は、斬新な広告・マーケティング戦略で知られるナイキこそ、「アンブッシュマーケティングの達人(Master of Ambush Marketing)」と呼ばれる存在なのです。

 始まりは1984年のロサンゼルスオリンピックでした。この大会で、IOC(国際オリンピック委員会)は赤字続きのオリンピックを立て直すべく、オフィシャルスポンサーシップ制度を導入します。多くの企業から多額のスポンサー料を獲得したわけですが、その裏で、既にナイキはアンブッシュマーケティングを開始したのです。

 ナイキが巨大スポーツイベントで展開してきたアンブッシュマーケティングは以下の通りです。

・1984年のロサンゼルスオリンピックで、「I Love LA」キャンペーンを展開し、開催都市とのつながりを意図的に強調した
・1986年のボストンマラソンで、新製品の発売日を大会当日に設定し、新製品の形をしたアドバルーンをボストン上空に打ち上げた
・1992年のバルセロナオリンピックで、米国バスケットボールチーム(通称ドリームチーム)のマイケル・ジョーダン選手、チャールズ・バークレー選手と個別に契約を結び、テレビで映像を流し続けた
・1996年のアトランタオリンピックで、米国内の放映権を持っていたNBCより大会期間中のCM枠を購入し、新製品「ズーム・エア」「マックス・エア」のCMを連日オンエアすると同時に、「ドリームチーム」のティム・ハーダウェイ選手に「ズーム・エア」を提供して試合中にロゴが露出するように仕組んだ
・同じくアトランタオリンピックで、オリンピックスタジアムに隣接する駐車場にテーマパーク「ナイキ・タウン」を設置した
・1998年のサッカーワールドカップフランス大会で、試合会場に近いパリのラ・デファンス広場でイベント「ナイキサッカー人民共和国」を開催した
・2002年のボストンマラソンで、開催地近くの地下鉄駅構内に、マラソンをモチーフにした巨大広告を掲示した
・2002年の日韓共催のワールドカップで、バスの車体に付ける広告枠を買い取って最新スコアを掲示するとともに、ナイキが契約するスター選手を起用した独自のサッカートーナメント「スコーピオン」を開催した
・2002年のソルトレークシティオリンピックで、米アイスホッケーチームに用具一式を提供して、テレビでのロゴの露出を狙った

 こうして見てみると、選手と個別に契約を結ぶことで、アンブッシュマーケティングを展開することが、ナイキの常套手段の1つだと分かります。1992年のバルセロナオリンピックの表彰式では、ナイキと契約した選手が、星条旗でユニフォームに付けられた公式スポンサーのロゴを隠したこともありました。

 そして、近年のアンブッシュマーケティングを試みる企業は、かなり知恵をつけてから「戦い」に臨んでいます。先駆者のナイキのような「達人」企業は、何人もの弁護士を擁する特別調査チームが、法的リスクを徹底的に精査しながら、訴訟に敗れないグレーゾーンぎりぎりのところを突いてくるようになっています。大会やイベントを管理する人が、防御できないような領域を巧みに攻めてくるのです。

 さらにやっかいなのは、味方だったはずの企業が、いきなりアンブッシュマーケティングを展開するようになったことです。

身内からわき上がる反乱

カウボーイズのオーナー、ジェリー・ジョーンズ氏

写真は、カウボーイズのオーナー、ジェリー・ジョーンズ氏(Jerry Jones)。
(c)AFP/Getty Images Jed Jacobsohn

 全米フットボールリーグ(NFL)は、1991年に米コカ・コーラとの間に総額2億5000万ドル(約250億円)にも上る5年間の公式スポンサーシップ契約を結びました。しかし、この契約期間中の1995年、NFLダラス・カウボーイズのオーナー、ジェリー・ジョーンズ氏は、コカ・コーラの競合である米ペプシコと、テキサス・スタジアム(カウボーイズの本拠地)における10年間で総額4000万ドル(約40億円)のマーケティング契約を結んでしまいます。

 当時NFLでは、ソフトドリンク分野でチームがリーグ公認スポンサーと競合する企業と契約を結ぶことは許されていませんでした。しかし、かねてリーグの支配力が強すぎることに疑問を持っていたジョーンズ氏は、契約をスタジアムと結ばせるという裏技に出ました。リーグが文句を言ってきても、「契約したのはテキサス・スタジアム。我々とは関係ないから、違反にはならない」と主張したのです。さらにNFLを挑発するかのように、ジョーンズ氏はナイキとスタジアムとの間でも7年間のマーケティング契約を締結してしまいます。ちなみに、NFLのアパレル分野の公式スポンサーは米リーボックでした。

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「今や恒例、オリンピックのゲリラ広告(下)」の著者

鈴木 友也

鈴木 友也(すずき・ともや)

トランスインサイト代表

ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)出身。スポーツ経営学修士。中央大学非常勤講師

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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