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頼りにすべきは肌で感じた景況感

TDK澤部肇会長が語る、厳しさの中でも成長を続ける知恵

2008年6月30日(月)

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 米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題を発端にした米国景気の減速、資源や食料価格の高騰など世界経済は不透明の度合いを増している。前期まで6期連続で増収増益を続けていた日本企業だが、今期は厳しい見通しを立てるところが多い。

 景気拡大が始まる前、IT(情報技術)バブル崩壊に直面し、危機を乗り越えた企業の経営者には今がどう映っているのか。

 TDKはITバブル崩壊で2001年度に初めての人員削減を実施し、上場来初の赤字決算に陥った。当時社長だった澤部肇会長は環境の急変に大きくカジを切り、その後業績をV字回復させた経験を持つ。

 澤部会長に、日本企業を取り巻く経済環境の見通しと、トップに必要な危機を乗り切る知恵とは何かについて話を聞いた。

(聞き手は、日経ビジネス オンライン編集長 廣松 隆志)

 ―― 社長当時の2000年半ば、澤部会長は米国に出張した時、IT需要が鈍り、在庫が積み上がっているのを目の当たりにして景気の変調に気づいたそうですね。その後、会長の予想通りIT不況が日本企業を襲いました。今回の景気の減速は、いつ頃、どのようなところに感じたのが最初でしたか。

澤部 肇(さわべ・はじめ)氏

澤部 肇(さわべ・はじめ)氏
TDK会長

1942年東京都生まれ。64年、早稲田大学政治経済学部を卒業。同年TDK入社。84年経営企画室副部長、91年記録メディア事業本部欧州事業部長、96年取締役記録デバイス事業本部長を経て、98年6月社長に就任。2006年6月会長に就任(写真:大槻純一、以下同)

 2000年当時、社長になって2年ほどしか経っておらず、電子部品にも慣れていなかったという状態でした。それでも米国出張で同業の経営者に会ったり、投資家に会ったりする中で「具合が悪いな」という話を聞いていたんです。

 ところが日本に帰ってきたら、会社は全然能天気で「そんなことはないと思う、社長は心配症で大変だな」などと言われました。それが我々の対応力を遅らせ、傷口を深くした部分もあったと思うんですね。

 ITバブルの崩壊以降、米国経済は立て直しのシナリオがうまくいっていました。借金をして赤字を拡大しながら、消費を拡大し、国内経済を拡大してくれていた。しかし、いずれこのメカニズムは崩れるという話は、3年ほど前からやはり欧米やアジアなどへの出張のたびに聞いていました。

 それでもまだ米国人は、自分たちは人口も増えているし強いんだ、生産性も上がったんだという自信を持っていました。それが2007年5月ぐらいからちょっとトーンが変わってきました。経営者によっては、「いや、ちょっと実はややこしい」と言うようになった。しかし日本ではまだそんな気配はなかったですね。

 ―― そして2007年夏、サブプライムローン問題が顕在化しました。

 あの時も、いや、あれは一過性だとか、デカップリングだとか言われましたけれど、私はそれ以前からずっと危惧していたから、これは間違いなくいよいよ来た、長くて、深いのが来たなという感覚がありましたね。

 携帯電話が多機能化されたり自動車が電装化されたりすると、電子部品の数はどんどん増えます。そのため日本メーカーによる世界出荷額は昨年12月まで34カ月連続で前年を上回ってきました。まさに電子部品業界は我が世の春を謳歌していたのです。

 電子部品は全世界で23兆円ぐらいのマーケットのうち半分近くの10兆円を日系企業が生産しています。長い間ずっとよかったから「まだ落ちないよね」と、みんなが言っていました。ところが今年1月にどーんと落ちましたね。

 ―― ITバブルの崩壊時と現在の経済状況を比べると、どういった点が違いますか。

 ITバブルが起きた時の一番大きな変革は、アナログからデジタルに変わったことと、インターネットが急速に普及したこと、そして中国の台頭の3つです。これに伴って情報と人、そして金がボーダーレスに動きだし、スピードも加速され、それが今日も続いているわけです。

 ここに、米国が世界を引っ張ってきたという構造が、いよいよ見直されるところへ入ったという状況が加わりました。さらに超過剰流動性による資源価格の高騰の問題ですね。これは我々素材部品業にとっては大きな懸念要因です。これはITバブル崩壊時にはなかった問題です。

 さらに食料問題やインフレの問題が出てきました。複雑さや不透明感は当時より増しています。ただ、物や情報、人やお金がすさまじい勢いでボーダーレスに動いているのには変わりないと思います。

6年前の辛い思いが薄れてしまうという人間の怖さ

 ―― こういった状況を見て、澤部会長ご自身が社内で危機感を口に出し、具体的に施策を取るべきだという話をするようになったのはいつ頃からですか。

 昨年8月くらいでしょうか。ただこの時はそれほど実感はなかったです。12月ぐらいからはもう説得力が出てきましたからはっきりと言いました。

 ただ、増収増益を続け、10%の営業利益率を達成したということがありましたので、残念ながら私自身も含めて、緊迫感とか、危機感というのは自然と弱くなっていました。市場という現場をしっかり見ながら、社内でコミュニケーションを繰り返すという動きが弱くなっていたんです。

 やはり人間というのは怠惰なもので、まあ、この程度はいいかと思って、現状の分析が緩くなったり、自分にいいように捉えたりしてしまう。

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「頼りにすべきは肌で感じた景況感」の著者

飯村 かおり

飯村 かおり(いいむら・かおり)

日経トップリーダー副編集長

2007年より「日経ビジネスオンライン」編集部に在籍。信頼できるおもしろいコラムを世に送り出すことを楽しみにやってきましたが、2015年よりクロスメディア編集長となり、ネットから紙の世界へ転身。書籍などの編集に携わっています。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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