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大阪のケースを再び考える

建設的ビジョン提示という行政の社会的責任(1)

2008年7月23日(水)

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 文化に関するCSR(企業の社会的責任)の話題の中で、以前触れた大阪府のケースは、あくまで例として挙げたものでした。ところが予想より遥かに多くの読者から反応を頂きました。私自身、大阪の財政問題に通じているわけではありません。ただ音楽あるいは学術や文化サイドで仕事する一新聞読者として、これはいかがなものか? と思うことを率直に記しました。

 7月14日の午後2時頃、橋下知事が公用車で府庁から大阪市北区のフィットネスクラブに出かけたことが報道されました。ちょうど人件費や私学助成の削減を盛り込んだ2008年度予算案の審議が府議会委員会で始まったばかりで、府幹部からは「公私混同」「緊張感が欠如している」という批判を受けています。知事自身は「委員会の議論の内容は報告を受けている」「空いている時間なので休みを取らせていただいた。公用車は自分の判断で使った。批判が出たら改めるし、あとは府民の判断に任せる」と語っているようです。

「とっさの判断」の認知的背景

 こういうケース一つを取って、過大に知事の揚げ足を取るようなことは建設的ではないと思います。

 ただ<日中にポカンとアポのない空いた時間ができた>から<フィットネスに出かけてくる>というのは、長年自由業である弁護士の生活や、近年はテレビタレントとしての仕事を通じて、橋下さん自身に染み付いた判断と行動と思われます。その時「公用車を使う」ことに反射的に問題を感じなかったという、「とっさの判断」を、「失敗学」的な見地から慎重に検討することは有益だと思います。

 「とっさの判断」とは特段意識することなく「問題なし」と思って進めてしまう部分です。私は音楽演奏の脳機能測定研究で、この「とっさの判断」を調べているので、こうした部分に注目することが多いのです。

 民主的な選挙で選ばれて、地方自治体の首長になったばかりの橋下知事です。政治家、あるいは公務員になって日が浅ければ、今まで長い年月の間に身体や意識に染み付いた癖を直すのに時間がかかる。これは生理的な事実で、当然のことでしょう。17日には光文社「フラッシュ」の取材を精神的苦痛として訴えた訴訟を大阪地裁に棄却されています。昨年6月の「無断取材」に対する訴訟だったそうですが、公人となった今、こういう訴訟で敗訴するという現象自体、民事弁護士としての自覚の残滓を物語っているようにも見えます。単にタレントであればこういう訴訟も可能でしょうが、テレビという両刃の剣で知名度を上げて選挙に勝った後、こういう判決が出るのは、知事本人も微妙に居心地が悪いかもしれません。

 ベースとして民事の弁護士だった人が、選ばれて今地方自治体の財政再建で責任者を務め始めた。そこで必ずしも理解していない問題に関して、弁護士ないし一個人としての「素」あるいは「地金」で対応してしまうのは自然なことでしょう。私が指摘したいのは、そうした「死角」が生み出す危険性にほかなりません。

 これは人であれば誰もが陥りやすい生理的な隘路であって、橋下さん個人の問題を取り上げているわけではないことを、重ねて強調しておきたいと思います。

 ここでのポイントを端的に言うなら「財政再建」というのは政策のビジョンとして必要かつ十分なものではない、という事実です。破綻した財政を再建することは、健全な府政を実現するうえで「必要的」ではあります。しかし「財政が健全」というだけでは、行政府の負うべき社会的責任を十全に果たしているとは、とうてい言うことができない。

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