「鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」」

チームと都市のパワーゲーム(中)

球団に去られた都市は、妻に逃げられた男なのか?

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2008年7月24日(木)

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 前回のコラムでは、米国プロスポーツ界では球団移転が球団経営の効率性を高めるための手段になっている実態をご紹介しました。ロサンゼルス・ドジャースやワシントン・ナショナルズ、シアトル・マリナーズなどの例を用いながら解説したように、多くの球団が自治体から最新スタジアムの提供を受けたうえ、年間数千万ドル(約数十億円)もの収益が懐に転がり込む有利なリース契約を結んでいます。

 では、球団移転プロセスで、球団はなぜ都市に対して大きな交渉力を発揮することができるのでしょうか。当然、球団移転の過程における交渉力は、球団を誘致したい都市(需要側)と球団数(供給側)の「需給バランス」によって決まることになります。結論から先に言ってしまうと、米国プロスポーツは、2つの「独占」を巧妙に仕組むことによって、球団移転プロセスにおいて必ず供給側の球団が有利に交渉を進めることができるポジションを手にしているのです。

都市の誘致競争を煽る

 1つ目の独占は、球団を誘致できる経済力を有する都市の数が、球団数よりも多くなる状況を作り出すことで生まれます。球団数をコントロールすることで、常に「需要過多」の状況を作り出すわけです。そうすれば、ある球団が「移転したい」と言った場合、多くの都市が「うちに来てほしい」と競争することになるわけです。球団は、勝手に都市で競争させておけば、有利な契約が転がり込んでくるのです。

 米国メジャースポーツでは、新球団が加入することは簡単ではありません。既存チームのオーナーからの賛成が必要です。そうして、リーグに所属するチーム数を厳密にコントロールしているのです。特に優れているのは、エクスパンション(新規球団の参入)に際し、大都市ばかりでなく、中規模の都市にも招致できる機会を提供している点です。

カウフマン・スタジアム

カウフマン・スタジアム
(写真提供:鈴木友也氏、以下同)

 例えば、小規模都市の代表的なチーム、米メジャーリーグ(MLB)のカンザスシティー・ロイヤルズがエクスパンションによって誕生した1969年当時、この都市の人口はわずか130万人でした。カンザスシティーより人口を持ちながら、MLBがフランチャイズを置いていない都市は全米に9つもあったのです。つまり、新規参入のハードルを下げることで、候補都市の数を増やしているのです。これにより、需要過多の状況が維持されるわけです。

球団の脅しに屈する巨大都市

 2つ目の独占は、「すでにチームがある都市には、新球団を作らない」という原則によって、地域1球団を保っていることです。例えば、MLBでは各チームに半径15マイル(約24キロメートル)のテリトリー権(Territorial Right)が認められています。この圏内は、球団の独占マーケットになっているのです。もしも新球団が、既存球団のテリトリー内に本拠地を設置する場合は、全オーナーの4分の3以上の同意が必要となります。つまり、既存球団のオーナーの地理的利権がルールによってしっかりと守られているわけです。

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著者プロフィール

鈴木 友也 (すずき・ともや)

鈴木 友也 ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。1973年東京都生まれ。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)を経て、マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツ経営大学院に留学(スポーツ経営学修士)。世界中に眠る現場の“知(インサイト)”を発掘し、日本のスポーツビジネス発展のために“提供(トランス)”する――。そんな理念で会社を設立し、日本のスポーツ組織、民間企業、メディア、自治体などに対してコンサルティング活動を展開している。ほかにも講演、執筆でも活躍中。著書に『スポーツ経営学ガイドBOOK』(ベースボール・マガジン社、2003年)、訳書に『60億を投資できるMLBのからくり』(同、2006年)がある。中央大学商学部非常勤講師(スポーツマネジメント)。ブログ『スポーツビジネス from NY』も好評連載中。Twitterのアカウントはtomoyasuzuki

(写真 丸本 孝彦)



このコラムについて

鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」

「スポーツビジネス先進国」と言われる米国。その市場規模や人気などで日本を凌駕する。そこでは、日本にいては思いつきもしない先進経営が繰り広げられている。だが、進みすぎたが故の問題も内包する。米在住のスポーツマーケティングコンサルタントが、米国スポーツビジネスの現場を歩き、最新トレンドを解説していく。
果たして、米国は日本スポーツ界の「模範解答」となるのだろうか?

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