東大生の電気電子離れが止まらない。企業が求める学生と、実際の学生との乖離も生まれ、どう対処していけばよいのか。日経ビジネス誌8月18日号特集「さらば工学部 6・3・3・4年制を突き破れ」の連動インタビューシリーズの第2回では、学生の工学部離れに直面しながらも工学部改革を進める東京大学の保立和夫工学部長に、危機意識と課題解決のためになすべきことを聞いた。
保立和夫(ほたて・かずお)氏
東京大学工学部長
1951年6月東京都生まれ、57歳。79年、東大大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了、工学博士。東大先端科学技術研究センター教授、同大学院工学系研究科電子工学専攻教授、同新領域創成科学研究科基盤情報学専攻教授を歴任し、2001年から同工学系研究科電子工学(現電気系工学)専攻教授。2004年から総長補佐を務めた後、2008年から工学系研究科研究科長・工学部長を務める。 IEEE(米国電気電子技術者協会)フェロー称号、電子情報通信学会フェロー称号など表彰多数
写真:川口愛
理科離れが大きな問題となっています。18歳人口の減少よりも大きな割合で、工学部の学生が減っているのです。これは工学の危機だと思います。
片や、東京大学工学部の定員は945人で、年ごとの増減はあるものの、ほぼ定員を満たしてきました。東大で工学離れが起きているか、それは単純には言えません。ただし、細かく見ていくと、東大にも問題があることは分かります。
電気学科で学生が集まらない
東大工学部は学部学生2053人、研究生32人から構成され、土木、機械、電気、化学などの17学科から構成されています。東大の入学生は文理合わせて約3200人に上り、主に工学部に進学する理科I類は約1200人の最大勢力を占めています。
全国の国立大が1990年代に教養学部を廃止する中で、東大だけは教養学部を維持し続けました。東大生は1〜2年の教養課程を経て、2年の夏に10学部約50学科の中から3年次に進学する専門学科を決めます。これは進学振り分け=通称「進振り」と呼ばれ、7月に第1次の志望集計、8月下旬に第2次の志望集計があって、9月に7割が決まります。残り3割を10月までに同じようにして決めます。
学生にとっては、「ここに行きたい」「あっちに行きたい」という希望があり、学生の人気、不人気が出てきます。私が教授を務める電気系工学科の人気がこのところ低迷しています。電気電子が5年連続で「底割れ」しているのです。
トヨタ自動車、三菱重工業も電気の学生を欲しがるが…
東大工学部は再編の歴史を経てきました。学科再編のトリガーになってきたのが、学科の人気不人気でした。
例えば、材料金属工学科(旧冶金)は改組しました。99年、材料金属工学科には定員61人に対して11人しか来ませんでした。冶金学科はマテリアル工学科に替わって、IT(情報技術)やバイオの材料も手がけるようになりました。そうして人気を回復させたのです。
船舶海洋工学科、システム量子工学科(旧原子力)、地球システム工学科(旧資源開発)も、長らく学生の人気が落ちていました。産業が成熟したということです。これらの学科は2000年度に技術を経済にどう生かすかを学んでいくシステム創成学科として再出発しました。今や、1学年で130人を集める人気学科となり、工学部の最大勢力となっています。
学生は専門分野の将来性を見ながら、学科を選びます。進振りの結果に連動して、学科は変わらざるを得ません。社会の要請に学科の形も合わせていくのです。
問題なのは、社会的に重要な分野、需要の多い分野であっても、学生を取り込むことが難しくなりかねないということです。
電気系の工学部を卒業した学生は需要が高い。日立製作所や東芝といった電気関連産業だけではなく、トヨタ自動車、ホンダ、富士重工業などの自動車産業からも、三菱重工業という重工業産業からも、「電気の学生をもっと出してくれ」と要請されています。
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