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裁判員制度が刑事司法を崩壊させる

もう誰も止められないのか

  • 郷原 信郎

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2008年8月20日(水)

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 それが何のためのものなのか、何を目指しているのか、ということを考えることなく、「法令として成立している以上遵守するのが当たり前だ」と言って法令の遵守を押しつける「法令遵守」という姿勢が多くの弊害をもたらしていることを、このコラムでは様々な観点から述べてきた。

 そのような「法令遵守」的な考え方のために、裁判員制度という日本の刑事裁判の根幹を揺るがしかねない制度が導入されようとしている。

組織内の人間は「この制度はダメだ」とは言えない

 法令の背後には必ず何らかの社会的要請があり、その要請を実現するために法令が定められているはずだ。しかし、裁判員制度の導入を定めた「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」だけは、それが、いかなる社会的要請のためのものであるのかがよく分からない。

 しかも、施行まで1年を切った今、この制度の運用に当たることになる裁判所、検察の実務家の中で、本当にこの制度がうまくいくと思っている人間はほとんどいないのではないか。内心は、「誰か止めてくれ」と思っているはずだが、「法令遵守」がそこに立ちはだかる。

 既に法律が成立し、裁判所、検察が組織を挙げて制度の導入に向かって取り組んでいる時に、組織内の人間は、正面切って「この制度はダメだ。導入すべきではない」などということは言えない。「こうなったら、とりあえず裁判員裁判を始めてみて、ダメならやめればよい」と考えている人間が大部分であろう。

 太平洋戦争の開戦の際も、同じような経過だったのではないか。客観的な状況を認識できる立場にあれば、超大国米国と戦争をして日本が勝てると考えている人間はほとんどいなかったであろう。しかし、開戦前の日本で、それを口にするのははばかられた。そして、日本は米国との戦争に突入。その後、戦局が悪化しても、大本営発表はそのことを国民に全く知らせようとはせず、泥沼の敗戦に突き進んでいった。

日本の刑事司法の根幹を蝕むことにもなりかねない

 裁判員制度も、一度、導入されたら、同じことになりかねない。冤罪や真犯人が罪を免れる「誤判」は、客観的に明らかになることは稀だ。そういう事例が相次いだとしても、それが国民の前に明かになることはほとんどない。

 また、実務の運用が混乱していても、導入してしまった以上、内部から「制度自体に問題がある」とはなかなか言えるものではない。そういう状況の中で歪んだ裁判員制度の歴史が積み重ねられ、それが、日本の刑事司法の根幹を蝕み、刑罰権という国家の基本的機能を失わせていくことになりかねない。

 そもそも裁判員制度は何のためのものなのか、何を目指すものなのか、目的を実現するための制度の基本設計に問題はないのか、諸外国との比較で国民の司法参加は当然のように言われるが、果たして導入されようとしている裁判員制度が国際的な比較の観点から妥当な制度と言えるのか、そして、このような制度が刑事裁判の実務にどのような影響を与えるかなどの点から考えてみたい。

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