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「『教育の金沢工大』は“褒め殺し”。教育改革に一切気は抜けない」~さらば工学部(3)

金沢工業大学・泉屋利郎理事長に聞く

  • 星 良孝

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2008年8月20日(水)

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 1995年度から先進的に工学教育改革を進め、国内の工科系大学の模範とされてきた金沢工業大学。そんな大学でさえも、志願者激減に直面している。1996年度の志願者は合わせて1万1374人だったが、2008年度は6523人にまで減少した。

 日経ビジネス誌8月18日号特集「さらば工学部 6・3・3・4年制を突き破れ」の連動インタビューシリーズの第3回では、学生激減という危機を解決するための経営の方法について金沢工大の泉屋利郎理事長に聞いた。

泉屋利郎(いずみや・としお)氏

泉屋利郎(いずみや・としお)氏
金沢工業大学理事長
1944年3月石川県生まれ、64歳。69年に金沢工業大電気工学科卒業後、74年、金沢工業大財務部長、77年同本部長、78年、常務理事、92年に理事長に就任。学園創設者である泉屋利吉氏の長男

 学校経営の根幹は、単純化すると、「『学生数』×『学費』=『教員数』×『人件費』+『経費』」という等号をいかに成立させるかにあります。等号が成り立たなければ、経営のどこかに無理がかかってきます。

 今後、18歳人口は減少していきます。学生のレベルを下げずに、いかに定員数の学生を入学させるか――。今はどの大学も学生募集に苦労しており、私たちも例外ではありません。

「7万人争奪戦」に巻き込まれた私大は経営難に

 18歳人口は大雑把に言うと、40年前が240万人、現在は120万人です。そして2050年には60万人になると予想しています。およそ40年ごとに半減しているわけです。2050年の大学進学率が現在と同等の60%と考えれば、計算すると、入学者は36万人へと大きく減少します。その時に大学はどうなっているか…。

 国公立大学は大学数を減らさず、定員も変わらない可能性が高いでしょう。定員数は約19万人。そして、慶応義塾大、早稲田大を中心に、大学のブランド化、あるいは系列化が進んでいます。こうしたブランド大が保有する定員は約10万人と見ています。そうすると、残り中堅大学は、約7万人の取り合いになってくるわけです。私の見立てでは、この「7万人争奪戦」の中に入ってしまったら、その大学はつぶれる可能性が高い。進学率が落ちてくるとさらに厳しい。

 私たちはこの7万人の争奪戦には入らないように、独自性を高めなければいけません。

 もっとも、国公立大学も今以上に強烈な競争にさらされることになることは間違いありません。

経営への危機感を教員らとも共有している

今年7月にオープンキャンパスを開催。教育で高く評価されてきた金沢工業大学も志願者減少への危機感は強い 写真:吉尾大輔)

今年7月にオープンキャンパスを開催。教育で高く評価されてきた金沢工業大学も志願者減少への危機感は強い(写真:吉尾大輔)

 国公立学校と比較すると、私立学校は研究よりも教育の比重が高い。私たちは研究も評価されるようになってきましたが、基本的に教育がメインの学校です。

 私たちは踏ん張ってきましたが、志願者数の減少にさらされています。まだ志願者は6000人以上も集まってくれていますが、だんだんと倍率は下がってきています。定員に対する志願者の倍率が3倍を切ってくると、問題が出てきます。私立大学は“滑り止め”として受験されますから、国公立大学に合格した学生はそちらを優先します。つまり、私立大学は「歩留まり」を意識しながら定員よりも多めに合格を出さねばならない。実際、私たちのところの倍率も3倍を切ってきています。

 最近、私は先生方に、「学費が上がる授業をしてください」と言っています。学生数が減ったとしても盤石の経営を続けなければなりません。

 1995年度から、現在の石川憲一学長が中心となって、教育改革を進めてきました。教職員がこのままではつぶれると共鳴してくれました。先生らは経営のことを心から心配してくれています。教授会が「私たちは頑張りますから」と、もっと学生を入学させてほしいと言うのです。教授らと酒席を囲むと、「経営は大丈夫ですか」と真剣に言われます。

石川憲一学長は改革の手を緩めない

 常務理事(泉屋吉郎氏)が学校関係者の前で講演をした時、聴衆に向かって、「この中で、学校がつぶれると思う人、手を上げてください」と言ったそうです。最初は手が上がりません。常務理事は「私は毎晩、明日つぶれるのではないかと心配で眠れない」と言います。そうすると、聴衆の目が変わってきます。私たちの危機感は非常に強い。

 現場の意識改革が順調に進んだのは、産業界から多くの教授を採用しているからだと思います。教授らが常識を備えているのです。

 私たちは、「教育・研究」と「経営」の分離をしてきました。学長は選挙制ではなく、任命制としています。前の学長が次の学長を推薦してきました。推薦された学長は、「学校教育で何をするか、どういうふうに行っていくか」を理事会に提案します。そうして、学長を任命しますから、理事会は学長を応援する義務を負うことになります。教育・研究と経営が協力し合ってきたことが、原動力になってきたと考えています。

 来年4月から第4次教育改革が始まります。石川憲一学長の方針を理事会が承認して、学長が粛々と進めていくことになります。

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