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チームと都市のパワーゲーム(下)

移転と地域密着を両立させる戦略的取り組み

2008年8月21日(木)

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 これまで2回にわたって、米国プロスポーツ界が球団移転によって経営の効率性を高めている実態を見てきました。スポーツリーグが球団を少なく絞り込むことで巧妙に「独占状態」を作り、供給側の球団が有利に交渉を進めています。米国の球団は、移転(とその意思表示)を繰り返すことで、経営効率を高めてきたのです。

 しかし、一方では「地域密着」を金科玉条とするスポーツ経営において、球団が頻繁に移転することは、長期的な繁栄につながらないのではないか、という疑問が出てきます。

本当に地域密着は必要か?

 そもそも、スポーツ球団はなぜ、地域密着を標榜するのでしょうか?

 米国プロスポーツにおいて、最も古い地域(コミュニティー)活動の1つとされているのが、米アメリカンフットボールリーグ(NFL)が実施している「パント・パス&キック」(Punt Pass & Kick)という8歳から15歳までの青少年を対象とした草の根活動です。1961年から開始され、今では半世紀近い歴史があるこのプログラムは、「パント」「パス」「キック」というフットボールにおける3つの基本的な動作の飛距離と正確性により総得点を競うものです。今では全米約6000の学校や、3000を超える公園やレクリエーションセンターで実施されています。

 全米で予選が8~9月に実施され、各地区を勝ち進んだ参加者たちは、10月に地区決勝戦を行い、全国大会が11~12月に行われます。全国大会は、実際のNFLのスタジアムで、NFL公式戦の前座として開催されます。11~12月はNFLもレギュラーシーズンが大詰めを迎える季節で(NFLのレギュラーシーズンは9~12月)、大いに盛り上がりを見せる時でもあります。

 NFLはこのイベントを通じて、子供たちに運動する機会を与えると同時に、プログラムを通じて競争やフェアプレーの精神を学ぶ機会を提供してきました。「どの子供にも平等な機会を与える」という趣旨により、参加は無料となっています。そして、実はNFLがこのプログラムを開始した1961年という年は、NFLにとって、いや米国のプロスポーツ界にとって大きな節目の年だったのです。

危機だった中央集権モデル

 33歳の若さでピート・ロゼール氏がNFLのコミッショナーに就任したのが1960年のことでした。以前に「格差の徹底排除で成長するNFL」でも解説したように、今やNFLの「強力な収益分配制度を基礎にしたリーグ全体の共存共栄」という経営哲学は米国プロスポーツリーグ経営の教科書となっています。そして、NFLは「米国で最も成功したプロスポーツ」と評されます。しかし、当時はまだ収益分配制度が整っておらず、リーグ機構の持つ力は弱かったのです。いくつものビジネスで成功を遂げ、財を成した海千山千の大富豪オーナーが、33歳の若造コミッショナーの言葉に耳を傾けるはずもなく、リーグ機構は“お飾り”に過ぎなかったのです。

 ところが、そのロゼ-ル氏は、後に「伝説のコミッショナー」と呼ばれるようになります。それは、NFLのDNAとも言える「リーグ全体の共存共栄」という思想を浸透させたことにあります。彼が最初に目をつけたのは、当時は各チームが個別に交渉していたテレビ放映権でした。ロゼール氏は、リーグ機構が全チームの総代理人としてテレビ局と交渉することができれば、交渉力は強くなり、テレビ放映権が高く売れると踏んだのです。

 目論見は当たり、チームが手にする分配金は3倍に増えました。そして、ロゼール氏はチームオーナーから大きな信頼を勝ち得たのです。彼はリーグ全体の繁栄がチームの利益拡大にもつながると信じ、収益源のリーグ一括管理を、テレビ放映権だけでなく、ほかの収益源にも拡大していきました。そして、現在の収益分配制度の基礎を築いたのです。

 しかし、実はこの「中央集権モデル」は、当初、大きな壁に突き当たりました。

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「チームと都市のパワーゲーム(下)」の著者

鈴木 友也

鈴木 友也(すずき・ともや)

トランスインサイト代表

ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)出身。スポーツ経営学修士。中央大学非常勤講師

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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