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浅田彰氏への手紙

シュトックハウゼンと「音楽思考」を巡って

2008年8月22日(金)

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 前回記しました、海軍技術将校の記録に関する呼びかけに対して、多くの方からご返信を頂きました。心から感謝申し上げます。編集部を通じてお一方ずつ返信をお送り申し上げます。この問題には責任を持って引き続き取り組んでゆくつもりです。よろしくお願いいたします。今回は、戦時とも少し関わりがあります、私の専門に関係する話題を、少しイレギュラーな形で書きたいと思います。

 昨年の12月18日、本連載第21回「法律では防げないネットいじめ」で、私はお世話になっていた作曲家シュトックハウゼンの訃報に関するコラムを記しました。

 またその中でとりわけ、浅田彰さんが読売新聞紙上に書かれた追悼記事に関して、いくつかの疑義を呈しました。浅田さんが公の新聞紙上に書かれた内容への疑問を、やはり開かれたメディアである日経ビジネス オンライン(NB)上に記したわけです。

 この記事に対して、浅田さんからお返事をウエブ・マガジンRealtokyo上(6月26日付)で頂戴していました。今回はその返信を、公開書簡という形で記したいと思います。

 やり取りの骨子は、浅田さんが読売上に記された追悼記事が前提としているシュトックハウゼン像、とくに9.11同時多発テロ時の彼の発言などを巡って、巷間に流布している情報と、現実のシュトックハウゼンの活動との間にかなりの開きがあることを私が指摘し、それへの返信を上記のコラムで頂いた、というものです。

非建設的な論難でなく…

 最初に誤解のないように記しますが、これは論戦などを意識したものではありません。元来浅田さんが読売新聞紙上に書かれたのも芸術哲学の観点からの建設的な「批評」で誹謗や中傷ではありませんし、NBに前回記した私の記事も同様に考えています。

 以下、浅田さん、ならびにやはり20年来存じ上げているRealtokyoの小崎編集長への同報の公開書簡という形で返信を書きたく思います。多くの方にご理解いただけるよう、やや長めに説明を記しました。多くの読者の方にはなじみの薄い話題かもしれませんが、私信に対する私信の返事などではなく、(最末尾に記しましたように)この連載の本質に関わる問題でもあることから、あえて値引きせず、長文でリリースしたものです。この段、あらかじめお含み置き頂ければ幸いです。

浅田彰様 cc REAL TOKYO 小崎哲哉様

  研究室の福田君からメールで、浅田さんからの公開書簡がRealtokyoに出ていると知らされた7月18日、僕は奇しくもドイツ、キュルテンでシュトックハウゼン・ゼミナールに参加している最中でした。ちょうどフライブルクの実験的聴覚芸術スタジオ(Experimental Studio for Acoustic Art) のヨアヒム・ハースとグレゴリオ・カルマンによるシュトックハウゼンの最晩年の電子音楽作品コスミック・パルスCosmic Pulses の詳細なレクチャーが開かれていました。

 浅田さんには長年、個人的にとても感謝しています。本をただせば僕が物理を専攻したのも浅田さんの存在が関わっています。1982~83年、父親と同じく経済学部に籍を置きながら音楽の仕事を始めようと思っていた高校生の僕は、岩井克人さんが「天才登場」と紹介された浅田さんのお仕事を知って、こんな優秀な人がすぐ上にいたらとても歯が立たない、と大学での専攻を物理に転向したような経緯がありました。

 今から21年前、学生時代のアルバイトで作曲家の武満徹の雑誌「ミュージック・トゥデイ・クオータリー」の創刊に参加した時、第1号で浅田さんにご登壇いただきました。これがお目にかかった最初だったと思います。その頃Realtokyoの小崎さんは新潮社で雑誌「03」を作っておられ、同じ編集プロダクション、アルク出版企画でよくお目にかかりました。また今は作家になられた車谷長吉さんなども、西武セゾングループ関係の仕事で同じ部屋でお見かけしました。

 考えてみると、前回浅田さんにお目にかかったのは多分11年前、作曲家のクセナキスが「京都賞」を受賞した際に、ピアニスト・作曲家の高橋悠治さんと相談してNHKに番組の企画を持ち込んで、それに出演していただいた折ではなかったでしょうか? その後大学に職を得て10年。公開していたアドレスはイタズラなどが多かったため現在のものに変更して、そのまま失礼してしまったため、ご返信を拝受できませんでした。この段深くお詫び申し上げます。

シュトックハウゼンという人の実際

 昨年の12月に読売新聞上で浅田さんの書かれた追悼記事を拝見して、どうしても公のメディア上で疑義を記さねば、と思った動機の1つは、浅田さんのご観点が、僕自身も長年持っていたシュトックハウゼンへの誤った考え方と重なっているように思ったからです。(浅田氏の論点については前記リンクをご参照ください)。

 僕がカールハインツ・シュトックハウゼン本人と本当に知り合ったのが昨年の7月5日で、まだ1年ちょっとしか経っていません。それ以前は、似たような印象を持っていたと思うのです。

 毎年参加しているスイス、ルツェルンのブーレーズ・アカデミーから勧められて、初めてシュトックハウゼンのセミナーに出ることにしました。そして初日の質疑応答で意気投合して以来、彼の方からいろいろ相談をされるようになりました。

コメント3件コメント/レビュー

現代音楽も興味深い音楽だと思います。特に8つのスピーカーを使って音が「回転」してゆくという音の表現は、非常に面白いと思います。少し違うかもしれませんが想像で、私はガムランの回転してゆくような音の表現に似ているのかもしれないと思いました。めまいのようなものを体感できるのでしょうか。一度、生で聴いてみたいものです。そして現代音楽の楽譜が絶版になってしまうのは、非常にもったいないことで何とか避けてもらいたいと思います。楽譜のストックの中にルチアノ・べりオ氏の作品も見つけましたが、なくなってしまうのは本当に惜しいです。次回コラムも期待しております。(2008/08/22)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

現代音楽も興味深い音楽だと思います。特に8つのスピーカーを使って音が「回転」してゆくという音の表現は、非常に面白いと思います。少し違うかもしれませんが想像で、私はガムランの回転してゆくような音の表現に似ているのかもしれないと思いました。めまいのようなものを体感できるのでしょうか。一度、生で聴いてみたいものです。そして現代音楽の楽譜が絶版になってしまうのは、非常にもったいないことで何とか避けてもらいたいと思います。楽譜のストックの中にルチアノ・べりオ氏の作品も見つけましたが、なくなってしまうのは本当に惜しいです。次回コラムも期待しております。(2008/08/22)

現代音楽の作曲家が忘れられる可能性について: とても高いと思います。しかし、バッハやヴィヴァルディも一時期忘れられていたのですから、後世に再発見されることもあるのではないでしょうか。それはそれで良いように思います。だからと言って、残す努力が無駄と考えているわけではなく、必要であると考えます。8個のスピーカを用意しないと理解できない、という音楽について: これは、「生演奏でなければ、音楽の本質は理解できない」「複製や写真では、絵の本質は理解できない」と同じような議論になりますでしょうか。あるいは、例え録音でも、8個のスピーカさえあれば、誰でも理解できる(可能性がある)ということでしょうか。しかし、耳は2個しかありません。作曲家の意図を再現することが、音楽の理解と直接関係があるのでしょうか? そもそも、音楽の本質とは、作曲家、演奏家、聴衆で共通に理解できるものなのでしょうか?(2008/08/22)

 讀賣新聞は購読していませんが、浅田氏のブログで件の文章も読みました。  伊東氏の立場からすれば、「献身的な弟子」に対する反応も宜なるものかなと思いますが、些か被害妄想的で、伊東氏の最初の批判に対する浅田氏の回答への返答としては、少しく論点がずれているように思います。 八方から音が聞こえてくる曲は、昔、ブーレーズ来日時に聴きましたが、私にとっては、正に「馬の耳に念仏」。 8チャンネル環境など望むべくもない者ですが、数年前ポリーニが演奏した、現代音楽嫌いでもその美しさを否定できないような曲さえ、そのポリーニの名声をもってしてもCD化されていない現状については、何をかいわんやです。(シュトックハウゼンが許可しなかったなどということはないと思います。)(2008/08/22)

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三品 和広 神戸大学教授