「日経ビジネス リポート」

「文系理系の生涯賃金格差は5000万円」
〜さらば工学部(6)

大阪大学大学院国際公共政策研究科・松繁寿和教授に聞く

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2008年8月25日(月)

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 理系よりも文系の方が5000万円高い−−。これは広く認知されるようになった理系出身者と文系出身者との間の生涯賃金の格差である。

 日経ビジネス誌8月18日号特集「さらば工学部6・3・3・4年制を突き破れ」の連動インタビューシリーズの第6回では、賃金格差を試算するための原データをまとめた大阪大学大学院国際公共政策研究科・松繁寿和教授に、経済学の立場から工学離れの問題について聞いた。

松繁寿和(まつしげ・ひさかず)氏

松繁寿和(まつしげ・ひさかず)氏
大阪大学大学院国際公共政策研究科教授
1957年1月香川県生まれ、51歳。1989年に、阪大大学院経済学研究科公共経済専攻博士課程単位取得退学。南山大学経済学部を経て、1994年に阪大経済学部助教授、同年、阪大大学院国際公共政策研究科助教授、2003年、同教授。関西生産性本部評議委員、大阪府総合計画審議会委員を務める

 理系学科の卒業生と、文系学科の卒業生との間の生涯賃金の格差はおよそ5000万円――。これは私が1998年に行った調査のデータに基づいて、毎日新聞の記者の方が試算したものでした。ある国立大学の卒業生を対象として、名簿に基づくアンケートを行ったのです。回答者は理系約2200人、文系約1200人となり、かなり大規模な調査でした。

 日亜化学工業の元研究者で、青色LED(発光ダイオード)開発の対価に報酬を受け取った中村修二氏に代表されるように、優秀な技術者に高額の報酬を支払う動きは出ています。しかし、最近、公開情報などを基に調べてみたところ、98年の調査から10年が経っても、金融に身を置く人と製造業にある人との間の賃金格差は大きくは改善していませんでした。

 バブル崩壊の後に、銀行が不良債権の処理に追われ、金融会社の業績が低迷する時期が続いていました。金融不況といっても、金融業界の人々は自らの身を削っていたかというと、そうでもないのかもしれません。やはり理系出身者の方が、文系出身者よりも賃金が低くなる傾向はあるようです。

 「日本は文化国家なのだから、理系、理系と言わなくてもいい」という意見も耳にします。そうはいっても、私は理系が処遇されづらい現状に対して問題意識を持っています。

賃金格差はボディーブローとして効く

 理系と文系の間に格差が出てくる理由は主に2つあります。

 1つは、就職先の違いです。文系出身者は金融業や商社に就職するケースが多いのに対して、理系出身者は製造業に就職する場合が多い。産業間の賃金格差が、そのまま文系、理系の間の賃金格差として出てくるのです。

 もう1つは、昇進スピードに差があることです。理系出身者の方が課長になるのが遅い傾向があります。技術者などは上級職のポストが限られていることが関係しています。

 理系出身者の処遇が低くなる状態を放置していいかといえば、やはり、そうではないと考えています。

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