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「京大工学生はゆとり世代から学力低下」
~さらば工学部(7)

京都大学・大嶌幸一郎工学部長に聞く

  • 星 良孝

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2008年8月26日(火)

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 福井謙一氏、野依良治氏という2人のノーベル化学賞受賞者を輩出した西の名門、京都大学工学部。東大と共に日本の工学教育の双璧をなすこの工学部でさえも、教授らは教育と研究のバランスをどう取るかという難問に頭を抱える。

 日経ビジネス誌8月18日号特集「さらば工学部 6・3・3・4年制を突き破れ」の連動インタビューシリーズの第7回では、京都大学の大嶌幸一郎工学部長に、エリート教育の危機と解決の道を聞いた。

 ここ数年で、京都大学の工学部学生の学力が極端に落ちてきています。これまでは思いもしなかったことが進行しているようです。

試験不合格の割合が1年で4倍に

大嶌幸一郎(おおしま・こういちろう)氏

大嶌幸一郎(おおしま・こういちろう)氏
京都大学工学研究科長・工学部長
1947年3月兵庫県生まれ、61歳。70年、京大工学部工業化学科卒業。75年に、京大博士課程学修退学後、米マサチューセッツ工科大学博士研究員。77年から京大工学部助手、84年、同講師、86年、同助教授を経て、93年、同教授となる。2008年4月から工学研究科長・工学部長兼副学長を務める。工学博士。専攻は材料化学

 工業化学科の1学年は235人。従来、私の授業では1割程度が単位を落としていました。ところが、現在の3年生から急に4割ほどの学生が単位を落とすようになりました。

 有機化学の授業で工学生にとって特別に難しいことを教えているわけではありません。2つの薬品を混ぜ合わせたらどうなるかといったことです。同じように授業をし、同じように試験をしていたのに、明らかに従来と違っている。

 思い当たる理由は「ゆとり教育」です。2006年度に入学した学生は、ゆとり教育が本格導入された第1世代なのです。噂には聞いていたけれども、授業で学生を見ていても分からなかった。出席率は従来と変わっていなかった。学生が授業内容を十分に理解できていなかったということなのです。試験で半分弱も落ちるのは明らかにおかしい。

 学生の課題に対する応用がほとんど利かなくなっているのです。考える能力が落ちていることを懸念します。それが、今では、学校の先生が手取り足取り教える。例題をいっぱいこなして、暗記していく。自分なりの勉強の仕方が確立できない。

 1970年頃は、医学部に入学する学生の入試の最高点よりも、工学部の学生の最高点の方が高いこともあった。その頃から比べると学生の数は半分になりました。かつて京大に入れなかったレベルの学生が入れるようになったのかもしれません。

 長期的に見ると、京大工学生の学力は低下傾向ではあったのですが、ここに来て急に下がってきている印象があります。

 どの先生も実感されているのではないかと思います。もしかすると、研究室に学生を迎えて、初めて気がつく方もいるかもしれない。全国で進んでいるのではないでしょうか。学力低下の勢いたるや大きいはずです。

 本来、勉強にゆとりは必要ないのです。「鉄は熱いうちに打て」。スポンジのように知識をどんどん吸収する時期があるのです。後からでは間に合わない。日本の教育の間違いはかなり長い期間、尾を引くと思いますよ。

教育が手につかない大学の台所事情

 教員が忙しすぎるという別の問題も深刻です。このままでは、京大の教育と研究のレベルが落ちかねないと危機感を持っています。

 先生が燃えるように面白い研究をしているか。学生から惚れ込んでもらえるような先生がいるのか。今は、先生方が忙しすぎて、学生に背中を見せようにも、見せられなくなっています。

 「先生方に学生とのコミュニケーション不足を自覚していただいて、大学の研究所に顔を出してほしい」。今年4月に工学研究科長・工学部長に就いてすぐに学内の「工学広報」にこう書きました。

コメント16件コメント/レビュー

深化・集中することに契機が必要だとすると、教授の魅力のある影響は有力な選択肢であると思います。また、日経の「私の履歴書」にもよくマジックワードとして、「教授の指導・・・」という言葉がでてきます。なお、この言葉の意味を、方向性と深化の契機として、現におかれた環境にあった者が理解するものという意味に限定するものですが。(2008/11/02)

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深化・集中することに契機が必要だとすると、教授の魅力のある影響は有力な選択肢であると思います。また、日経の「私の履歴書」にもよくマジックワードとして、「教授の指導・・・」という言葉がでてきます。なお、この言葉の意味を、方向性と深化の契機として、現におかれた環境にあった者が理解するものという意味に限定するものですが。(2008/11/02)

旧帝大理学部卒で、現在地方大学医学部の教員です。私の入学時(70年代後半)も生物系ですら定員の1~2割は医学部の合格最低点を超えた学生がいました。物理、数学系はもっと多くの学生が医学部の最低点を超えていたはずです。現在の入試ではあり得ないことではないかと思います。かつて高い学力(と意欲)をもって理科系の学部に進学していた学生は、今は相当の部分が医学部志望なのではないでしょうか?医者ももちろん尊敬すべき職業であることには異論はありません。ただ、多くの(すべてとは言いません)学生が、自分が受験の勝者であることを確認するために、もしくは個人的な安定を求めて医者になろうとしている状況は、医学部にいながらこんなことを言うのは筋違いかも知れませんが、日本にとって良いこととは全く思えません。来年度から医学部の定員が増えます。その影響が他の理科系学部(特にトップクラスの大学の)に及ぶ可能性は高く、将来ボディーブローのように効いてくるのではないかと憂慮しています。(2008/09/01)

学力を低下をゆとり教育とダブらせているようですが、入試の影響があるのではないでしょうか「例題をいっぱいこなして、暗記していく。」というのはまさに受験勉強のやり方です。受験勉強に長けた受験生が多く入学するようになってきたことが影響しているような気がしてなりません。東大や京大がブランド化することで、受験専門校(多くが中高一貫校)が合格だけを目的に受験生を訓練して送り込むようになりました。ゆとり教育の影響で、優秀な学生がそのような受験専門校へ沢山行くようになり、そこからの合格者も増えているのではないでしょうか。(2008/08/27)

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