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マルクスとネアンデルタール人の出会い

「神の死」が正当化する「人道的植民地支配」

2008年8月26日(火)

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 前回ご紹介した「シュトックハウゼン」のゼミナールに出た後、ドイツ西部、デュッセルドルフ近郊にある、昔から行きたかった場所、というか博物館を訪ねてみました。その土地の名前はネアンデルタール。化石人類「ネアンデルタール人」のホネが発見された、その場所です。

ネアンデルタール博物館

ネアンデルタール博物館。螺旋状に1つの見学ルートで最上階まで上ってゆく、独特な設計の建物

 学校でも「ネアンデルタール人」の名は教えますが、この名前、ネアンデル+タールの2つに分解できます。タールは谷、渓谷の意で、17世紀の詩人ヨアヒム・ネアンダーにちなんで名づけられたもの。このネアンダーNeander という名前も、実はノイマンNeumannというドイツ語の姓を、当時流行った、苗字をギリシャ語に改めるブームで変えたものだそうで、英語に直せばNew Man 「新人」みたいな意味になる。「新人の谷」から古い古い化石人類が出てきたのだから、ちょっと面白い気がしますが、実は偶然ながら、このネアンデルタール人、新しいも新しい、私たち現生人類ホモ・サピエンス・サピエンスに最も近い祖先の1つにほかなりません。ネアンデルタール人は約20万年前に登場し、ほんの二万数千年前、歴史時代の直前まで地球上のあちこちで暮らしていた石器人類と考えられています。

創世記と進化論

 ネアンデルタール人のホネがここ、ネアンデルタールの地で見つけられたのは1858年、日本では井伊直弼大老が日米修好通商条約を結んでいた頃の出来事でした。実はこの年号には注意を払う価値があります。というのはこの翌年の1859年、英国でチャールズ・ダーウィンの「種の起源」が出版されているからです。

 デュッセル川を挟む高さ50メートル、長さ8キロほどの石灰岩の谷「ネアンデル渓谷」内の一洞窟で、工員たちが作業していたら、なにかよく分からないホネが出てきた。「シカの骨だろう」「いや、人間みたいだ」「犯罪だろうか」「こんな所に埋めるかね?」などと話し合ったかは定かでありませんが、現場作業員に呼ばれて、このホネを最初に保存したのは地元の学校教師、ヨハン・カール・フールロットでした。このフールロット先生が進化論に強い興味を持っていたために、地元新聞に「古代人類の化石発見さる!」の報が出て、ついには世界各地から出土したこの人類が「ネアンデルタール人」と呼ばれるまでに至るのです。

 フールロットの発見以前にも、1830年にはベルギーのエンギスで子供の頭蓋骨が、1848年にはスペインのジブラルタルで女性の頭骨が、おのおの発見されていたことが、後になってから分かりましたが、このホネが化石人類として正当に評価されたのは、フールロットらの地道な努力が大きく貢献しています。
 
 1858年のネアンデルタール人の「発見」以前にも、あちこちの石灰岩洞窟で当時の人類の骨は掘り出されていたと思われます。それらは人類の骨とは気づかれず、石材やコンクリートの原料として出荷されてしまった可能性が高い。19世紀に作られた欧州諸都市のビルの中には、彼らの遺骨が混ざっているものが必ず存在するはずです。

 ネアンデルタール人骨が発見された当時のドイツ国内では、医学界の権威ルドルフ・ウイルヒョウを筆頭に「年老いて骨が変形した現世人類」という見解が支配的でした。
 
 なぜでしょうか? 
 
 それは当時の社会が人類の起源について、全く異なるストーリーを信じていたことが深く影響しています。欧州社会はほんの150年ほど前、いまだ旧約聖書の創世記を社会の共通了解事項としていたのです。

 旧約聖書は人類の起源以前に、この地球が作られたのが、ほんの1万年ほど前であったと述べています。創造の初めの7日に神様は混沌から天地を分け、陸と海を分け、動物たちを作り、最後に神様自身の姿形に似せてヒトを作った。最初の男性アダムの肋骨から最初の女性イヴが作られ、彼らはエデンの楽園で幸せに過ごす…はずだった。ところが…といった聖書物語は、今日でもよく知られている通りです。

「封建遺制」と差別の問題

 150年前と現在とが決定的に異なっているのは、こうしたストーリーが、日常生活はともかくとして、世界の創造や人類の発祥に関しては、真正面から受け止められていたということです。

 人類の創生から個人の命、その魂が死後に行く所まで、キリスト教の言説が、戸籍から徴税まで、役所の管理の基礎をなしていた。これは別段特別なことではありません

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