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「経済状態の厳しい地方にこそ公立大学は馴染む」~さらば工学部(9)

高知工科大学・佐久間健人学長に聞く

  • 星 良孝

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2008年8月28日(木)

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 高知空港から車でおよそ20分、土佐湾に注ぐ物部川が流れる緩やかな平野に近代的なビル群が現れる。1997年に半官半民でスタートした高知工科大学である。高知県が設立し、学校法人が経営するこの大学は、地域産業の活性化や地元学生の有望な進学先として期待されて全国で開学が相次いだ公設民営大学の1つである。
 この大学が、2009年4月に「公営化」される。公設民営の大学が公営化される初めてのケースとなる。日経ビジネス誌8月18日号特集「さらば工学部 6・3・3・4年制を突き破れ」の連動インタビューシリーズの第9回では、高知工科大学の佐久間健人学長に、公営化の背景にある地方工学部の苦境を聞いた。

 地方の私立大学が工学部を維持していくには限界がありました。経済状態が厳しい地方にとって、公営化がどうしても必要でした。

悲願の工学部だったが…

佐久間健人(さくま・たけと)氏

佐久間健人(さくま・たけと)氏
高知工科大学・学長
1941年9月東京都生まれ、66歳。1970年、東北大学大学院工学研究科博士課程修了、同年、東北大学工学部助手、1974年、同助教授、1981年から英ケンブリッジ大学客員研究員を経て、1986年に東京大学工学部教授。1999年から東大大学院新領域創成科学研究科物質系専攻教授。2004年より、独立行政法人大学評価・学位授与機構教授。2005年、高知工科大学副学長。2008年に同学長に就任した

 そもそも高知県にとって、工学部の創設は悲願だったのです。県内で技術系の人材を育てて、地場産業への人材供給、地場産業の創造を目指す。

 高知県は製造業の“不毛の地”と言ってもいいでしょう。長らく工業製品の出荷額は全国でも最低水準に落ち込んできました。背景にあったのは、高知県には国公私立を問わず、工学部がなかったことが大きかった。

 四国の中でも、徳島大学と愛媛大学に工学部を有する徳島県と愛媛県では、工業品の出荷額が、高知県の3~6倍です。徳島県には、日亜化学工業と大塚製薬という有力メーカーがありますし、愛媛県では造船業が盛んだった。技術系の人材のあるなしが明暗を分けてきたのです。

 高知県の高校生は、工学の高等教育を受けるためには、県外に出る必要がありました。高知県から毎年、高校を卒業した学生を中心として若者が500人近くも県外に流出するのです。高知県には製造業がなく、学生が戻ってこようにも、ままなりません。

 旧自治省の基準で、人口200万人以下の都道府県には公立大学を2校設置できなかった。県立の高知女子大学がありましたから、工学部を誕生させるうえで、公設民営は数少ない手段でした。

 橋本大二郎・前高知県知事が1991年に初めて知事選に出馬した際に、工学部設置を公約として掲げて当選。そうして、97年に、遂に公設民営の大学として高知工科大学はスタートしました。

 公立ではありませんから、県の予算や計画に縛られません。スローガンに「日本にない大学」を掲げました。1年を4期に分けて短期集中で学ぶクオーター制を採用し、全科目を選択制としました。1クラスが10人程度の専門的な少人数セミナー、企業の第一線技術者から直接指導を受けられる実学的な授業など、新しい取り組みを推し進めたのです。

 初めての入学試験だった97年度入試には受験生が殺到しました。物質・環境、知能機械、電子・光、情報、社会という5つの学科の定員は合わせて400人。それに対して、2129人もの学生が志願した。入学者も569人となり、大成功を収めました。

「地域再生」で公営化を実現

 新しい教育体制は驚くべき成果を上げました。第1期生の就職内定率が99.2%に達したのです。教育に対する評価は高く、2001年度の入試には弾みがつき、いったん志願者は1067人に落ち着きましたが、広報の強化も奏功して1743人まで再び拡大しました。

 しかし、10年経って、社会情勢が随分と変わりました。

 国立大学の法人化は大きなきっかけとなりました。入学者の増加が収入増につながるため、国公立大学が定員を上回る入学者を取るようになったのです。高知工科大の志願者は徐々に落ち、2007年の志願者は768人になりました。定員460人に対して、入学者は372人となって、初めて定員割れになりました。

 私は都市部と地方の地域格差の問題があると考えます。

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