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「『日本は智力繁栄しかない』の意味を噛み締めよ」~さらば工学部(10)

松下電工生産技術研究所・小畑外嗣所長に聞く

  • 星 良孝

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2008年8月29日(金)

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 連載インタビューでこれまでに9人の識者が語った。言葉の端々から、工学部の教育と研究の強みが削がれようとしていることを読み取ることができた。では、日本は、この工学部の退潮を看過してもいいのか。日本から世界への輸出額は、2007年にドルベースで年間約7100億ドル。そのうち、一般機械、電気機器、輸送用機械、化学製品を含む工業製品の占める割合は実に75%に上る。日本の製造業を人材面でいかに支えるか、新たな戦略が求められる。

 日本の各メーカーは、工学部衰退を喫緊の課題として既に動き出している。日経ビジネス誌8月18日号特集「さらば工学部 6・3・3・4年制を突き破れ」の連動インタビューシリーズの最終回では、松下電工生産技術研究所の小畑外嗣所長から、現役の技術者の視点で日本の大学工学部への注文を語ってもらった。

 工学部の学生が減り、工業高校が減っています。そうした現状に対して、心配する面と、心配しなくていい面があると考えています。

「大学」「女性」の力の発揮という面で余裕がある

小畑外嗣(おばた・とし)氏

小畑外嗣(おばた・とし)氏
松下電工生産技術研究所長
1949年1月石川県生まれ、59歳。71年、金沢大学工学部精密工学科卒業後、松下電工入社。76年から金型CAD/CAMシステム開発に携わる。2001年、製造システム開発センター所長、2003年から生産技術研究所長を務める。2004年、執行役員。2006年、上席執行役員に就任。精密工学会フェロー
写真:山田哲也

 心配でない面からお話ししましょう。

 第1は、まだまだ日本において本来の意味で産官学のシナジー効果を発揮しようとする取り組みがなされていないことがあります。それくらい日本には余裕があると見ているのです。

 ほかの国々、例えば、ドイツなどは進んでいます。大学の先生が、教員として教壇に立つのはもちろん、別の研究所で研究員をしていたり、さらにベンチャー企業の社長を務めていたりする。1人3役をやっているわけです。共産圏の中国で幹部が様々な役職を兼ねているのと意味合いは違って、ドイツの場合は、大学の教員らが社会への貢献で一歩踏み込んでいる。

 私は精密工学会に所属しています。学会においては会員数が減ったことを嘆いて、そればかり議論している印象があります。私としては、会員数が「減った、増えた」と言う前に、もう少し学会の役割を認識したらどうですかと言っています。日本の工学のために役立つにはどうしたらいいか、教育振興や企業のパワーアップにいかにつなげるか。企画していないから減っていくのでしょう、と。「増やそう」ではなくて、「結果として増えた」というふうにしなければと思います。私は、「企画委員会を作りましょう」と言っているのです。ところが、学会はなかなか動きませんね。

 日本において、学会の幹事をやっている大学教授、あるいは学会にもうひと踏ん張りしてほしい。日本の工学全体の力を発揮するためには、企業側も大学側ももう少しスクラムを組んでいかないといけません。

 もう1つ、心配でない面は、日本が世界でも有数の男女同等レベルの教育水準を維持している国であるにもかかわらず、世界でもまれに見るほど、女性が教育を生かした専門の職業に就いていないということです。やはり、ここにも余裕があるんです。

 国連開発計画(UNDP)のデータによると、女性の社会進出の度合いを示すGEM(ジェンダーエンパワーメント指数)は、直近では世界54位で、欧米は元より、アジア、中南米、アフリカなどの主要国と比較すると大きく劣後しています。

 本当の意味で言えば、「ダイバーシティーマネジメント」は女性についてだけを言うのではありませんが、外国人労働者を増やすよりも先行して、女性を価値のあるポジションに就けていくことは必須です。今まで力が引き出されていないのですから。松下電工の畑中浩一社長が2010年には人材採用の40%を女性にしようと言うのは危機感の裏返しとも言えるでしょう。

 皮肉にも、日本にとって、こうした余裕があることがポジティブな材料とも見られる。このままでは、宝の持ち腐れの状態になってしまう。

大学教育を受けていても社員を再教育する

 2020年以降にリーダーになる世代が、日本の将来を背負っています。

 私が所長を務める、松下電工・生産技術研究所に入ってきた若い人たちは、最初の1年3カ月、みっちりと実習を行います。もう1回、一から学び直してもらうのです。図面書き、シミュレーションといった演算、統計学から、全部やり直しです。

コメント6件コメント/レビュー

米国にて米国の製造会社に勤務しているものです。小畑さんのおっしゃられていることは、昨今の日本の状況を海外からですが、見ていてとてもわかります。このままでは、きっと日本はいまの国際的な地位から転落するでしょう。したがって、小畑さんの疑問、”戦後の日本のように、アジアの国々の国民が団結するとしたら、日本は勝てるのか。”に対する答えは、「当然負けます。」になると思います。ところで、地球規模で見たとき、それがなにか悪いことだろうかと思います。地球上にいる人類は、2020年に消費される工業製品を日本が作っていようが、中国が作っていようが気にしないと思います。(当然、日本人は、食っていけなくなるから、気にするでしょうが。)でも、努力を怠り、教育を真摯に考えなければ、どうなるかといってケ-ススタディを他の国に身をもって示せることになりますから、それはそれで日本の役割は果たせるのではないでしょうか。決して皮肉ではなく、近頃はそう思っています。幸いなことに、中国と違い、日本は個人が自由に海外に出られる権利を認めている国ですから。(2008/08/30)

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米国にて米国の製造会社に勤務しているものです。小畑さんのおっしゃられていることは、昨今の日本の状況を海外からですが、見ていてとてもわかります。このままでは、きっと日本はいまの国際的な地位から転落するでしょう。したがって、小畑さんの疑問、”戦後の日本のように、アジアの国々の国民が団結するとしたら、日本は勝てるのか。”に対する答えは、「当然負けます。」になると思います。ところで、地球規模で見たとき、それがなにか悪いことだろうかと思います。地球上にいる人類は、2020年に消費される工業製品を日本が作っていようが、中国が作っていようが気にしないと思います。(当然、日本人は、食っていけなくなるから、気にするでしょうが。)でも、努力を怠り、教育を真摯に考えなければ、どうなるかといってケ-ススタディを他の国に身をもって示せることになりますから、それはそれで日本の役割は果たせるのではないでしょうか。決して皮肉ではなく、近頃はそう思っています。幸いなことに、中国と違い、日本は個人が自由に海外に出られる権利を認めている国ですから。(2008/08/30)

私は大学受験の予備校で長年教えてきました。20年ほど前から、理工系を志望する学生が単に減るばかりでなく、質的にも低下してきています。その理由は、なんといっても将来の経済的メリットにつきます。医療に対する何の興味も動機もなく、成績優秀というだけで、子供たちは工学部から医学部へ志望を変えます。医学部人気はその経済的メリットです。塾へ送迎する親のベンツを見だけで、志望を変えた優秀な子供もいます。こうして理工系の優れた才能が医学部に吸収されてしまうという現実があります。したがって、日本の技術立国を支えるには、科学技術者の待遇改善しかありません。(2008/08/29)

小畑所長が仰っている事は非常に的確な事を述べていると思います。ここ数年日本の断崖世代の技術者が中国等に第2の人生と言って技術指導をしているとNHKの特番などで見ています。この状況を見て良く社長仲間とこれはおかしい何で重要な技術者をわざわざ渡さなければいけないか、個人の自由と言えば聞こえがよいが、まずは自国の若者に技術の伝播を行うことが重要だと思うのだが、多分アメリカ当たりは国策として動くと思う。話しが変わるが今回の北京オリンピックのシンクロの団体のメダル落ちが良い例では無いか。日本人コーチが中国チームの監督である。日本の政治・行政を見ていると無策としか言いようがない。情け無い。目先の事しか対応出来ない。まじめな国民で教育レベルも悪くないのに非常に残念な状況だと思います。今職のない若者も居るでしょう。国が技術サポートセンター等を創って戦略的に彼らを技術者を養成するシステムをつくつても良いのでは。小畑所長には今後もがんばって頂きたい。(2008/08/29)

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