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人類の源流を訪ねて

2008年9月3日(水)

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 突然の福田康夫首相の辞意表明で、このコラムも1日、掲載が遅れました。

 どうやらこのところの政府は、政局が煮詰まると政権を放り出すのがクセになっているようですね。総選挙などになれば、マスコミはその推移を追っかけて、多くの国民の視野からは野党の存在が薄くなるのかもしれません。かつての「郵政解散」などここ数年を振り返ってみても、こうした問題は実は「メディア情報」の観点、そこでの操作的意図から読み解くと、ずいぶん分かりやすくなるような気がします。このコラムの背景の1つ「情報の環境問題」の観点からは、いろいろな考察が可能になる対象です。

 さて、今回のテーマは政局をめぐる情報の問題ではありませんが、主に内政に原因を持つ今回の辞任劇、海外からは当惑の報道ばかり寄せられています。国営イタリア放送などは、短期政権が続くことを「日本の政治の危機」と解説しているという。

 こと外交の観点からは、政局混乱という「情報」は、日本というブランドの不安定かつ一貫性を欠くマイナス要因として映る可能性が高いことでしょう。「不定見」~「信用の低下」という現象は、この信用を手形や貨幣と考えれば、別のそろばんがはじけるものでもある。そういった観点は、福田さんの辞任劇には見られないように思います。

 ことは外交に限らないでしょう。医療、福祉、科学技術、教育、基本的人権などに関わる問題の解決は、短期的な政治の駆け引きで左右されるべきでない。中長期的な「定見」、確かな「根拠」をもって取り組まれるべきものです。

 しかしまた、逆に行政が「科学的な根拠」として、誤った似非科学や特定の利害で偏向したストーリーを「定見」に採用することは、大変な害毒をもたらします。

 特効薬のない、バランスの極めて微妙な問題です。

 今回も前回に引き続いて、科学が「人間」をどう捉えてきたかを考えたいのですが、できるだけその原点までさかのぼってみたいと思っています。

消えた石灰岩渓谷

 人間の欲望というものは恐ろしいものです。「ネアンデルタール人」という命名のもととなった「ネアンダー渓谷」の現在の姿を見て、ほとほと思いました。

 150年ほど前、ネアンダー渓谷は、左の写真のような石灰岩が切り立った高さ50メートルほどの崖がデュッセル川を挟んでいたそうです。その中の洞窟の中から、化石人類の遺骨が発見されました。その発見場所がどうなっているかというと…右の写真が現在の姿なのです。

 かつての「ネアンダー渓谷」は今は存在していません。渓谷の石灰岩はすべて、石材やコンクリートの原材料として切り出され、今では平地の真ん中を小川が流れているばかりです。石材は19世紀のドイツ統一あたりから、近郊のデュッセルドルフやケルン、ボンなど、ドイツ西部での近代都市建設のため使い尽くされてしまいました。「ネアンデルタール人」という名前は長く人々の記憶に残りましたが、石灰岩の渓谷としての「ネアンデルタール」は近代化の過程で消滅してしまったのです。

左:ネアンデルタール人骨発見の地を記念して、ごく一部残された石灰岩の岩肌。右:人骨が発見された洞窟跡地。

左:ネアンデルタール人骨発見の地を記念して、ごく一部残された石灰岩の岩肌。かつての「ネアンダー渓谷」はこうした岩壁が高さ50メートル、長さ800メートルにわたって続いていた。右:人骨が発見された洞窟跡地。石灰岩渓谷はすべて切り出され、芝生の平地になっている

 19世紀以後のドイツの歴史を見ると、桁外れの集中力に驚かされます。英仏に大きく後れを取った近代化でしたが、重化学工業で盛り返した20世紀初頭。第1次世界大戦後には海外植民地を失いましたが、急激な復興を遂げました。その極端な近代化によって生み出されたのが、人間性を失った合理主義のナチス政権にほかなりません。第2次大戦後も急速に復興を遂げ、冷戦崩壊、東西統一など様々な道のりを経ながら、21世紀初頭現在も米日に次ぎ中国に伍するGDP(国内総生産)を誇っています。

 挫折するたびに急激に立ち直るパワーはすさまじいものですが、その背景には「ネアンダー渓谷」を平地にしてしまうような徹底した合理性が存在している。化石人類の進化論や植民地支配の問題意識で訪れたネアンデルタールでしたが、谷自体がもはや存在しないとは、さすがに想像していませんでした。

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