「酒井耕一の「グローバル企業最前線」」

テロから7年、メリルリンチの復活と身売り

米ウォール街が映す強さと脆さの均衡点

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2008年9月16日(火)

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 9月15日、米メリルリンチのバンク・オブ・アメリカへの身売りが決まった。メリルの社員はどんな思いで、その決定を聞いただろうか。

 わずか4日前の9月11日には、米同時多発テロから7周年の追悼式典に祈りを捧げていたはずだ。メリルリンチの本社と、テロで襲撃されたワールドトレードセンター(WTC)は隣接している。メリルの通路からはグラウンドゼロの跡地が常に目に飛び込んでくる。

 破壊はされなかったが、メリル社員もテロの大きな被害者だ。2001年9月11日の数日後、メリルリンチは本社から離れたビルで、緊急記者会見を開いた。

本社ビルは健全を守った

 会見に登場したスミス国際部門社長は「WTCに隣接するメリル本社は多少の被害はあるもののビルは健全であること。本社に全員で復帰して強いメリルを印象づける」と語った。スミス社長は、メリル創業者一族の流れを汲む人物。メリルへの愛着は人一倍強い。創業一族の肖像画を前に「メリルはいい会社」と笑顔で語っていたのを思い出す。

 そしてメリルは無事に本社に復帰を果たす。ブルームバーグ・ニューヨーク市長も参加して、多くの社員がロビーに並び、拍手で無事帰還をアピールした。当日の模様はビデオに撮影されて、メリルリンチの株主総会でも上映された。「テロにも屈しない」。メリルの本社復帰は、社員はもちろん、米金融機関や米国の誇りを示したものだろう。

 当時、WTCの近くにあるニューヨーク証券取引所のグラッソ会長(当時)も「NY市場は強いしへこたれない」と繰り返し語っていた。まさに通称「ウォール街」で知られる金融業は、米国の強さの象徴であったのだ。

 破綻したリーマン・ブラザーズの本社ビルは、歓楽街のブロードウェーにある。WTCから離れた場所にあるが、これもテロに遭わないようにリーマンは警戒して本社を早くから移していた。外敵にとても敏感に反応したわけだ。結束してテロとの戦いに勝った米金融機関。だが残念ながらサブプライムローン(米国の信用力が低い個人向け住宅融資)問題には勝てなかった。

テロの後に再認識した家族の絆を確かめ合う場に起きた悲劇

 「ファミリーバリュー(家族の価値観)」

 テロの後に米国でよく使われるようになった言葉だ。テロの犠牲者の多くは、いつもと変わらずに出勤して、普通に仕事をしていたところで事件に巻き込まれた。テロさえなければ、夕刻には帰宅して家族や友人と楽しく食事をしていただろう。

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著者プロフィール

酒井 耕一(さかい・こういち)

日経情報ストラテジー編集長。

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