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不良資産は300兆円超も

政府買い取り策は始まりに過ぎない

  • 神谷 秀樹

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2008年9月26日(金)

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 米国政府は、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)関連の不良資産を7000億ドル(70兆円)買い上げる政策を発表した。当然だが、この買い取り額は、不良資産の全体額ではない。

 サブプライム関連で打撃を受けた民間の金融機関全体には現在、7000億ドルよりも大きい額の不良資産がある。それを7000億ドルで買い取ってもらうには、現在ある全不良資産を7000億ドルまで償却しなくてはならない。それでは、不良資産全体の額はいくらで、要償却額はどの程度になるのか。

要償却額は250兆円、引当金はその数分の一

 それをはじき出すために、メリルリンチが不良資産を売却した価格を参考にすると、メリルリンチの売却では、1ドルの額面に対して平均22セントとなった。これを今回の買い取り額7000億ドルに当てはめると、売却する不良資産の額面は約3兆2000億ドル(320兆円)となる。

 この試算をベースにすれば、金融機関が償却しなくてはならない不良資産要償却額は約3兆2000億から7000億を差し引いた約2兆5000億ドル(250兆円)となる。

 市場は「売り手」と「買い手」があって成立するが、今の市場には買い手がとうとう1人もいなくなった状況だ。そこでヘンリー・ポールソン財務長官は、自らを、すなわち財務省を唯一の買い手にした。これが、7000億ドルの政府買い取り策の意味だ。

 不良資産を抱え込んでいる民間金融機関は、現在の唯一の買い手に買い取ってもらうには、総額で2兆5000億ドルを償却しなければならない。しかし、金融機関がこれまでに不良資産償却のために積み立てた引当金は、その数分の一に過ぎない。果たしてこれだけの額を、今の金融機関は償却できるのか。こうした疑問を感じるのは、私だけではないだろう。

 またこれだけの償却をするということは、同時に税収が激減するということを意味する。7000億ドルの買い取り策は、連邦政府の債務が一挙に7000億ドル増加することにとどまらず、今後連邦政府に限らず、州政府、市町村を含めて税収は激減することになる。

 不良資産というババを金融機関から納税者に付け替えただけでは、何ら問題の解決にはならないのである。上記の償却、税収の激減、需要の減退、実体経済の悪化のすべてが凝縮されて出てくるのは、来年くらいになるような気がする。

200兆円もの資産を管理できるのか

 強欲化し、自爆した資本主義は終焉を迎えたが、それに代わる「新しい資本主義」の見取り図はまだ誰も持っていない。米国でこの見取り図が描かれるのは、新大統領が生まれてからだ。

 それも民主党のバラク・オバマ氏になれば、新たな見取り図が描かれると希望を持てるが、大統領より全軍最高司令官になりたい共和党のジョン・マケイン氏が当選するようだと、その希望も失せてしまう。

 肥大化し、暴走した米国の金融機関は、節度ある形に規定し直さなくてはならない。その意味からも規制緩和主義のマケイン氏ではなく、オバマ氏が大統領になることを私は望む。

 公的管理化に入ったアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の総資産が1兆ドルを超えていた。このことは、この世界に1兆ドルの資産を持って経営できるような経営者はいない、ということを示している。ところがバンク・オブ・アメリカとメリルリンチが合併すると、総資産は2兆ドルを超えるという。

コメント4件コメント/レビュー

私は経済学にうとい人間ですが、神谷秀樹氏の洞察力に感銘をうけました。 願わくば、日本の金融人にも神谷氏のこのコラムを読んでおいて欲しい!!!(2008/09/28)

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私は経済学にうとい人間ですが、神谷秀樹氏の洞察力に感銘をうけました。 願わくば、日本の金融人にも神谷氏のこのコラムを読んでおいて欲しい!!!(2008/09/28)

適正規模による適正利益の追求をめざす。この筆者の願いは虚しい。国税によって再建を果たした三菱UFJ銀行は1兆円近くの資金を大きな利益のために米金融機関への導入することを決定した。一方で小さな東京スター銀行と年間数億円の規模で係争している。これは、1件の請求費用105円を20円にしろとの具体的要求で、預金者から徴収しているATM手数料の実質費用をいみじくも暴露してしまうというお粗末な結果を招いた。国民の税金の援助で立ち直った経緯を踏まえて、ATM手数料を三菱UFJ銀行は即時半額にしてから、米金融機関への資金投下をしろと声を大にして言いたい。(2008/09/26)

バブルは何時の世にも存在し、これからも度々出現すると思う。問題はバブルがはじけた後、それを総括して本物が残る、新しいものが出てくるなど次のステップに移行でききるかということである。日本の場合、株、土地バブル、小泉バブルがはじけた後、総括が行われ良い方向に進んでいるのか疑問である。まずは総括が必要である。組織や事業の肥大化が生き残り策であるということで自動車メーカーでも実践されたが、最近はそれも解消されている。神谷氏が指摘されるように、マネージメントの適正規模は今後追求されると思うが、それ以前に「誠実、正直」という教育を徹底させることが急務であると思う。(2008/09/26)

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