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景気浮揚策としてのイラク・アフガン戦争

逆走する米国流「正義の公式」

2008年10月7日(火)

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 前回「中山成彬前国交相」の記事を入稿した直後に「米国金融安定化法・下院否決」の報が飛び込んで、中山発言どころの話ではないことになってしまいました。一閣僚の暴言はしょせんコップの中の嵐。米国の金融破綻はコップ自体を吹っ飛ばしてしまう本当の嵐にほかなりません。

 嵐の前の中山発言は本当に「自爆」となってしまい、同氏は次期衆院選に出馬せず政界を引退することになったようです。「強気」も失敗と出たわけですが、この安倍晋三・福田康夫両氏の挙動を髣髴させる議席の「投げ出し」、地元支持者に詳しい説明はないらしい。支えてきた自民党宮崎県連は「今まで一人で当選してきたと思っているのか…」と絶句、次の候補者選びに頭を抱えているとのこと。当の中山氏は入れ替わりで奥さんが閣僚級で麻生太郎政権に入り、なんらかの算段が立ったのでしょうか。

農耕民族と狩猟民の違い?

 こうした国内問題の話や日本の総選挙の報道を、大統領選など米国や海外の報道と見比べる時、いつも気になることがあります。

 日本では「バブルが崩壊した」「サブプライム破綻が起きた」「金融安定法案が否決された」「安定法案が下院を通過」など、第三者的に「現象を記述」するような報道の見出しが目につきます。全く同じ内容でも「Bailout is law: President Bush signs historic $700 billion plan aimed at stemming credit crisis.(CNN Money, 10月3日)」のように、欧米語の報道では明確な主語が示されており、読む時の印象がかなり異なります。最初にそれを痛感したのは1991年の(第1次)湾岸戦争時でした。

 ちょうどその頃親が入院しており、自宅と病院とを車で往復しながらFEN(Far East Network, 現在のAFN Tokyo在日駐留米軍のラジオ放送)を聞いていたのですが、米軍兵士とその家族向けのラジオは、日本の新聞やテレビで報道する「湾岸戦争」と全くニュアンスの異なる内容を放送していたのです。端的に言うなら、それは

1 「主語=責任主体が明確」な
2 「戦意高揚報道」

でした。それに比べて日本の報道は「バクダッドが空爆された」「F117ステルス戦闘機が出動した」など、まるで「台風15号が九州を直撃」というのと同じように、出来事はバラバラに分かるのですが、まるで天然自然の災害が起きたかのようで、人為としての責任の所在がちっとも明確になりません(そんな中で「中山発言」は、明確に主語のある報道ではあったわけですが…)。この違い、農耕民とされる日本人と、肉食狩猟民の欧米との違い、というわけでもないのでしょうが…。

 さて、1991年当時のFENもまた、主語の明確な放送でした。「ブッシュ大統領は…」「セクレタリー・オブ・ステイツ・ジェームズ・ベーカー(ベーカー国務長官)は…」などなど、軍の最高司令官としての大統領の主体性が非常に明確なものばかりでした。「パパ・ブッシュがこう言っている」「その秘書であるベーカーはかくかくしかじかだ」、と、指示系統が非常にクリアな形で「この正義の戦争を勝たねばならない」とやっていたわけです。

 「正義」など内容の当否はさておき、こうした違いは単に言語の差にとどまらない、かなり広範な影響の違いを引き起こしているのを感じました。

繁栄を約束する「湾岸戦争」

 ここで極めて大雑把に、1980年代末から今日までの米国の景気と戦争のアウトラインをスケッチしてみましょう。

 1987年10月17日、ニューヨーク市場では株価が22.8%暴落しました。いわゆる「ブラックマンデー」ですが、各国金融当局の適切な政策介入で実体経済への影響は最小限にとどめられます。逆に日本ではバブル経済が進行し、それが崩壊するのと同時に「第1次湾岸戦争」が引き起こされます。ベーカー国務長官は「戦争は米国に雇用をもたらす」と本音で訴えましたが、米国世論の受けはあまりよくなかった。それでも、不況のどん底で辛くも「冷戦」を生き残った米国経済は、湾岸戦争を機に一挙に好転し、繁栄の90年代が訪れます。パパ・ブッシュは「サダム・フセイン」という悪の象徴を作り上げ、このサンドバッグを叩くことで、米国世論に正義の錯覚を与えることに成功しました。

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