「「企業」としてのシルク・ドゥ・ソレイユ」

舞台衣装2万5000点、靴3000足の大半を内製

シルク・ドゥ・ソレイユ国際本部を歩く(2)

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2008年10月17日(金)

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 前回、シルクの特徴を表すキーワードは「内製」だと触れた。

 シルク・ドゥ・ソレイユの作品に登場する衣装や小道具は、ほぼすべてが国際本部の工房で内製されている。コスチューム、シューズ、帽子と、生地から作るこだわりよう。シルクに所属するパフォーマーの身体データが完備されており、新しい衣装が即座に製作できるようになっている。ショーの競争力の源泉である、シルクの工房を訪れた。

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 晴れてシルク・ドゥ・ソレイユの一員となったパフォーマーが、最初にやる仕事。それが、自身の詳細な寸法データを測定することだ。身長、体重、足の大きさ、首まわりなど、100カ所近くにわたって寸法をはかる。身体だけはなく、帽子やカツラの製作に必要な「デスマスク」作りも待っている。シルクの国際本部には、デスマスクの製作プロセスが展示されている。

帽子やカツラ、マスクの製作のために、パフォーマーは入団するとすぐに顔型を作る

帽子やカツラ、マスクの製作のために、パフォーマーは入団するとすぐに顔型を作る(写真:田中 克佳、以下同じ)

 ちょうど、歯科医が歯型を作るような作業を、顔全体に施していくイメージだという。所用時間は30分ほど。別室では、ショーごとに出演者の顔型がまとめられていた。

顔型が集められた倉庫。ショーごとにまとめられ、帽子などの製作にすぐに取りかかれるようにしている

顔型が集められた倉庫。ショーごとにまとめられ、帽子などの製作にすぐに取りかかれるようにしている

 顔型を含む、個人のデータは、出演者名・ショーの名前・役柄・身体データ・衣装データの識別子がつけられ、データベースに管理されていく。

 実は、シルクのショーの強みは、こうして作られたデータベースの徹底活用にある。個人データに加えて、後に見ていく衣装やカツラ、靴などは、製作プロセスが詳細にマニュアル化され、製作者はそれを忠実に再現するように指導されている。このため、ショーの品質にばらつきがなくなり、一定のレベルを保つことができるのである。

 シルクの舞台衣装の製作現場は、国際本部のアトリエ棟に集約されている。棟内は、靴、カツラ・帽子、コスチューム、小道具などパーツごとに工房が分かれている。ここで働く、スタッフは約400人。それぞれの部門で人材の交流はなく、ほぼ一生同じパーツを作り続ける職人の集まりとなっている。

年間3000足を作る靴工房

 最初に訪れたのは、靴工房。ショーのために、1年に製作する靴の数は、ざっと3000足。30人ほどの職人が、次々と靴を完成させていた。靴の製作方法は、大きく2種類。まったくのゼロベースから製作する場合と、市販の靴に様々な装飾を施していく方法があるという。「ディレクターのイメージに合わせて、どちらの方法を採るか決めているが、大抵はゼロから作る」とある職人さんは説明してくれた。

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著者プロフィール

蛯谷 敏(えびたに・さとし)

2000年、日経BP社入社。通信業界誌『日経コミュニケーション』記者を経て、2006年より日経ビジネス記者。情報通信、ネット、金融、不動産、政治、人材など色々担当。「一極集中」から「多極分散」へと移り変わる様々な事象をテーマに日々企画を考えている。



このコラムについて

「企業」としてのシルク・ドゥ・ソレイユ

 2008年10月1日、日本初の専用劇場「シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京」が千葉県浦安市にオープンした。サーカス演技を原点とする華麗なパフォーマンスは、米ラスベガスの専用劇場で火がつき、その評判は瞬く間に世界に広がった。その一方で、シルクがショービジネスを徹底的に研究し、世界で成功する必勝のビジネスモデルを作り上げたグローバル企業としての側面があることは、あまり知られていない。華やかなショーで観客を魅了し続けるシルクの企業経営に迫った。

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