「御立尚資の「経営レンズ箱」」

低稼働の資産を活用せよ

「もったいない」の発想でアセットプロダクティビティを考える

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2008年10月17日(金)

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 金融危機が実体経済に悪影響を及ぼす状況になってきており、様々な企業が対策に乗り出している。この中で、今も昔も最初に手をつけるのが、コスト削減だ。

 設計段階からの原価低減、調達手法の全面見直し、ホワイトカラーの生産性向上といったものから、オフィスの電灯を消そう、コピーを減らそう、という“ケチケチ運動”まで、おなじみのメニューが目白押しで、日本企業の面目躍如といったところである。

 一方、こういったP/ L(Profit and Loss Statement=損益計算書)中心の考え方に加えて、B/S(Balance Sheet=貸借対照表)、特に資産の稼働改善を考える手法もある。高価な固定資産は、いったん購入してしまうと、その稼働を上げるか、さもなくば売却するかという手を打たない限り、資産効率を上げることはできない。

 例えば航空会社であれば、航空機を1日どれだけ稼働させるか、ということが勝負になる。タイムテーブルや乗務員のスケジュールに工夫を凝らし、空港に到着してから出発するまでの準備時間を短縮する。こういった努力の徹底で、100億円を超えるような資産の稼働を、例えば1日10時間から11時間に上げることができれば、ROA(Return On Assets=総資産利益率)は、ほぼそれに応じて改善する。

 製造業における3直制での工場ライン24時間稼働や、繁閑に応じたプライシングによる客室稼働の向上など、皆同様のアセットプロダクティビティ(資産の生産性)向上策だと言えよう。 

ROA改善からアセットプロダクティビティ改善へ

 近年、日本企業は、ROE(Return on Equity=株主資本利益率)を着実に改善させてきた。この中で中心となったのが、ROAの向上である。

 ご存じの通りROE改善には、ROAを向上させるか、レバレッジを上げるか、2通りの方向性がある。低金利であればあるほど、レバレッジをかけて少ない自己資本でより多くのリターンを得る、という手に流れがちなのだが、多くの日本企業は地道にROAを改善させてきた。

 これまでのマージン拡大(特にコスト削減)と余剰資産の売却によるROA改善に加えて、アセットそのものの稼働向上を(世界的な金融危機の余波による)当面の景気低迷の中でどう図っていくかが、これから問われることになる。

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著者プロフィール

御立 尚資(みたち・たかし)

御立 尚資

ボストン コンサルティング グループ日本代表。京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。日本航空を経て現在に至る。様々な業界に対し、事業戦略、グループ経営、M&A(合併・買収)などの戦略策定、実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを数多く手がけている。著書に『戦略「脳」を鍛える』(東洋経済新報社、2003年)、『使う力』(PHP研究所、2006年)、『経営思考の「補助線」』(日本経済新聞出版社、2009年)など。



このコラムについて

御立尚資の「経営レンズ箱」

コンサルタントは様々な「レンズ」を通して経営を見つめています。レンズは使い方次第で、経営の現状や課題を思いもよらない姿で浮かび上がらせてくれます。いつもは仕事の中で、レンズを覗きながら、ぶつぶつとつぶやいているだけですが、ひょっとしたら、こうしたレンズを面白がってくれる人がいるかもしれません。

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