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ノーベル賞と戦時巨大科学の暗闘(上)

アハティサーリの平和賞と冷戦核開発からグルジア戦争まで

2008年10月22日(水)

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 10月20日、国連総会のデスコト議長(ニカラグア)は、世界的な金融危機の深刻化を受けて、国際的な公的金融機関のあり方を検討する専門作業部会の設置方針を発表しました。部会長として、2001年度のノーベル経済学賞受賞者、コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授が選ばれる見通しとのこと。

 このニュースを見て「ああ、国際的な金融危機対策のヘッドにノーベル賞学者が就任するのか…」と、ごく自然に受け止めている私たちは、ノーベル賞が敷いた価値観に、見事に順応していることに注意したいのです。ちなみにスティグリッツ博士は日本の宇沢弘文氏の生徒でもあります。もし「文化勲章受章者のお弟子さんが世界の経済危機を乗り切る責任者に」と書かれれば「大丈夫かね?」となるかもしれません。

 ここに、ブランドとしてのノーベル賞の神髄があるのです。

 ノーベル賞と国連の密接な関係、あるいはノーベル経済学賞という仕掛け自体が大変戦略的に準備され、まさに今こそ役割を果たすべき時、というところで、予定通りのニュースが入ってきました。実はノーベル賞科学者は「授賞後」の活躍こそが期待されているのです。「授賞後の世界」やスウェーデンと国連の密接な関係、経済学賞戦略などは、4~5回後に詳しく述べたいと思います。すでに大枠を準備してあるので、関連の記事がとてもスキャンしやすくなりました。

 今週は2回に分けて、大陸間弾道弾開発を軸とする東西冷戦時の巨大軍事科学とノーベル賞との、「暗闘」とも言うべき水面下の駆け引きについて、やや詳しくお話ししたいと思います。この話題は、2008年という「恐慌の年」そして「戦争の年」、まさに絶妙な形で与えられたノーベル平和賞を検討するところから始めたいと思います。

アハティサーリ・フィンランド元大統領のノーベル平和賞

 2008年のノーベル平和賞がマルッティ・アハティサーリ元フィンランド大統領に授与されたことには、「革命的」とすら言える強力なメッセージが込められていますが、そうした記事は日本語ではさっぱり読むことが出来ません。

 アハティサーリ氏は外交官出身で、国連ナミビア事務総長特別代表などとして長年にわたって同国の独立をサポート、その後国内政界に転身して大統領に就任します。1期務めた後は再び外交の世界に戻り、東欧コソボの地位問題やインドネシアのアチェ平和合意などに尽力しています。

 もちろん大変立派な業績です。ただ、こうした国際紛争解決に尽力している外交官、国連人は数千人、数万人単位で存在しており、彼ら彼女らは皆無言の努力を続けています。日本人でも有名なところで明石康氏や緒方貞子博士の名前を挙げることができるでしょう。

 国家元首経験者も決して少なくないのは、国連のしかるべき議長席に座っている人を一瞥すれば明らかなことです。平和外交に尽力している国際人は数多い。

 そんな中で今年、元フィンランド大統領のアハティサーリ氏にノーベル平和賞を出したのは、アチェ平和合意やコソボなど、過去の業績を顕彰するというより、未来に向けての平和維持への布石としての意味合いが、より強いと考えるべきものです。

 端的に言えば、ロシアへのメッセージ、つまりグルジア戦争を引き起こしたロシアへの牽制という、大変明確な意図があり、少なくともフィンランド人の大半はそうした意味をきちんと理解していると思います。

国連敵国条項対象国だったフィンランド

 そもそもフィンランドへのノーベル平和賞授賞がどれくらい画期的なことかを、強調しておかねばなりません。

 周知のようにノーベル平和賞は形式上「ノルウェー国会」から授けられることになっています(つまり、そういう意味では一国国会の議決に過ぎないとも言えます。もちろんそんなことはないわけですが)。

 冷戦後世代の日本読者は「なんか北欧の方で仲間内の賞を出しているんだろ」くらいに見えるのかもしれませんが、かつて中曽根康弘元首相が「そんなことしてるとフィンランド状況に陥る」などと発言して物議を醸した時期に思春期を送った私には、感慨無量なものがあります。

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