日経ビジネスは2009年10月に創刊40周年を迎えます。この欄ではそのカウントダウン企画として、過去の記事の中から、現在にも通じる企業戦略を選び、毎日掲載していきます。第3回は新日本製鉄。
その歴史は安政4年(1857年)にまでさかのぼる。明治時代には官営八幡製鉄所の操業を通して、近代日本の発展に貢献した名門企業。「鉄は国家なり」「重厚長大」。日本経済の中心にはいつもこの会社があった。しかし、第3次産業の隆盛とともに舵取りにも変化が生じ、今日では巨大外資鉄鋼メーカーの買収対象銘柄とも噂される。名門企業の変遷から何を学ぶ――。 (新日本製鉄編は5話完結です)
第4回
国内での業界協調から業界再編へ。新日鉄の誕生から30年、同業大手と相次いで提携し、強さに磨きをかける。1998年にはダイムラークライスラーが誕生し(その後分離)、99年には日産自動車が仏ルノーと提携。鉄鋼ユーザいである自動車業界の世界的再編は、王者・新日鉄に変革を迫る。
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合併後30年、協調から一転し大反撃
粗鋼シェア奪回へ買収も視野に
1999年7月12日号より
新日鉄が誕生して来春で30年。協調の仮面を脱ぎ攻めに転じた。
まず日新製鋼、住友金属工業との提携で業界再編に布石を打つ。
自前主義を捨て、弱者には市場退出を促そうとしている。
高炉改修で競争力向上し、再編進めば企業買収に乗り出す構えも。
ROA重視の経営で、設備集約に踏み切れるかが焦点といえる。
(塩田 宏之=編集委員)
「新日本製鉄が住友金属工業と提携した裏には、NKKグループから商圏を奪う狙いがある」
新日鉄と住友金属は6月17日、ビル建設などに使うH形鋼の相互OEM(相手先ブランドによる生産)提携を発表したが、その後、鉄鋼業界にはこんな観測が強まっている。
同日、新日鉄の千速晃社長は鉄鋼連盟の会長会見で、「提携の目的は、両社の輸送コスト削減」とだけ語った。公式見解であり、その説明はこうだ。
H形鋼はサイズによって大型と小型に大別される。関東圏では新日鉄が小型を君津製鉄所(千葉県)で、住友金属の子会社が大型を鹿島製鉄所(茨城県)でそれぞれ生産している。一方、関西圏では新日鉄が大型を、住友金属系が小型を製造している。東西で逆の関係になっているわけだ。
建設業界には大型、小型の両方を求めるユーザーが多く、新日鉄が関東圏のユーザーに大型を供給するには、関西でつくった鋼材を輸送しなければならない。住友金属にとっての小型も同様だ。
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