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日本にノーベル医学・生理学賞が来にくい事情(下)

日本企業のイノベーション鑑識眼はフシアナか?

2008年10月31日(金)

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 米国前連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長が吊るし上げを食っています。

 民主党のヘンリー・ワックスマン議員が委員長を務める下院・監視・政府改革委員会は先週22日、ムーディーズ・インベスターズ・サービスやスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)などの格付け会社の幹部を公聴会に呼び、サブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)破綻などを引き起こした責任を追及し、翌23日にはアラン・グリーンスパン前FRB議長が呼び出されました。

 国内ではグリーンスパン氏の「100年に1度の信用津波」「消費と雇用への影響は避けられない」といった発言の「情報」が主として報じられましたが、そんな表層を見ていても、本質的な対策の役には立たないでしょう。

 グリーンスパン証言のポイントは「自分は2005年の時点で、リスクの過小評価を続ければ深刻な結果をもたらしかねない」と警告を発していたとしながら、主要政策金利の大幅引き下げなどによって「想像していたより遥かに大きな危機が拡大した」と述べている、そのメカニズムを考えるところにあります。

 グリーンスパン証言に関連する話題は、大統領選挙後にまとめてきちんと考えたいと思っています。 焦点の1つは、ブレトン・ウッズ体制後に発生した電子証券市場と、1990年代後半から本格化したネットワークという「二重の電子化=仮想空間情報経済」が、卓越した動物的な勘で40年以上「自由経済」を生き抜いてきたグリーンスパン氏たちスタッフの「直感政策」による「予想」を、遥かに上回って「自走」したことでしょう。

「複雑系経済」自走と「直感政策」の限界

 「資産経済」から「二重の情報経済」へ。あるいは多重に情報構造が錯綜して、直感や山勘では制御できなくなってしまった「複雑情報経済」へ。複雑なシステムを「複雑系」と呼ぶことがありますが、これはただ単に「こんがらかっている」というのではありません。内部に「ループ構造(自己資金還流)」などの非線形なマネーの流れを多く持つ不安定システムが、悪意を含む様々な要因で暴走、崩壊した過程を、きちんと分析したうえ上で、再発防止への国際システムを立ち上げてゆく必要があります。グリーンスパン氏からベン・バーナンキ氏へのバトンタッチは、そのような観点から読むべきだと私は思っています。

 実はこうした「公共選択論」的な方法論は私自身、小泉純一郎政権時代の内閣府「動け!日本」で政策導入できないかと考え、現場では全く問題にもされなかった経験があります。すでに「ワールド・コム破綻」など起きていたのですが。ホリエモンや村上世彰氏が時代の寵児に祭り上げられるのもこれより少し後のことでした。

 ちなみに前回、グリーンスパン氏やポール・クルーグマン氏、コンドリーザ・ライス氏などがミュージシャンであることにちょっとだけ触れましたが、これにも実は背景があります。「直感政策」という言葉でグリーンスパン氏を低く言うように聞こえたら、それは私の意図ではありません。グリーンスパン氏が、根拠を持って働かせてきた「直感」は、アリストテレスなら「フロネーシス」、野中郁次郎氏なら「暗黙知」と呼ぶ卓越したもので、わが国でよく見る「山勘」「腹芸」の類と比較できるようなものではありません。バーナンキ氏やクルーグマン氏らに期待されるのは、数理やコンピューターも駆使して素朴な死角を取り除いた「よりシタタカになった直感」にほかなりません。

 人材育成、とりわけ「多義性」を読むというトレーニングに著しく欠ける日本の教育の最大の弱点は、国際的に見るなら実はアートやスポーツなど、大学での「第2専攻」がカバーしていることが多いのです。ここは音楽教授業としての私の一般社会にアピールする力点の1つなのですが、やはり別の機会にまとめて取り上げることにしたいと思います。

 ポイントは、ムードと腹芸で流れることは、目をつぶったまま岩礁だらけの海にダイビングするのに等しく、普通怪我をすると思って正解だということ。物事の本質を見抜く努力を不断に続けなければ、泡銭以上のサクセスは得られないと覚悟すべきでしょう。

日本の研究費事情を変えた米国からの外圧

 さて前回の続き、ノーベル医学・生理学賞の話題ですが、前回触れたシドニー・ブレナー教授やリチャード・アクセル博士のケースのように、最先端の研究者が自ら「ビジネスモデル」を作って資金面から「研究の自由」を守っています。しかしこれが成立するには、カウンターパートである企業側にも、技術の本質を見抜く「眼力」がなければなりません。

 この背景には、大学の先生自身が、下手な企業人より遥かに経営上手であることが少なくない、米国の事情が存在します。実際、明らかに企業人として一流の人が大学で仕事していることが少なくない。これは当然で、米国では大学がビジネスになるからです。

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