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王様は「貧乏性の目線」で考え抜くのだ

  • 清野 由美

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2008年11月17日(月)

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――前回、ヨーロッパの底深いインテリアデザインの話になりました。確かにあれだけ街の建物が決まっていたら、建築よりもインテリアの方が必然的に発達します。その点も日本との違いは大きいと思われます。

隈 築100年とか300年とかの家に、今でも普通に住んでいるわけですから、住み方にかんする文化は当然、まったく異なってきますよ。

養老 ヨーロッパの家が貴族による一体系だとすると、日本のそれは茶室文化でしょう。

隈 まさにそうですね。

養老 千家の家元がいて、千家十職という道具専門の職家も、400年の昔からえんえんと続いている。千家十職って、茶碗、茶杓、釜、漆、袋物・・・・・・と、全部揃っているんですよね。十職に庭師は入っていませんけど、庭だって茶の文化とつながっているし。そういえば、藤森(照信)さんがつくった、細川(護熙)さんの「一夜亭」なんて知っていますか?

隈 見せてもらって楽しみました。

養老 シラク(注・元フランス大統領)が湯河原にある細川さんの家に来るというから、1カ月でつくれとか何だとかで、時間がなかったんだよね、あの茶室は。しかも予算が500万円とかいって安いんだ。それで施工をどこへ頼んだか分かります? これが、俳優座の大道具だって。

隈 黒澤明の「蜘蛛巣城」みたいな感じですね(笑)。

養老さん

養老 孟司(ようろう・たけし)

解剖学者/作家/昆虫研究家。1937年生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ。95年東京大学医学部教授を退官し、その後北里大学教授に。東京大学名誉教授。著書に『からだの見方』(筑摩書房、サントリー学芸賞)『唯脳論』(青土社)『人間科学』(筑摩書房)『バカの壁』(新潮社、毎日出版文化賞)『死の壁』(新潮社)など、専門の解剖学、科学哲学から社会時評、文芸時評までを手がける。本サイトにて「タケシくん虫日記」を連載中


隈研吾さん

隈 研吾(くま・けんご)

建築家。1954年生まれ。1979年に東京大学工学部建築学科大学院を修了、「1979年東京大学建築学科大学院修了。コロンビア大学客員研究員を経て、隈研吾建築都市設計事務所主宰。97年に日本建築学会賞を受賞(宮城県登米町伝統芸能継承館「森舞台」)。99年、慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授に就任。2001年、理工学部教授に就任。主な著書に『負ける建築』(岩波書店)、『隈研吾:レクチャー/ダイアローグ』(INAX出版)、今回のインタビュアー、清野由美との共著『新・都市論TOKYO』(集英社新書)がある


養老 庭の崖地にちょこんと建っていてね。僕の女房が招ばれて行ってきて、「揺れる」って言っていました(笑)。で、茶の湯に戻るけど、日本というのは、結局ああいう形の贅沢ですよね。千家というのはよく考えていて、全体をいわゆる総合芸術みたいにしている。それが同時に高い社会性も持っている。だって、茶の湯の文化には料理まで入っていますからね。

――隈さんも茶室がテーマの1つですね。

隈 茶室は楽なんですよ、実は。あんまり生活と密着してないから、後で文句を言われたり、訴えられたりしないんです(笑)。だから、僕は茶室のオファーは、だいたい受けます。それこそ、さっきの細川さんの「一夜亭」みたいな感覚で。

養老 揺れていたりして。

隈 「揺れていますけど」って言われたら、「これが分からないんですか」と言えばいいでしょう(笑)。

養老 そういう遊びはすごく必要ですよ。

隈 今は、生活に密着している建物ほど真面目一辺倒で訴えられる世界ですから。そういう遊びでもしないと・・・・・・。

養老 その程度の遊びができる金持ちも、あんまりいなくなりましたよね。大してお金はかからないはずなんだけど。

隈 全然かからないとは言いませんが、べらぼうにかかるわけではありません。

――でしたら、今、六本木ヒルズ方面に住んでいる人だったら別に。

隈 何でもないよ。でも、自分で土遊びができるという感覚がないんですよね。それはやっぱり経済成長のある過程で、日本人が本来持っていた自然観が欠如した結果なんだと思います。特にマンションって、値段と記号が全部セットになっているマトリクスがあって、そこから、住む人がぽんぽんぽんっ、と選ぶだけの仕組みでしょう。自分の経済力、家族構成、余命を入力するとマトリクスが点灯するだけのさみしい世界。それは、しょせん記号の体系の操作に過ぎない。実際に自分で土に触って泥んこになって遊ぶこととは、かけ離れています。

養老 でも、ヒルズに住んでいる人たちって田舎出身の人が結構多いんじゃないか。ヒルズに限らず、東京全体に言えるけれど。

隈 田舎なら土と親しんでいる、というのは錯覚で、田舎こそ記号の体系化が進んでいますから。

養老 そうだよね。今、日本に田舎はないですよね。だって戦後50年以上にわたって、自民党政治は田舎にお金をまき続けたんだから。だから田舎に行くと、ヘンな公共建築物がいろいろ建っているでしょう。

――そうじゃない建築や、街並みの文化を、日本のお金持ちが発信してくれないものでしょうか。

隈 藤森さんがやっていることなんかは、確信犯的な発信だと思いますよ。だって、細川邸のお茶室だって、クライアントや自分のためだけにはつくっていないでしょう。第一、千利休がつくった茶室だって、当時でいえば、ものすごく革新的なマニフェストだったはずです。メディアを使えば、茶室みたいな小さな建築でもメディアとしてとらえれば、世界が変えられる、と利休はよく分かっていた。

養老 黄金の茶室とか、組立式の茶室とか、既成概念の破壊そのものですからね。

隈 でも、東京が超高層開発で、どんどん息苦しくなっていくとしても、僕はそれほど悲観的でもないんです、実は。本当に息苦しくなれば、やっぱりそれを止めたいと思って、実際に土に触りたくなる人が出てくるだろうと、楽観的に思っています。

養老 どこかで止まるんですかね。

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