• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

“参勤交代”で、都市と田舎は「ともだおれ」しよう

  • 清野 由美

バックナンバー

2008年11月25日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

前回から読む)

――養老先生は解剖学から出発して、そこから虫に展開したのですか。

養老 いや、虫の方が先ですから。虫は子供のころからです。

――先生にとって虫って何なのですか。いきなり根源的な質問ですみません。

養老 人生(笑)。だってさ、それさえあれば文句を言わない。

――虫のどこがいいんですか。

養老 分かるわけないよ、そんなこと。隈さんと僕が論じている都市に引き付けて答えれば、都市の一番嫌なところというのは、無意味なことを許さないところでね。最近しみじみ思うんだけど、今の社会が抱える問題の根本はそれだと思う。何でお前はこんなことするんだよ、無意味じゃないか、という問いかけ。

隈 そういうことをやっているのはお前だけだよ、と言われたって、困るだけでね。

養老 そうでしょう。好きなものとか、こととかは、突然始まって、突然終わる。要するにゴキブリみたいなもの。急に出てきて何をするか分からない。それを社会が系統立てて禁止しようと圧力をかけてくる。そういう社会って危ないですよ。それは、秩序性ということが自己目的になっている証拠です。自然科学でも、秩序をキリキリと立てていくと、必ず同量の無秩序に接します。なのに、その真理をみんな理解していないんですよ。秩序は、立てたら立ちっぱなしだと思っている。

養老さん

養老 孟司(ようろう・たけし)

解剖学者/作家/昆虫研究家。1937年生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ。95年東京大学医学部教授を退官し、その後北里大学教授に。東京大学名誉教授。著書に『からだの見方』(筑摩書房、サントリー学芸賞)『唯脳論』(青土社)『人間科学』(筑摩書房)『バカの壁』(新潮社、毎日出版文化賞)『死の壁』(新潮社)など、専門の解剖学、科学哲学から社会時評、文芸時評までを手がける。本サイトにて「タケシくん虫日記」を連載中


隈研吾さん

隈 研吾(くま・けんご)

建築家。1954年生まれ。1979年に東京大学工学部建築学科大学院を修了、「1979年東京大学建築学科大学院修了。コロンビア大学客員研究員を経て、隈研吾建築都市設計事務所主宰。97年に日本建築学会賞を受賞(宮城県登米町伝統芸能継承館「森舞台」)。99年、慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授に就任。2001年、理工学部教授に就任。主な著書に『負ける建築』(岩波書店)、『隈研吾:レクチャー/ダイアローグ』(INAX出版)、今回のインタビュアー、清野由美との共著『新・都市論TOKYO』(集英社新書)がある


隈 この間もダガーナイフの所有が禁止になりましたね。

養老 何を考えているんだ、と思うけどね。飛行機がもう、そうなっていますけどね。こんな小さいつめ切りばさみを僕も取られたもの。

隈 でも、秩序がないと社会が安心できないということになっています。

養老 それ、無意識なところが怖いんですよ。たばこだってそうでしょう。健康に悪いと言うけれど、そんなこと、理屈になっていないって。だってあの注意書き。「喫煙は」というところを「マクドナルドの食品は」に変えたって同じだよ。あなたの健康的なものを悪化させる危険性が高い、ひいては糖尿病、痛風の危険性および心臓血管障害が起こる、と書かなきゃいけないだろうが(笑)。

――牛のステーキとか、まぐろのトロとかにも書いてあったりして。

隈 あなたの健康を害するって、言われてみれば全部当てはまりそうですよね。

養老 食い物は食べ過ぎたら、みんなそうです。そういうことを大まじめで言っているから、本当に大事なことが通じなくなっちゃうんです。僕がこう言ったら、言っていること自体が不謹慎だ、って怒りの声が来るしね。これって戦時中にそっくりだよ。

――皮肉な話ですが、それこそ養老先生がおっしゃった通り、ガソリンの値段が上がったら渋滞が減ったといいますね。

養老 そうだよ。だから規制なんかいらないんです。東京のガソリンの値段を高くすればいい。何かの現象をコントロールしたければ、そうやって経験的に覚えていってやればいいことでしょう。なのに、この国のシステムは、ものすごく硬直化しているわけ。

――東京の建築でいえば、金融破綻の余波はいかがですか。

隈 いろいろなプロジェクトが、今、ぼんぼんつぶれだしていますよ。図面を描いて、建築費を見積もったら、今はとんでもない値段になっちゃう。石油高で毎年資材費が上がっている一方で、ビルのニーズは減少して、入居者がどんどん減っています。ニーズは減っていて建築コストだけ上がるのだから、プロジェクトはつぶれるに決まっています。

養老 テーマに関係あるかどうか知らないけど、政治が言っていないことで、僕が一番気にしているのは、やっぱり社会不安ですよね。イギリス政府はスタグフレーションが当分続くと言っていますが、明らかに日本にだって来るでしょう、不況が。でも、日本の社会システムはその構造に対応するような変換が利かないから、しばらく辛抱、忍の一字が続きますよ。それに今の人は耐えられるのかな。あと、そのときにどういうふうに希望を持つのかな、と思う。

隈 今後、我々はどのような生き方を選ぶのか、ということですよね。今から予習するとしたら、どうすればいいでしょう。

養老 俺なんかは何とかなるんだけど。車があろうが、なかろうが平気だけどさ。今の人はどうなんだろう。

――耐えられないです。やっぱり、それは想像したくないです。

養老 そう、想像したくない、というのが本音で、そこは政府も同じなんじゃないだろうか。だから僕も言いたくないんだけど。だってカッサンドラーの予言(注・ギリシャ神話中の不吉な予言)だからさ。

――隈さんはいかがですか。

養老 建築だって影響は相当大きいですよね。

隈 そもそも、日本の建設業は、今までの形ではもう成立しないと僕は思っていますから。

コメント2

「養老孟司×隈研吾 「ともだおれ」思想が日本を救う」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

面倒くさいことを愚直に続ける努力こそが、 他社との差別化につながる。

羽鳥 由宇介 IDOM社長