報道によると11月5日、米国の共和党ジョージ・W・ブッシュ政権のコンドリーザ・ライス国務長官は、報道官の定例記者会見に緊急出席して異例のコメントをしたそうです。
ライス氏はバラク・オバマ上院議員のアメリカ合衆国大統領選挙での圧勝に「アフロ・アメリカン(アフリカ系米国人)として特に誇りに感じる」と心からの感動を吐露しました。
何気なく見れば、ああそうか、と読み流してしまいそうなエピソードですが、実はここに現在アメリカ合衆国が迎えつつある革命的状況が集約されている、と私は思います。
ライス長官はこの日から中東歴訪を開始する予定だったそうですが「前夜の驚くべき選挙について一言述べずにはいられなかった」と出発直前に姿を見せ「オバマ氏圧勝に誇りに感じる」「米国は人種問題を日常に定着させぬよう、取り組みを続けてきた」「米国は、昨日の選挙で人種問題に関して明らかに目覚ましい前進を遂げた」と強調しました。
バラク・フセイン・オバマ博士が2008年の米大統領選挙に圧勝したことには、全く大げさでなく「ワシントン、リンカーン以来」の歴史的意味があります。またその意味を考える時、今私が最も懸念するのは、彼が米国大統領に就任する前に、あるいは就任後に暗殺されてしまうことです。
オバマを殺させないために
ペルシャで生まれ激動の20世紀を生きてきた英国の女性作家ドリス・レッシング氏は、米大統領選で盛り上がるオバマ候補人気を見て、もしオバマ氏が大統領に就任したら、人種問題が原因となって暗殺される可能性が高い、といち早く指摘しました。
この指摘をした2007年、彼女は87歳でノーベル文学賞を受けました。レッシング氏の警句は87歳の賢慮の末の言葉で、誇張もこけおどしも一切ありません。
レッシング氏は暗殺の回避も含め「ヒラリー大統領候補・オバマ副大統領候補」での民主党の選挙戦を提案しました。しかし現実はそのようになりませんでした。
選挙戦は米国の歴史をはっきりと書き換える、歴史的なものになりました。しかしここで考えるべきは、「大勝」とお祭りのように騒ぎ立てるのではなく、現実にリンカーンやケネディなどが辿った道のりを踏まえ、明確な安全対策を取ることだと思います。
前回の空幕長の記事で私が申したかったのも「危機管理」と、そのための「指示系統」の問題が中心で、私自身、徹頭徹尾「アポリティカル」政治性を排除した物言いだけに終始しているわけですが、ここでも、オバマ現象のあれこれ以前に、彼を殺させない、ということをまず第一に考える必要があると思っています。
いきなり物騒な話をするようですが、今回は極めてオーソドックスな米国史を辿って、いかにオバマ大統領(予定者)が暗殺と隣り合わせの地点に立っているかを、過不足なく確認したいと思います。
ただ事ではない危機管理
日本の報道では「オバマ政権初期では軍事縮小と福祉増進が図られるだろうが、2期目が射程に入ると…」あるいは「予想されるオバマの日本イジメ」といったモノも見かけましたが、そもそも就任宣誓式まで彼の身の安全を確保するのがどれだけ大変か、想像に絶するものがあります。「民主党が2期目を…」という時、それが「オバマ大統領」の2期目であるのと「ジョー・バイデン大統領」とでは、意味が全く違います。さらに「ヒラリー大統領」では、日本の観点から見ても、すさまじい違いが出ることが容易に想像されます。
改めて最初のライス国務長官のコメントを考えてみましょう。
これは米国現政権の国務長官の、自党が反対党に選挙で大差で破れた直後のコメントです。
そこで、喜びの感動に震えて、思わず記者会見に出て来ずにはいられなかった(と、実際に重要なコメントをした)というのは、小沢民主圧勝で負けた自民党の幹事長が感動の涙を流す、なんてこと(はないでしょうが)より、遥かに歴史的意義の大きいことと思います。(実際日本の民主党の旧田中派〜経世会の人の去就で、自民党の誰かが惻隠の情に駆られると、いったことはあり得ない話ではないかもしれません)
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