「論より証拠」「百聞は一見に如かず」。1枚の写真には、とてつもない量の情報や力が秘められている。たとえば、ものの大きさも時に大切な“情報”だ。
下の写真をご覧になっていただきたい。地下にできた結晶の写真だが、同時にそこに写っている探検家たちを比べるとびっくりする。[「ナショナル ジオグラフィック日本版」11月号で紹介したメキシコの結晶洞窟のワンカットだ。あなたは、この光景を言葉で説明できるだろうか?
![]() | |
|
メキシコ北部の都市チワワから1時間ほど南に下った山奥。メキシコ最大の鉛鉱山であるナイカ鉱山で、2000年に発見されたものだ。洞窟の中には、結晶が林立している。なかには長さ10メートルを超える巨大なものまである。透き通って燦然と輝く結晶が立ち並ぶ洞窟は、この世のものとは思えない美しさだ。
洞窟内を埋め尽くすのは、セレナイトと呼ばれる透明な石膏の結晶。ナイカ鉱山の多くの洞窟には、何十万年もの歳月をかけて、硫酸カルシウムを豊富に含む地下水が浸み込んでいた。地下のマグマで熱せられた洞窟は徐々に冷え、洞窟内にたまった水の温度は摂氏58度で安定する。そのとき、水中の硫酸カルシウムがセレナイトに変化し、その分子が徐々に積み重なって結晶を形成したのがこの結晶なのである。
「クエバ・デ・ロス・クリスタレス(結晶の洞窟)」の巨大な結晶は、世界中でもここでしか見られない。輝く結晶の柱で埋めつくされたこの洞窟は、ナイカ鉱山の地下300メートルのところで発見された。ナイカ鉱山は毎年何トンもの鉛と銀を産出する、メキシコでも有数の鉱山で、結晶の洞窟が見つかったのはこれが初めてではなかった。
鉛や銀が生成される地質学的な過程で、結晶となる原料が同時につくられる。ナイカ鉱山ではこれまでにも採掘中に、規模はずっと小さいものの、みごとな結晶がぎっしり詰まった洞窟を、鉱夫が偶然見つけたことがあった。だがこの結晶はなぜこんなに大きくなったのか。
2001年以降、多くの科学者がナイカ鉱山の結晶を研究している。スペインの結晶学者であるフアン・マヌエル・ガルシア・ルイスもその一人。ガルシアの研究チームは、結晶の内部に閉じ込められた液体の泡を調べることで、結晶がどのように成長するかを明らかにした。
圧倒的に美しく不思議な巨大結晶に出合った人たちは、自分たちの身近なものにたとえて表現しようとする。ガルシアは結晶の洞窟を「結晶のシスティナ礼拝堂」と呼んだ。
別の洞窟では、温度が安定しなかったり、何らかの原因で環境が変わったため、もっと小さな結晶が形成された。だが「結晶の洞窟」では数十万年の間、環境が変わらないまま、ほぼ完璧な均衡状態が保たれ、結晶は着実に成長した。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。












