「鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」」

米スポーツ産業は「100年に1度」の不況を乗り越えられるか?(下)

コストカットだけじゃない! 「1ドルシート」も飛び出す仰天戦略

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2008年12月18日(木)

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 前回のコラムでは、金融危機のスポーツ界への影響を、広告宣伝や放映権などB2B(企業間取引)の領域から考察しました。それからわずか3週間の間に、米スポーツ業界にとってありがたくないニュースが続いています。

 シカゴ・カブスの親会社であり、ロサンゼルス・タイムズやシカゴ・トリビューンなど新聞12紙、テレビ23局を傘下に持つトリビューンは、部数や広告収入の落ち込みによる経営悪化に歯止めがかからなくなり、12月8日に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に当たる)の適用を申請しました。球団と球場(MLB=米大リーグ機構=で2番目に古いリグレー・フィールド)は破産法申請の対象外で、引き続き売却交渉が進められます。それでも、球団側の交渉力は大きく低下するでしょう。カブスはMLBで初めて売却額が10億ドル(約900億円)を超えるのではないか、と言われていたのですが、それも怪しくなってきました。

売却交渉中にオーナー会社が破産申請してしまったシカゴ・カブスの本拠地、リグレー・フィールド

売却交渉中にオーナー会社が破産申請してしまったシカゴ・カブスの本拠地、リグレー・フィールド

© AP Images


 また、注目されていたビッグスリー(米自動車大手3社)のゼネラル・モーターズとクライスラーに対して、最大140億ドル(約1兆2600億円)の資金繰りを支援する救済法案も廃案になりました。自動車業界は、スポーツ界の最大のスポンサーなので、もしビッグスリーが破綻した場合、その影響が懸念されます。

マイナースポーツの経営を直撃

 ここにきて、アリーナ・フットボール・リーグ(AFL)が経営危機でリーグ運営を中止するのではないかというニュースも飛び込んできています。AFLは1987年に設立された屋内アメリカンフットボールのプロリーグで、16チームが所属しており、1試合平均観客動員数約1万2000人の中堅プロスポーツリーグです。あまり知られていませんが、これまで多くの日本人選手もプレーしてきました。

 AFLは昨年から経営危機がささやかれており、2008年シーズンが終了した6月に突如ニューオリンズのチームが倒産しました。7月にコミッショナーが辞任し、トップ不在のまま迷走を続けています。そこに金融危機が襲いかかった格好です。

 また、女子プロバスケットボールリーグ(WNBA)のヒューストン・コメッツも、今月チームを解散する決定を下しました。WNBAは米プロバスケットボール協会(NBA)の全面的な支援の下で1996年に設立され、コメッツは栄えある初代チャンピオンでした。コメッツは同じくヒューストンにフランチャイズを置き、ヤオ・ミン選手が所属することでも知られるNBAヒューストン・ロケッツのオーナーにより所有されていましたが、昨年から売りに出され、買い手がつかないためにリーグ機構が保有するという緊急事態が起きていました。

 このように、金融危機は経営基盤の弱いマイナースポーツに容赦なく襲いかかっています。しかし、経営基盤の比較的強固なメジャースポーツも安寧としていられる状況ではありません。

米スポーツ界にも人員削減の波

 12月10日、米プロスポーツ界に激震が走りました。米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)が人員削減を発表したのです。

 NFLは米フォーブス誌により「世界で最もリッチで強固なプロスポーツリーグ」と評されるほどの優良経営を実現していました。年商は米4大メジャースポーツトップの約65億ドル(約5850億円)、2008年の平均球団価値も2位のMLBの2倍以上の10億ドル(約900億円)となっています。球団価値の伸び率は前年比で8.7%増、5年前の66%増で、これはフォーチュン500社も顔負けの数字です。

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著者プロフィール

鈴木 友也 (すずき・ともや)

鈴木 友也 ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。1973年東京都生まれ。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)を経て、マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツ経営大学院に留学(スポーツ経営学修士)。世界中に眠る現場の“知(インサイト)”を発掘し、日本のスポーツビジネス発展のために“提供(トランス)”する――。そんな理念で会社を設立し、日本のスポーツ組織、民間企業、メディア、自治体などに対してコンサルティング活動を展開している。ほかにも講演、執筆でも活躍中。著書に『スポーツ経営学ガイドBOOK』(ベースボール・マガジン社、2003年)、訳書に『60億を投資できるMLBのからくり』(同、2006年)がある。中央大学商学部非常勤講師(スポーツマネジメント)。ブログ『スポーツビジネス from NY』も好評連載中。Twitterのアカウントはtomoyasuzuki

(写真 丸本 孝彦)



このコラムについて

鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」

「スポーツビジネス先進国」と言われる米国。その市場規模や人気などで日本を凌駕する。そこでは、日本にいては思いつきもしない先進経営が繰り広げられている。だが、進みすぎたが故の問題も内包する。米在住のスポーツマーケティングコンサルタントが、米国スポーツビジネスの現場を歩き、最新トレンドを解説していく。
果たして、米国は日本スポーツ界の「模範解答」となるのだろうか?

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