「御立尚資の「経営レンズ箱」」

“異分野読書”のススメ

新たな知識から広がる発想

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2009年1月16日(金)

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 時々、時間が取れる折に、心がけて実行していることがある。ぶらっと本屋に行き、“土地勘”がない分野の本、特に、その領域を深く深く掘り込んだような雑誌を何冊も買ってきて読んでみるのだ。

 よくクリエーティビティに関する書籍に、「普段と全く違う通勤経路を取ったり、通ったことのない道を歩いてみたりする」ことの重要性が書かれている。脳の違った部分を刺激することで、新しい発想がわくことがあるということなのだろう。

 これと似たような話だが、私自身、全く関係のない異分野の事柄を組み合わせることで、自分の専門領域で思いあぐねていた課題について、ぱっと明かりが差すという経験をしたことが何度もある。

 余談ながら、永らく続けさせていただいているこのコラム自体、振り返ってみると様々なトピックについて、普通とはちょっと違う、いわば「補助線」を引くことで新しいアングルから見てみよう、というテーマのものが大半を占めている。

 この異分野雑誌・書籍の一気読みというのも、理屈めかして言えばそういう効能があるのだろうが、私の場合、ほとんど純粋な楽しみとしてやっているのが本当のところだ。

奥深いハイエンドオーディオの世界

 さて、今回の年末年始は、オーディオ、それもハイエンドオーディオ分野をターゲットにしてみた。ある知人が最近、超高級オーディオ機器の開発・製造の会社を始め、その製品が様々な賞を受けたという話を聞いたことが直接のきっかけだった。

 若い頃からバンドをやっていたせいか、家で良い音を聞くことにお金を使うより、ライブに行くことや1枚でも多くのレコード・CDを買うことを重視してきたので、オーディオは「そこそこ」主義を通してきた。したがって、ハイエンドオーディオの世界がかなり奥深いものだということぐらいは知っていたが、恥ずかしながら全くの不調法、知識も経験もないまま、初めてゆっくりとこの分野の本を読んでみた。

 いや、正直びっくりした。しょせん、入り口の入り口のところだけ、しかも書籍(とオーディオ販売店のリスニングルームを何度か覗いてみるという経験)に頼って表面をうっすらかじっただけなのだが、なかなかすごいものがある。

 年末に出た号では、各誌が2008年のベスト製品を選んでいる。例えば、ステレオサウンド誌の年間グランプリを受賞したパワーアンプの1つは、その価格、実に3800万円(モノラルアンプ2台のセット)。スイスのゴールドムンドという会社の製品だそうだ。フェラーリ並みというか、家が買える値段だ。

 本当は機器相互間の相性もあり、単純に組み合わせるわけにはいかないのだが、仮にグランプリ受賞製品の中で高価なものだけを組み合わせていくと、SACD/CDプレーヤー、プリアンプ、メインアンプ、スピーカーシステムの合計で、6000万円を超えてしまう。

 もちろん、大部分の商品は100万円前後だし、同誌の記事中でも、さすがに3800万円というのは「オーディオ市場、最高金額のアンプ」と評されており、例外的な存在なのだろう。自動車で言えば、F1カーのように純粋に性能だけを突き詰めたものが、ほぼそのまま市場に出されたと考えればよいのかもしれない。

 上述のような製品群以外にも、ケーブル類からテーブルタップのようなものまで、「良い音」につながる様々な周辺部品が、様々に存在する。そのそれぞれについて、評論家の方々や愛好家諸氏は思い入れたっぷりに語っておられる。

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著者プロフィール

御立 尚資(みたち・たかし)

御立 尚資

ボストン コンサルティング グループ日本代表。京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。日本航空を経て現在に至る。様々な業界に対し、事業戦略、グループ経営、M&A(合併・買収)などの戦略策定、実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを数多く手がけている。著書に『戦略「脳」を鍛える』(東洋経済新報社、2003年)、『使う力』(PHP研究所、2006年)、『経営思考の「補助線」』(日本経済新聞出版社、2009年)など。



このコラムについて

御立尚資の「経営レンズ箱」

コンサルタントは様々な「レンズ」を通して経営を見つめています。レンズは使い方次第で、経営の現状や課題を思いもよらない姿で浮かび上がらせてくれます。いつもは仕事の中で、レンズを覗きながら、ぶつぶつとつぶやいているだけですが、ひょっとしたら、こうしたレンズを面白がってくれる人がいるかもしれません。

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