
2008年5月、米インディアナ州エルクハートで、バスケットボールをするバラク・オバマ氏
(c)AFP/Emmanuel DUNAND
今月20日、バラク・オバマ氏が第44代アメリカ合衆国大統領に就任します。首都ワシントンDCで開かれる就任式では、1861年にエイブラハム・リンカーン大統領が用いた聖書を使って宣誓するそうです。リンカーン大統領は、オバマ氏と同じイリノイ州から第16代大統領となり、奴隷解放宣言を行いました。イリノイ州の偉大な先人にあやかろうというわけです。
そのイリノイ州とオバマ氏は、世界最大のスポーツイベント招致を目指しています。州最大都市のシカゴが、2016年のオリンピック開催都市に立候補しており、東京やリオデジャネイロ(ブラジル)、マドリード(スペイン)とともに熾烈な招致合戦を繰り広げています。地元シカゴでのオリンピック開催に向け、オバマ氏も全面的にバックアップする構えです。そして、国際オリンピック委員会(IOC)は、今年10月に開催地を決定します。
オバマ大統領誕生が、スポーツ界に与える影響はオリンピックにとどまりません。米国スポーツビジネス関係者は、選挙期間中から、彼の2つの政策に注目していました。「税制」と「メディア・通信」です。
果たして新政権発足は、米スポーツビジネスをどう変えるのか――。米国社会に起こる“チェンジ(変革)”を、2回にわたってスポーツの視点から考察します。
年率19.7%の高収益投資
今回は「税制」について見ていきます。ブッシュ政権は、高所得層を優遇した減税政策(いわゆる「ブッシュ減税」)で、キャピタルゲイン税率を28%から15%に大幅に引き下げました。そして、高額所得者である球団オーナーの懐を潤しました。というのも、オーナーは、球団売却で巨額のマネーを手にしますが、その時に払う税金が安くなるからです。
米フォーブス誌によれば、1998年からの10年間で、米国4大スポーツリーグの球団は、資産価値を2.7倍に膨らませています。これは、年率19.7%で成長した計算となり、球団ビジネスがいかに儲かる投資であるかが分かります。

米スポーツ界では、かつてのように、球団を「社会の公共財」として、利益度外視で保有する人はほとんどいなくなりました。球団オーナーは多くのビジネスを手掛けており、そうした事業ポートフォリオの一部としてスポーツを組み込むわけです。したがって、他の事業のプロモーション手段という効果も狙っています。また、ビジネスのノウハウを球団経営につぎ込み、資産価値を高めて売却する、という「投資対象」という側面が強くなってきています。
「スポーツを金儲けの手段にしている」という批判もあるでしょうが、決して悪い面ばかりではありません。むしろ、球団経営やスポーツ事業が拡大再生産されなければ、関係する多くの人々に悪影響が出ます。ファン、スポンサー企業、メディア企業、地方自治体、投資家など様々なステークホルダーが関与しているスポーツビジネスは、着実に発展していかなければならないのです。そのため、スポーツリーグ経営のトップであるコミッショナーには、常にリーグ価値の最大化が求められていますし、球団オーナーは収益を増加させ続けなければなりません。
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